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2012年10月24日 (水)

悪人

本作を観て、「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人おや」というフレーズが思い浮かんだ。
善人が悟りを開くことができるのだから、まして悩みに苦しめられ試行錯誤を繰り返している悪人が悟りを開き彼岸に行けないわけがないという意味である。
悪人とは主人公の祐一と光代、善人とはふたりの周りにいる、この事件で迷惑を被ったと訴えている人々と思えてくる。

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Villain
監督:李相日(イ・サンイル)
脚本:吉田修一/李相日
原作:吉田修一
音楽:久石譲
製作国:日本  2010年  139分

祐一(妻夫木聡)が佳乃を殺したのは、夜の峠で車から降ろされ置き去りにされた佳乃(満島ひかり)を、祐一が助けて車に乗せようとしたものの、佳乃が強姦で訴えると叫んだことがきっかけになった。
その夜、祐一と待ち合わせていた佳乃は彼の車には乗らず、近くに停まっていた大学生の増尾(岡田将生)の車に乗り込だ。佳乃は増尾から安っぽい女と蔑まれ、車から蹴り落とされたのだった。

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数日後、祐一は出会い系サイトで知り合った光代(深津絵里)と長崎駅前で待ち合わせ、初対面にもかかわらず、光代をホテルに誘い関係を結んでしまう。別れ際、光代は「本気でメールを書いた」という。
これがふたりの運命的な出会いであったのだ。
数日後、光代の最後の言葉が気にかかっていた祐一は、光代に「俺も本気でメールを書いた。もっと早く会っていれば良かった」という。

事件から1週間後、増尾は名古屋のカプセルホテルに潜伏していたところを発見され、往生際悪く大暴れし捕まったものの、殺人の容疑は晴れた。
そして祐一が容疑者として指名手配される。

祐一は光代を連れて車で逃走する。
海の見える食堂の二階で、一緒に旅行ができて楽しいと喜ぶ光代に、祐一は殺人を打ち明けるのだった。

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そして土砂降りの中、車から降りて自首しようと警察署に向かう祐一に「好きだから待っている」と言ったにもかかわらず、光代はクラクションを鳴らして一緒に逃げることを願うのだった。

この辺りで、妻夫木演じる祐一は「悪人」ではないと思い始めた。では、この映画では、一体誰が悪人なのか?

母親(余貴美子)は、祐一が幼い頃、灯台に彼を置き去りにして棄てた。祐一は祖母の房枝(樹木希林)に育てられ、今も一緒に暮らしている。

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祐一と光代の逃避行の間、周りの人たちは、次のような状況にあった。

母親は祐一がしでかしたことで世間体が悪いと房枝にこぼす。
その房枝は、悪徳業者から高額な漢方薬を無理やり買わされた。今や、房江の家の周りには迷惑を顧みないマスコミの記者がたむろしていて、房江が外に出て行くたびに群がってくる。
佳乃の父親(柄本明)は、佳乃の仇をとりに増尾の後をつけ、「なぜ光代を置き去りにした」とレンチで殴りかかる。
増尾は殺された佳乃からのメールを飲み友達に見せて、安っぽい女だったと笑っている。佳乃の父親が殴りかかった事件を振り返って、へらへら笑っている。
電話の向こうの光代の妹は、「何で殺人犯と逃げているの、私は職場で笑者になっている」とすごい剣幕で怒鳴る。
祐一と光代の周りの人間たちの利己的な考えが目について醜く見えてくる。

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灯台に立てこもった、祐一と光代は愛する人と一緒にいられる幸せに浸っている。
目の前に広がる海を見つめながら、「この先どこへでも行けるような気がする」と祐一はいう。
【このあとネタバレです。】→人気ブログランキング

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そしてついに、警察が灯台に踏み込んだとき、祐一は光代の首を絞めて殺そうとする一世一代の演技をして、光代を逃亡共謀者ではない被害者に仕立てるのだった。

 


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