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2012年10月16日 (火)

南極料理人

海上保安官の料理人西村(堺雅人)は、妻(西田尚美)と幼い子どもの4人暮し。
ある日、赴任予定者が交通事故に遭い、ピンチヒッターで南極勤務を命じられる。
西村にとっては青天の霹靂、できれば行きたくないのだが、妻と小学生の娘は、西村の南極行きをむしろ歓迎しているように思えて、彼はショックだ。
Photo_20210209083301南極料理人
監督:沖田修一
脚本:沖田修一
製作:太田和宏/川城和実/春藤忠温/町田智子/近藤良英
音楽:阿部義晴
主題歌:ユニコーン「サラウンド」
公開:2009年  日本  125分 

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南極とはいっても、標高3810mと富士山より高い「ドームふじ基地」という空気が薄い極寒の地。ペンギンやアザラシはおろか、ウイルスさえもいない地の果てのようなところだ。
西村の任務は、8人分の食事を作ること。
ただし、標高が高いので気圧が低く85度で沸騰するため、圧力鍋を駆使しなくてはならない。

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こういうところでは食べることが唯一の楽しみ、西村が作る料理は、なかなかのもの。
和風の納豆付き朝食、焼き魚、魚の煮付け、かきあげ、おにぎりなどの身近なものから、フォアグラやスズキのポアレのフランス料理、隊員のリクエストで作った失敗作の伊勢海老のエビフライ、大量のタラバガニ、そして肉の塊に油を塗って火をつけ雪原を走り回って作った分厚いローストビーフと、ヴァリエーションに富んだ西村の料理は隊員を喜ばせる。

晴れ渡った空のもと、雪原に真っ赤なジュースで線を引き、息抜きの野球を始めるのだが、その前にジュースでマークしたベースをスプーンですくい取り、シャーベットとして食べてしまう。隊員たちは何でも食べることに結びつけてしまう、このシーンが面白い。

ところで、隊員は家族に電話をしたり家族からのFAXでホームシックを癒している。その隊員たちに比べると日本にいる家族や恋人の反応は醒めたもの。そのギャップは皮肉だ。まるで見えないものは存在しないかのように、電話の向こうはつれない。

そんななか、隊員たちがインスタントラーメンを毎日のように隠れて食べたため、早々と備蓄のラーメンがなくなってしまう。気象学者のタイチョー(きたろう)は「これから何を楽しみにすればいいんだ」と寂しそうに言うのだった。
タイチョーは小麦粉で自家製のラーメンを作れるだろうと西村に迫るが、カンスイがないとラーメンのコシと風味は出ない。雪氷学者の元さん(生瀬勝久)が、「ベーキングパウダーには炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が含まれているはずだから、元素記号上はカンスイになる」とアドバイスする。

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そして、西村が作ったラーメンは、縮れ麺にチャーシュウ、メンマ、ホウレンソウがのる正統派醤油ラーメン、よだれが出そうなくらい旨そうだ。皆が貪るようにラーメンを食べている最中にオーロラが現れて、観測を促す大気学者の平さんに、タイチョウーは「どうでもいいっ」と言い放ちラーメンに没頭するのだった。

文字通りの極限状態の中での長期共同生活は、隊員たちの人間性が出てくる。
小競り合いあり、不貞腐れて氷原に飛び出す狂言自殺行為あり、失恋による引きこもりあり、笑いあり、涙あり、の男8人の1年半に渡る生活を、食を通して見たなんとも不思議な魅力が漂う映画だ。

かくして、南極での生活を終え無事帰国した西村は、家族と訪れた遊園地で、ファーストフードのハンバーガーを家族をとともに頬張り、「旨い」とつくづく思うのだった。→人気ブログランキング

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