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2012年11月 2日 (金)

深読みフェルメール 朽木ゆり子×福岡伸一

『フェルメール全点踏破の旅』の著者であるジャーナリストの朽木ゆり子氏と、『フェルメール 光の王国』の著者である分子生物学者の福岡伸一氏の対談集である。両氏とも、現在鑑賞可能なフェルメールの絵画を全点踏破している。
門外漢だから言える自由なフェルメール論が楽しい。
Photo_20220925115301 深読みフェルメール 朽木ゆり子×福岡伸一
朝日新書
2012月

フェルメールの絵を深読みしてしまう理由は、現在フェルメールが描いたとされる絵が37点(諸説あり)と少く、語るに手頃な数であること、これまでに4点が盗難にあい「合奏」を除き所有者の手元に帰ってきているというようなエピソードに事欠かないこと、さらに絵のなかに謎が散りばめられていることである。福岡氏は、村上春樹の小説を深読みしてしまうのに似ているという。

『フェルメール光の王国』で福岡氏が展開する推理を、この対談でも披露している。デルフトでフェルメールと同じ日に生まれたレーフェンフックが、「地理学者」のモデルではないかという。レーフェンフックは顕微鏡を発明した人物。フェルメールが正確な遠近法に基づき絵を描くために、レーフェンフックが所有していたカメラの原型であるカメラオブスクーラを借りたのではないか。さらに、レンズ磨きを生業としているユダヤ人の哲学者スピノザが、そのレンズを介して、レーフェンフックやフェルメールと交流があったのではないかなどである。

巷間言われている「手紙を読む女」が妊娠しているという説に対し、朽木氏は否定する。当時のオランダでは妊婦は魅力的ではないと考えられていたので、絵のモデルに登場することはなく、さらに、ハイウェストのファッションが流行っていたという。

フェルメールの絵には非真作、贋作の問題がつきまとう。
後世の者がその作者の作品に似ていると思うのが非真作であり、意図的にせよそうでないにせよフェルメールの絵には非真作が、かつて多数存在した。
1945年に、ナチスのゲーリングが所有していたフェルメール作とされる「キリストと悔恨の女」の流通経路が調査された。その調査で明らかになったことは、メーヘレンが敵国の高官にオランダの至宝フェルメールの絵を売ったということで、メーヘレンは反逆罪を問われた。しかし「キリストと悔恨の女」はメーヘレン自らが描いた贋作であると告白した。その自白はにわかには信用されなかったため、メーヘレンは法廷で実際に描いてみせたという。

1990年にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれた「合奏」が、近々出てきそうであると朽木氏がいう。詳細は本書にあたられたい。こういうホットな裏情報が知らせれると、なにか得したような気分になる。

最後は、全点踏破のノウハウについて語られている。→人気ブログランキング
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【2012.11.04】 『真珠の耳飾りの少女』
【2011.12.21】 『フェルメール 静けさの謎を解く』藤田令伊
【2011.11.09】 フェルメールからのラブレター展@宮城県美術館
【2011.10.28】 『フェルメール 光の王国』福岡伸一

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