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2012年11月

2012年11月21日 (水)

ロビイストの陰謀

本作は、2006年に起こった「ジャック・エイブラモフ事件」をもとに作られている。この事件が、アメリカ政界を揺るがす大スキャンダルであったにもかかわらず、日本ではあまり大きく報道されなかったのは、ロビイストという存在が日本にはないため、あまり関心が持たれなかったからだろう。議会議員ら21人が有罪となるなど、ウォーターゲート事件に匹敵するアメリカ政界史上最大のスキャンダルとなった。
原題の『Casino Jack』は、主人公の名前ジャック・エイブラモフにかけている。
日本でロビイストが必要とされないのは、企業団体献金が認められているからだ。認められなければ、企業や団体は自分たちの利益を守るためにあるいは追求するために、画策する方法つまりロビイストが必要になるのではないか。
セブン(95年)』『アメリカン・ビューティー(99年)』『ライフ・オブ・デビット・ゲイル(03年)』などで好演した個性派ケヴィン・スペイシーが、強欲なロビイストを演じて作品に抜群のリアリティーを与えている。
Image_20210104101101ロビイストの陰謀
Casino Jack
監督:ジョージ・ヒッケンルーパー
脚本:ノーマン・スナイダー
製作:ゲイリー・ホーサム/ビル・マークス/ジョージ・ザック
製作国:アメリカ合衆国  2010年  112分

特定の団体の代理として政治家や官僚と交渉し、政策や立法などを実現させるのがロビイスト。
大統領予備選でマケインを退け、ブッシュ共和党政権を誕生させたと言われる大物ロビイストのジャックは、ビジネスパートナーのマイケル・スキャンロン(バリー・ペッパー)と手を組み、私服を肥やしていた。
ジャックはユダヤ教徒。スカッシュで汗を流し、腹筋を鍛え、時間があればダンベルや重い本を持って腕を鍛えている。厚い信仰心を持ち、いつも体を鍛えてると自負する自信家である。

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ジャックは、マイケルに誘われ、カジノを経営する先住民族のチペワ族を騙して大金を得る。その後も少数民族に対する優遇政策に目をつけたふたりは、優力議員に金を握らせ、敵対する部族の要望を同時に受け、両方の部族から巨額の報酬を巻き上げる。
さらに、欲に目が眩んだふたりはフロリダのカジノ客船をギリシャ人から騙し取り、大学時代の友人アダム・キダン(ジョン・ロヴィッツ)に経営を任せる。しかし、キダンは元の経営者であるギリシャ人とのトラブルを解決するためにマフィアを雇い、ギリシャ人を殺害してしまう。

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ある日、配達されてきたマイケルの洗濯物を受け取った婚約者のエミリー(ラシェル・ルフェーブル)は、洗濯物の中に女性物の下着を見つけ、マイケルの浮気の動かぬ証拠をつかむ。これが、致命傷となった。エミリーは、腹いせにジャックとマイケルの悪事を洗いざらいワシントン・ポストに暴露し、ふたりはFBIに逮捕されてしまう。

公聴会はマケインが仕切った。作品の中で公聴会でのマケイン本人の映像がそのまま使われていてリアリティーがある。ジャックには6年の実刑が下された。

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ジャックが収監され、数年経ったある日、ジャックの恩赦の書類がブッシュの手元に回ってきたが、ブッシュはサインを拒否した。

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作中、ジャックの事務所にB級アクション映画『レッド・スコーピオン(1989年)』のポスターが目立つところに貼ってあるのは、ジャック・エイブラモフが、団体から巻き上げた金でこのシリーズ2作をプロデュースしたからである。→人気ブログランキング

2012年11月20日 (火)

白夜行

東野圭吾のベストセラー小説の映画化。
2005年には舞台化され、2006年にテレビドラマ化された。また2009年には韓国でも映画化されている。
Image_20201201113601白夜行
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋/入江信吾/山本あかり
原作:東野圭吾
音楽:平井真美子
製作国:日本 2011年 149分 

昭和55年。
質屋の店主桐原洋介が殺され、妻の弥生子(戸田恵子)の愛人で従業員の松浦勇(田中哲司)に容疑がかけられる。しかし、店主の10歳になる息子の亮司の証言により、松浦のアリバイが成立する。
桐原が殺される直前に会っていた西本文代とその若い恋人寺崎忠夫(宮川一郎太)に容疑がかかる。ところが、文代はガス中毒で亡くなり忠夫は交通事故死となり、忠夫のポケットから桐原のライターが出てきたことで、事件は被疑者死亡という結論を迎える。雪穂に抱きついたりするロリコン趣味の忠夫に、睡眠薬入りのジュースを飲ませたのは、亮二であった。
刑事の笹崎(船越英一郎)は釈然としない。被害者の息子と容疑者の娘のことが頭から離れないのだ。

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昭和61年。
遠戚の唐沢家の養女となった雪穂(堀北真希)は、著名なお嬢様学校である清華女子学園に通う女子高生になっていた。
ある日、「昔、雪穂は貧乏で、実の母親が殺人犯」という噂をながしていた同級生が何者かにレイプされる。倉庫に放置された同級生を発見した雪穂は、警察の調べに対し、清華女子学園の生徒を工業高校の生徒が盗撮していたと証言した。工業高校の生徒が調べられ、雪穂の過去を知る生徒が逮捕された。
雪穂は表向きは、上品で聡明な女子高生に見えるが、雪穂の意に沿わない人物は、なぜか痛い目にあうことになる。
誰が痛い目に合わせているかというと、亮二らしいのだが、亮二と雪穂はまったく接触しない。

平成元年。
雪穂は成経大学に進学し、友人の江利子と社交ダンス部に入部する。
部長で資産家の息子・篠塚一成(姜暢雄)は江利子を気に入り、デートを申し込むが、デートの当日何者かによって江利子はレイプされる。

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一方、亮司(高良健吾)は、女性相手の売春で収入を得ていたが、あるパーティーで知り合った栗原典子と同棲するようになる。

そんななか、いまだに質屋殺しの真犯人を追っている笹垣に、松浦死亡の知らせが届く。松浦は亮二の前に姿を現していたのだった。ところが、笹垣も何者かに青酸カリをコーヒーにもられるという目に遭う。ついに笹垣にも魔の手が伸びてきた。

やがて、典子が青酸カリで死亡し、笹崎は典子の部屋で見事な出来ばえの切り絵をみつける。笹崎は亮二の母親が経営する スナックにも切り絵が飾ってあったことを思い出した。

平成10年。
雪穂は篠塚一成と結婚していた。江里子がレイプされた後、つき合い始めたのだ。
しかし、一成の妹・美佳(小池彩夢)は雪穂を快く思っておらず兄を離婚させようとするが、美佳も何者かにレイプされてしまう。→人気ブログランキング

不審に思った一成が雪穂の過去を探偵に調べさせると、探偵も青酸カリにより殺害されてしまう。その一成のところに、定年後も事件を追っていた笹垣が現れ、ふたりは一連の事件の全貌を知るのだった。
【このあとネタバレです。】

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2012年11月19日 (月)

幸せへのキセキ

原作者のベンジャミン・ミーの回顧録『We Bought a Zoo』に基づいて、『あの頃ペニーレインと』(2000年)のキャメロン・クロウ監督が作成した。『あの頃・・・』と似たテイストが漂うハートウォーミングな作品である。
動物園再建と家族の絆を取り戻す物語。
Photo_20201208141701幸せへのキセキ
We Bought a Zoo
監督:キャメロン・クロウ
脚本:アライン・ブロシュ・マッケンナ/キャメロン・クロウ
原作:ベンジャミン・ミー
製作:ジュリー・ヨーン/キャメロン・クロウ/リック・ヨーン
製作総指揮:イロナ・ハーツバーグ
音楽:ヨンシー
製作国:アメリカ合衆国  2011年  124分

なぜ、ベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は動物園を買う羽目になったのか。
家を探していて、ベンジャミンも娘ロージーも気に入った物件に、動物園がくっついていて、従業員は解雇してはいけない動物を売ってはいけないという条件付きだったという理由である。
止せばいいのに、買ってしまい、思いもやらない苦労を背負い込むようになる。

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そもそも、最愛の妻を3カ月前になくしたことが、発端だった。14歳の息子デュランは1学期に4回の停学をくらい退学となる。ベンジャミンも突撃コラムニストとして体を張ってきたのもかかわらず、意に沿わない仕事を命じられ、仕事を辞めてしまう。
こうして、心機一転と思って引っ越したのが動物園付き住宅だった。

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動物園には飼育係のケリー(スカーレット・ヨハンソン)を始め、給料を何ヶ月も受け散っていない従業員が不安そうに、ベンジャミンを迎えた。ケリーたちは、動物に素人がなぜ動物園の経営に乗り出したのかという、目でベンジャミンをみる。
この辺りで、その後のおおよその展開が予測できてしまう。

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このあと、半年後の7月7日のオープンに向けて、ベンジャミン一家とケリーたちの奮闘が日々が描かれる。予測通りのストーリーが展開されるものの、実話に基づいている強みか、あるいはマットデイモントとスカーレットヨハンソンの演技力によるのか、監督の力量か、最後まで引き込まれる。
娘ロージーを演じる子役のコケティッシュな演技が、この作品を引き立たせている。→人気ブログランキング

2012年11月18日 (日)

黄金を抱いて跳べ

雑多で猥雑に息づく「魔都」大阪で繰り広げられる重厚なクライムサスペンス。飄々とした佐野忠信と、ニヒルリズムに浸り苦悩する妻夫木聡、達観した存在の西田敏行、生と死の狭間を危なっかしく生きるチャンミンらの、演技が見どころのひとつ。
Image_20201209100401黄金を抱いて跳べ
監督:井筒和幸
脚本:吉田康弘/井筒和幸
原作:高村薫『黄金を抱いて翔べ』
主題歌:安室奈美恵「Damage」(avex trax)
製作国:日本  2012年 129分

主人公の幸田(妻夫木聡)は、「人間のいない土地を探していた。そこで人間をやめる日を迎えるのだと決めていた。あと1年で30歳になるが、待つのもそれが限界だ(原作より)」と、破滅的な考えをしている人物。

幸田は、20年ぶりに訪れた故郷の大阪で、大学時代の友人、北川(浅野忠信)から銀行強盗の計画を持ちかけられる。大手銀行の地下金庫から500キロ240億円相当の金塊を奪おうというもの。北川は、世界に通用するのは金という漠然とした理由で、金塊にこだわっている。
この途方もない計画を実行するための人材を集めることから話は始まる。

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北川が連れてきたのは、銀行担当のシステムエンジニアである野田(桐谷健太)、エリートサラリーマンだ。さらに、元エレベーター技師でいまは公園の清掃夫をしている「じいちゃん」こと斉藤(西田敏行)。銀行の内部構造にも詳しい。
幸田は、爆発物に精通している北朝鮮の元工作員モモ(チャンミン)を仲間に引き入れる。北川の電話を盗み聞きして計画を知ってしまった北川の弟・春樹(溝端淳平)も、仕方なくメンバーに加えた。
北川は、「世界一の労働だ。最高の汗をかこうぜ」とメンバーに言う。

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警報機や赤外線センサーには、予備の蓄電池がついていて電線を切っても作動する。そこで警備員の注意を逸ら警察力を分断するために、中之島変電所を爆破し、銀行だけでなく近隣全域を停電にするというとんでもないことを思いつく。
それには、なにを置いても大量のダイナマイトが必要だ。幸田と野田は輸送車を襲撃し、ダイナマイトの強奪に成功する。しかし、そのあと、計画を進めるうちに障害になる事件が次々に起こる。

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公安がモモの動向を見張っているのだ。北朝鮮の工作員がモモの命を狙っている。春樹は暴走族と、やったらやり返す血みどろの喧嘩に巻き込まれてしまう。否が応でも、幸田も北川もそのとばっちりを食うことになる。
そして、身の危険を感じて計画から離脱しようとする者も出る。しかし、すでに動き始めた計画から途中下車はできない。脱落者が出ることは秘密が洩れることだ。

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何が起ころうとノンストップ。
極上のエンターテーメントだ。→人気ブログランキング

2012年11月16日 (金)

ゴールデン・スランバー

首相の暗殺犯人に仕立て上げられた男が、杜の都仙台市で繰り広げる逃走劇。
序盤から多くの伏線がはられ、マクガフィンがばら撒かれていて、緻密に構成されている。
大学時代のエピソードが差し込まれ、それが伏線となっている。

Photo_20201222082201ゴールデンスランバー
Golden Slumber
監督:中村義洋
脚本:中村義洋/林民夫/鈴木謙一
音楽:斉藤和義
主題歌:斉藤和義『Golden Slumbers』『幸福な朝食 退屈な夕食』
製作国:日本 2010年 140分

大学時代の友人から釣りに誘われた青柳(堺雅人)は、仙台市の待ち合わせ場所に現れる。呼び出した森田(吉岡秀隆)は、青柳を定禅寺通の近くに停めた車に乗せる。
正午すぎに、郷土が生んだ金田首相が定禅寺通りをオープンカーで凱旋パレードをすることになっている。
青柳は、パレードの頃に、車の中で目が覚めた。森田が勧めたペットボトルの中に睡眠薬が入っていたのだ。
これがゴールデン・スランバー、黄金のまどろみ。
青柳役は堺雅人がぴったりだ。堺の笑っているのか泣いているのかわからない情けなさそうな不思議な目元が、ゴールデン・スランバーにぴたりとくる。

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森田の妻がパチンコにはまり借金を重ね、どうしようもなくなったところに、この話がきたという。
話とは、青柳を連れ出して車に乗せろというもの。「オズワルドにされるぞ」と森田は言う。オズワルドとは、ケネディー暗殺事件で犯人にでっち上げられ、移送の途中で殺された男のこと。

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やがて、大きな爆発音がとどろき、金田首相が爆弾テロで殺される。そうこうしていると、警察官ふたりが青柳たちの乗る車に近づいてきて、森田は青柳に「逃げろ、どこまでも逃げろ」という。青柳が車から出たところで、警官が青柳に向かって発砲した。そして、森田もろとも車が爆発した。こうして、青柳の逃亡劇が始まる。

事件後まもなく、警察サイド(香川照之)は、記者会見を開き、それがテレビで放映される。防犯カメラに映っている青柳を容疑者として指名手配すると、強気の発表した。
手際がよすぎる。事件前から青柳が犯人と決まっていなければ、このような迅速な対応はできない。

犯人は、ラジコンヘリに爆弾をしかけ、無線により爆発させたという。
青柳がラジコン売り場をうろつく映像、公園でラジコンの操作の練習をしている映像、ビルの屋上でのラジコンを操縦する映像が公開された。青柳にはまったく身に覚えのないことばかりである。

2カ月前に、青柳は暴漢に襲われたアイドルの凛香(貫地谷しほり)を助けたことで、メディアに何回も登場して「時の人」となっていた。その映像も流される。
金田首相を好ましいと思わなかい闇の力が、美容整形で作られた青柳の替え玉を防犯カメラで撮影し、青柳を首相暗殺の実行犯にしたてあげたのだ。

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青柳が容疑者として指名手配されたにもかかわらず、大学時代の恋人(竹内結子)も友人(劇団ひとり)も、大学時代のバイト先の花火屋(ベンガル)も、両親(伊東四朗、木内みどり)も、アイドルの凛香も、青柳が犯人とは信じていないところが青柳にとって唯一の救いだ
しかし、警察の執拗な追跡に次第に追い詰められていく青柳は逮捕される前に、テレビに映り犯人でないことを訴えようと計画するのだった。

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物語のはじめに、デパートのエレベーターの中で、晴子一家と乗り合わせた帽子を目深にかぶった男は、エレベーターのボタンを親指の腹で押した。青柳にはエレベーターのボタンを親指の腹で押す癖があった。
物語の最後ではその場面が繰り返され、晴子の4歳の娘が、男の手に「はなまる」のスタンプを押す。
主人公の青柳と晴子が恋人同士だった頃、晴子が「このまま一緒にいると、はなまるの人生ではなくなってしまう」と別れを切り出したのだった。
マンホールから花火が次々上がるというような現実離れした設定がいくつかあって、足を引っ張っているのは否めない。→人気ブログランキング

2012年11月15日 (木)

ナイト・オン・ザ・プラネット

地球上の都市で、今もタクシード運転手と乗客の様々なやり取りが行われている。そんな思いを抱かせる話がオムニバスとなって5つ、それぞれに深い味わいがある。
Photo_20201205084801ナイト・オン・ザ・プラネット

Night on Earth
監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
製作:ジム・ジャームッシュ
製作総指揮:ジム・スターク
音楽:トム・ウェイツ
製作国:米、英、仏  1992年  129分

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ロサンゼルス。
コーキー(ウィノナ・ライダー)は、空港で拾った客中年の女性ヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)をビバリーヒルズへ運ぶ。車内で携帯電話で話すヴィクトリアは、映画の若い女性の出演者を探していた。ヴィクトリアはコーキーに映画に出演しないかと誘う。ガムを噛みながら、タバコを吸い続ける、中途半端に生きていそうなコーキーには、将来に対するきちんとした設計図があった。

2

ニューヨーク。
凍えそうに寒い夜、黒人のヨーヨーがようやく捕まえたタクシーを運転していたのは、東ドイツからきたばかりのヘルムート。彼は英語がろくにできず、オートマ車をまともに運転できない。その上ブルックリンまでの道を知らないという有様。ヨーヨーは、金を払うから運転を変われと言い出す。このふたり、かみ合わないジョークを言い合って、至って能天気。そうこうするうちに、ブルックリン橋にさしかかる。

3

パリ。
酔った黒人ふたりの態度に腹を立てた黒人のタクシー運転手は、ふたりを途中で降ろしてしまう。続いて乗ってきたのは若い盲目の女性。感覚の鋭い彼女は、彼が黒人であることを当ててしまうし、橋を渡らなかったことも分かっている。彼は気の強い女に、心を見透かされたような気分になる。

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ローマ。
運転手のジーノ、神父を乗せる。ジーノは司教ではないという神父を司教と呼び、勝手に懺悔し始める。話は子供の頃からの性の話。心臓の悪い神父は薬を飲もうとするが、ジーノが乱暴にハンドルを切ったせいで、薬を車内に撒き散らしてしまう。ジーノの懺悔を聞くうちに、神父は心臓発作を起こす。

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ヘルシンキ。
無線連絡を受けた場所にミカが着くと、凍てついた歩道に酔っ払った労働者風の3人の男が待っている。その中のひとりアキは酔い潰れていて、他のふたりが、今日がアキにとってどれほど不幸な一日かをミカに説明する。しかし、ミカはアキよりはるかに不幸だ。ミカはふたりに自らの不幸を話し始める。

場面は車の中、登場人物はタクシー運転手と乗客だけという限られた条件で、巧みに人間模様が描かれている。落語のようなオチのある話がずらり、珠玉の短編集といった感じだ。→人気ブログランキング

2012年11月14日 (水)

食堂かたつむり

  1. 食を通して描かれる人間愛の物語。
    メルヘン風の話の運びに、つい入り込んでしまう不思議な魅力がある。
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監督:富永まい
脚本:高井浩子
原作:小川 糸(『食堂かたつむり』)
製作総指揮:三宅澄二
音楽:福原まり
製作国:日本  2010年  119分 

倫子(柴咲コウ)は、母ひとり娘ひとりの境遇、勝手気ままな母親ルリコ(余貴美子)との確執で家を出た。倫子の手もとに残ったのは、料理のレシピノートと祖母から受け継いだ糠床だけ。
倫子はインド人の男と同棲して、自分たちの店を持ちたいとコツコツと貯金して、やっと店が持てる頃に、その男に全財産を持ち逃げされた。
あまりのショックで、失語症になってしまう。

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失意のうちに実家に戻って、母親に店を開くための金を無心をするが、あっさり断られる。母親はスナック・アムールをやっていて、家では豚のエルメスを飼っている。倫子にエルメスの世話をさせる。

そんなか、倫子は熊さん(ブラザーズ・トム)から金を借りて、なんとか食堂かたつむりをオープンさせる。試食会には、熊さんひとりを招待し、ザクロジュースを入れたカレーライスを出す。ザクロは、倫子が小さい時に熊さんから教えてもらった果物である。
倫子の作ったザクロ風味のカレーは、旨いことはもちろん、幸運を呼ぶ。熊さんが家に帰ると、義母との折り合いが悪くアルゼンチンに帰ってしまった妻のシニョリータから、初めて電話がかかってきたというのだ。

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倫子作る料理は、幸せを呼ぶと評判になり、食堂かたつむりにはカップル客が集まるようになる。ただし、1日1組しか客を取らない、スローフードの店。

町の有力者が亡くなって、お妾さん(江波杏子)は力を落とし喪服で町を徘徊するようになった。お妾さんは熊さんの勧めで、食堂かたつむりのコース料理を予約した。
料理は、果物のリキュール酒とリンゴで始まり、ホタテと甘鯛のカルパッチョ、からすみのリゾット、ラム肉の香草焼き野生キノコ添え、参鶏湯、デザートと進んだ。お妾さんはこれをすべて平らげた。数日後、紫のワンピースに身を包んだお妾さんが街を闊歩する。

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ルリコの高校生時代の初恋の相手シュウ先輩(三浦友和)から、ルリコはすでに手遅れの癌であると診断される。シュウ先輩は、死期が間もないルリコにあえて求婚し、結婚披露のパティーの料理を倫子が作ることになる。
ルリコは飼い主がいなくなるとかわいそうだから、エルメスを食べてしまおうと言い出す。

倫子のこしらえた料理は、豚肉を使った世界各地の名物料理であった。かくして、エルメスは結婚披露のパーティに集まった人々の胃袋に収まった。ここで、残酷に感じられるが、エルメスはルリコたちに食べられてこそ浮かばれるというもの。

ルリコが亡くなった日、食堂かたつむりの前には白い鳩が息絶えていた。倫子はルリコの化身である鳩を、ソテーにして食べてしまう。鳩を食べると、倫子は声が出るようになった。

エルメスと鳩を食べるところは、地産地消が推奨され、飽食の時代を反省し、さらに輪廻転生を示唆しているように思われる。

ある夜、押入れの中のフクロウ時計が12時を知らせた時に、倫子は時計の下にあるルリコの手紙を見つけるのだった。倫子を影からいつも見守っていた、人を幸せにする料理を作れるのだから頑張りなさい、という内容だった。

原作の『食堂かたつむり』(小川糸著)は、2011年7月にイタリアの文学賞であるバンカレッラ賞の料理部門賞を受賞した。→人気ブログランキング

2012年11月13日 (火)

『小沢征爾さんと、音楽について話をする』 小沢征爾×村上春樹

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

posted with amazlet at 12.11.13
小沢征爾×村上春樹
新潮社
2011年
ISBN78-4-10-353428-0

本書は、小澤氏を村上氏がインタビューする形をとっていて、村上氏はレコードをかけ、話題を提供し、話に方向性をつけ、歴史的な事実を述べたりの役目をしている。もちろん、それぞれの曲を自身がどう解釈しているかにも触れる。村上氏の音楽に関する博識ぶりには、小澤氏が舌を巻くほどだ。

このインタビューのきっかけは、村上家における家族ぐるみの集まりのときの、小澤氏と村上氏のレコードを聴きながらの会話にあったという。
1962年、ニューヨーク・フィルの演奏会で、レナード・バーンスタインとグレン・グールドがブラームスのピアノ協奏曲1番を演奏した時の有名なエピソードがある。演奏の前にバーンスタインが聴衆に、「これは本来私がやりたいスタイルの演奏ではない。ミスタ・グールドの意志でこうなった」と言った。つまり曲のテンポの設定は、グールドの意向と予め言っておきたかったわけだ。それは嫌味ではなくバーンスタインの気遣いだったという。小澤氏はそのとき、バーンスタインのアシスタント指揮者としてその場に居合わせたという。
「こんな興味深い話をこのまま消えさせてしまうのは惜しい。誰かがテープにとって文章に残すべきだ」と、村上氏は思ったそうだ。これに対して、小澤氏は「そういえば、俺これまでこういう話をきちんとしたことがなかったね」ということで、インタビューが決まったという。

インタビューは、2010年11月から翌年7月まで、東京、ホノルル、スイスなどで行われている。小澤氏は食道がんの手術を受けたあとで、基本的には療養につとめていた頃である。

本書の内容は、大まかに列挙すると、まず村上氏が大いに思い入れがあるグレン・グールドについて語られる。小澤氏がバーンスタインやルビンシュタインやカラヤンに目をかられたこと、ボストン交響楽団の音楽監督のこと、サイトウ・キネン・オーケストラを始めたこと、グスタフ・マーラーのこと、カラヤンに勧められオペラを始めたこと、オペラ座兼ウィーン・フィルの音楽監督のこと、ジャズとクラシックのこと、奥志賀やスイスで行っている若手育成のアカデミーのこと、というふうに話は進んでいく。
マーラーについては、なぜマーラーが流行ったのか、マーラーの人物像、作品の歴史的な位置づけ、難解さの理由など、本書を読めばマーラーを聴いたことがない人でも、マーラーについて語れそうなくらい盛り沢山な会話が交わされている。

村上氏は、「始めに」のなかで、〈小澤さんは無手勝流の「自然児」でありながら、それと同時に、多くの深い、現実的な知恵を身の内に具えた人でもある。我慢がきかない人でありながら、我慢強い人でもある。そのような二つの面が立体的に共存している。〉と書いていて、まったくその通りに思える。この無手勝流の「自然児」とは、いい意味での「天然」ということだ。小澤氏は文科系の長嶋茂雄氏のように思えてくる。

一方、小澤氏は「あとがき」で、〈春樹さんはまあ云ってみれば、正気の範囲をはるかに超えている。クラシックもジャズもだ。彼はただの音楽好きだけでなくよく識っている。こまかいことも、古いことも、音楽家のことも、びっくりする位。音楽会に行くし、ジャズのライブにも行くらしい。自宅でレコードも聴いているらしい。僕の知らないことをたくさん知っているので、びっくりした。〉と書いている。

世界を代表するマエストロと毎年ノーベル文学賞候補に挙がる小説家、いわば世界の至宝のようなふたりの対談は、抜群に面白い。
本書は、日本語の優れた評論やエッセイに贈られる小林秀雄賞を受賞している。

2012年11月12日 (月)

17歳の肖像

16歳の娘が中年男に引っかかり処女を捧げたものの、男の正体を知って娘は自らの愚かさに気づき、男と決別する。それにしても妊娠しなくてよかった、なにしろあの人にはいくつもの前例がありますから、というストーリー。
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An Education
監督:ロネ・シェルフィグ
脚本:ニック・ホーンビィ
製作国:イギリス 2009年  95分

1961年、ロンドン郊外で両親と暮らす16歳のジェニー(キャリー・マリガン)は、オックスフォード大学を目指して勉強に励んでいた。ラテン語以外の成績は合格ライン以上だ。同級生も担任も校長も一目おく優等生。

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音楽クラブの練習のあと、チェロを持って帰宅の途についていたジェニーは、土砂降りの雨にずぶ濡れになり途方に暮れていると、車で通りかかった中年男(ピーター・サースガード)が執拗に車で送ると言い、車に乗り込む。
これが間違いのもとだった。

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その数日後、ジェニーその男と街角で会い、音楽会と食事に誘われる。
ジェニーは、到底父親が許可しないと断るのだが、予定の時間になると男はジェニーの家までやって来た。

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ジェニーの父親(アルフレッド・モリーナ)は、彼女の大学進学に有利なことは許可するが、そうないことは許さないような狭小な男。
例えば、音楽クラブでチェロの練習をするのは内申書に反映するから良いが、音楽会に行くことは無駄というような潤いのない考えをしている。
しかし、デイヴィットはジェニーの両親をうまく説得し、彼女を連れ出した。ジェニーを友人のダニー( ドミニク・クーパー )とその恋人ヘレン(ロザムンド・パイク)と引き合わせ、ジェニーに大人の世界を教える。
音楽会のあとに訪れたレストランでは、ブレンダ・リーの曲がBGMに流れていた。

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デイヴィッドは、オックスフォードにジェニーを連れていっていいかと、父親に許しをこう。
デイヴィッドが童話作家のオックスフォード大教授に会うと言うものだから、父親は教授にコネができ受験が有利になる踏んで、泊りがけのオックスフォード行きを許可する。
ところが、デイヴィットたちはオックスフォードへは行かず、偽造サインを裏表紙に書いた童話の本をジェニーに渡すのだった。
この時点でデイヴィットたちが詐欺師であることがわかるが、ジェニーはすでに心をデイヴィットに奪われていた。

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ジェニーは、勉強して大学に進んでも、所詮は学校の先生か公務員になるくらいで、結局つまらない人生を送ることになると思うようになる。
それより、レストランで食事をし、音楽会へ行ったり、旅行に出かけたりの今の生活の方が、16歳のジェニーにとってはるかに魅力的である。

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やがて、ジェニーの変わりようが学校で問題となり、校長(エマ・トンプソン)に呼び出される。
ジェニーは、担任(オリヴィア・ウィリアムズ)や校長の生活が陳腐で価値のないものに思える。恋は盲目、周りが見えないジェニーは不遜にもそれをふたりの前で口にするのだった。化粧が派手になり、服装は少しだらしなくなり、ジェニーはグレてしまったのだ。

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そんなある日、デイヴィッドに求婚されたジェニーは、両親に相談する。父親は、ジェニーがオックスフォード大学に進学するよりは、金持そうなデイヴィットと結婚した方が幸せになるし、余計な金がかからないと考え結婚を許可する。

そう話がうまくいくはずもなく、デイヴィットは詐欺師、悪質な女たらしなのだ。そういうことがあって、ジェニーは足踏みしたものの、大人の世界を垣間見たことで成長した。
第82回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた。→人気ブログランキング

【ピーター・サーズガード出演作品】
17歳の肖像(2009年)
エレジー(2008年)
フライトプラン(2005年)
ニュースの天才(2003年)

2012年11月11日 (日)

ツーリスト

華麗なアンジェリーナ・ジョリーと渋いジョニー・デップの2大俳優の共演、間違いなく楽しめる作品。
パリのカフェでくつろぐエリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)のもとに、バイク便が届く。「8:33リオン発の列車に乗り、僕の体型に似た男を探せ」との恋人アレキサンダー・ピアースからの手紙である。ピアースは国際指名手配されている人物。
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The Tourist
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク/ジュリアン・フェローズ/ジェフリー・ナックマノフ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
製作国:2010年  アメリカ合衆国 103分

エリーズは、列車なかで冴えない風体のフランク(ジョニー・デップ)の前に座る。フランクは、アメリカ人のツーリストで、職業は数学の教師、2年前に妻を亡くしたと言わなくてもいいことまでしゃべってしまう。
フランクは、誰かに見張られているような気がするとエリーゼに言うが、その通り、警察がふたりを見張っているのだ。。
ベネチア駅に到着して、ふたりは別れたはずなのに、船で運河を移動するエリーズが道を歩くフランクに声をかけ、フランクは船に乗り込む。

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ふたりは、エリーズが常宿にしている超高級ホテルのスイートルームに入る。しかし、そうそううまくはいかない。フランクはソファーで一夜を過ごすことになる。
翌朝、エリーゼはいなくなっていて、取り残されたフランクはマフィアのショーの手下に踏み込まれる。ピストルの弾をよけながら屋根づたいに逃げるが、フランクは地元の警察に拘束されてしまう。

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ここで、ピアースがスコットランド・ヤードとショーに追われている理由を説明すると、ロンドンで巨額の税金を滞納した罪でピアースは国際指名手配されていて、スコットランド・ヤードのアチソン警部(ポール・ベタニー)が行方を探している。アチソン警部はピアースの恋人であるエリーズを見張っていればピアースが現れると踏んでいる。
さらに、ピアースがショーの手下であった頃、ショーの金をかっさらって雲隠れした。ショー一味は、ピアースが整形手術を受けてフランクに成り代わっていると思っている。
もうひとつ付け加えると、ショーはイギリス人であるが、手下はロシア人。007へのオマージュだ。
エリーズはスコットランド・ヤードの凄腕諜報部員。彼女はフランクを巻き込んでしまったことを反省しているが、今さら遅い。

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またもやピアースからエリーゼに手紙が届き、彼女は上流階級のダンスパーティに現れる。人騒がせなほど派手な出で立ちのエリーゼは、会場にいたピアーズらしき男の跡を追いかけるうちに、ショーの手下に捕まってしまう。
ショーはエリーズに金のありかを吐かせようと脅すのだが、なかなか口を割らない。そこに、警察が拘束していたはずのフランクが現れて、思わぬ方向に話は進むのだった。→人気ブログランキング

いわゆる「秘密の暴露」、ピアースでなければ知り得ないことが、最後の最後に明かされる。それをバラしてしまうと、この映画の面白さは吹っ飛んでしまう。 流れるクレジットを眺めながら、そうだったのかと納得するのだが、やがてかなり無理な設定ではないか思うようになる。
まあ、エンターメントだから、こんなストーリーもありかな、ということに落ち着く。
007シリーズへのオマージュがところどころに見られる、「女番007」だ。
2005年のフランス映画「アントニー・ジマー」のリメイク。→人気ブログランキング

2012年11月 9日 (金)

東京島

無人島に、女ひとり男16人が漂着し生活することになると、何が起こるのか。
まずは、暴力男がほかの男を力で押さえ込んで、アラフォーの清子(木村多江)をものにする。ここで、清子がその男を快く思っていないとしても、清子はそんな素振りは露ほども見せない。生きて行くためだ。
Image_20201214120401東京島
監督:篠崎誠
脚本:相沢友子
原作:桐野夏生
製作:宇野康秀/森恭一/伊藤嘉明/喜多埜裕明
音楽:大友良英
製作国:日本   2010年  129分

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なにかと清子につっかる男(窪塚洋介)は、ほかの者とは離れたところでドラム缶に囲まれ、ウミガメの甲羅を背負って暮らしている。
男たちは島を東京島と名づけた。

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ある日、その島に6人の中国人の男が漂着して、日本人たちと敵対するようになる。
中国人には日本人よりもサバイバルの知恵があった。中国人は、野生の豚を捕まえ、清子に豚肉をプレゼントする。
清子が媚を売って豚肉を手に入れたと思った暴力男は、逆上して中国人たちのところへすっ飛んで行く。翌日、暴力男は崖の下で死んでいた。

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日本人の男たちは清子に相談することなく、くじ引きで次の夫を決めることにした。ところがくじに参加したのは、男の3分の1ほど、清子は落胆の色を隠せない。もちろんウミガメ男はくじを引かない。
男たちは、清子より食べるものの方が重要なのだ。それにホモもいる。
当りくじを引いたのは、遭難前の記憶を失っている男。

清子は、男がどうにかしてくれると考えているようで、いたって能天気だ。中国人のところに遊びに行って、ご馳走になったり果物をもらったりしている。

いつのまにか、中国人はドラム缶で筏を作り島を脱出しようとしていた。ドラム缶を提供したウミガメ男は乗船を拒否され、清子だけが誘われた。清子はいったんは島に留まろうとするが、そこはしたたか、筏に乗り込むのだった。

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筏は何日かの漂流の末にある島にたどり着くが、そこは東京島であった。
夫と男たちを裏切って中国人を取った清子の立場は著しく悪くなる。
そんなおり、清子の妊娠が発覚する。誰の子供なのか。清子は父親をあるときは記憶喪失男、別のときは中国人リーダーと使い分けて、したたかに生きる。

そんなある日、若いフィリピンの女5人が島に漂着し、島の様相は一変して華やかなムードになる。女が増えたことで人間関係は落ち着きをみせるのだった。
やがて臨月を迎えた清子は、ふたごの男児を無事出産した。

その後、島は平穏な日々が過ぎていく。
月日は流れて、清子と息子のひとりが東京に戻ることになる。

そして東京。
10歳になった息子の誕生日に、ビルの屋上で清子と出産時に力になってくれたフィリピン女(サヘル)と息子の3人が男を待っている。男の席にはウミガメの甲羅がおかれている。東京島でのウミガメ男の清子に対する態度は、好意をよせる女になにかと悪態をつくという、あれだった。
女性のしたたかさを思い知らされる作品である。

本作は、戦後1945年から1950年にかけて、マリアナ諸島のアナタハン島で起こった事件をもとに、桐野夏生が執筆した『東京島』を原作にしている。→人気ブログランキング

【アナタハン女王事件】
アナタハン島で、南洋興発会社社員の妻、同社の男性上司、日本の軍人の計32人が共同生活を送っていた。しかし、1945年8月に終戦を迎え、米軍は島に拡声器で日本の敗戦を知らせたが、アナタハン島の日本人は誰も信じなかった。
その後、男たちはB-29の残骸の中から2丁の拳銃を手に入れた。これ以降、銃を持つものが権力を握るようになり、以後件の女性をめぐって、殺し合いが行われるようになった。
1950年6月、米国船が女性を救出し、翌1951年には生き残った男性19人も救出された。この事件で死亡および行方不明になった男は13人。
このアナタハン島の女性をめぐる一連の事件が大々的に報道され、件の女性のブロマイドが大いに売れたという。

2012年11月 7日 (水)

『ファミリーツリー』

ファミリー・ツリー [DVD]
The Descendants
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン/ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ
原作:カウイ・ハート・ヘミングス
製作:アレクサンダー・ペイン/ジム・テイラー/ジム・バーク
製作国:アメリカ合衆 2011年 115分  ★★★★☆

事故で妻が植物人間となり、妻が浮気をしていて離婚を考えていたと知った男はどうするのか。
相手がどんな人物かは少なくとも突き止めたい。できれば相手の本心を知り、死を前にした妻に会う相手の反応を見てみたい。妻にはどうすることもできないから、相手に復讐できないかと男が思ったとしても、不思議ではない。

ハワイのオワフ島に暮らす、弁護士のマット(ジョージ・クルーニー)には、妻エリザベスとふたりの娘がいる。
ある日、エリザベスがスピードボートのレースでケガをして、意識不明の重態となり人工呼吸器につながれた。
夫婦は、ここ3ヵ月の間会話をしていなかった。

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母親が事故に遭ってから、10歳の娘スコッティは情緒が不安定となり、学校で問題ばかり起こしていると、マットは担任から知らされる。
マットは、先祖代々受け継がれてきた自身が管財人を務めるカウアイ島の広大な土地を、売却するどうかの決断を迫られていた。売れば自然は失われるものの一族は巨額の金を手にすることができる。マットも経済的にかなりの余裕ができる。

寄宿学校にいる17歳の娘アレックス(シェイリーン・ウッドリー)に妻の病状を伝えに行くと、母親に反発していた娘から、エリザベスの浮気を知らされる。そのことで、アレックスはエリザベスとひと騒動あったという。
寝耳に水のマットは、妻の浮気の真偽を友人夫婦に確かめると、妻は離婚まで考えていたと知らされる。
妻はその男と一緒になることを望んでいたというのだから、マットは心穏やかでなくなる。
浮気の相手スピアーに、妻の事故やケガの状態を伝えようという衝動に駆られ、スピアーのいるカウアイ島に娘ふたりとともに向かう。

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先祖から伝わる土地を、売却前に見ておこうと娘たちと高台に行くと、目の前には神秘的で雄大な原野が広がっていた。
このとき、マットはこの広大な土地が開発されて、自然が失われていいものかと思ったに違いない。

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マットはアレックスを連れて、浜辺のスピアーのコテージに行く。そして首尾よく、スピアーに会うことができた。

娘を連れていたので、相手は気を許して、マットを家の中まで招き入れた。
こういう時は、子供連れが有効だ。子供連れだと警戒心が薄れる。連れいいる子供は男よりも女のほうが効果的だ。

スピアーの口から出た言葉は、本気ではなかったというもの。
【このあとネタバレです。】

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2012年11月 6日 (火)

フラガール

石炭から石油へと世界のエネルギー需要が変わりつつあった昭和40年、日本各地の炭鉱は閉山の運命にあった。東京オリンピックの翌年、まさに日本は高度成長期を迎えようとしていた頃である。
そんなおり、常磐炭鉱の採掘会社は生き残りをかけ雇用を創出するために、温泉を利用した「常磐ハワイアンセンター」を建設することになった。
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Hula Girl
監督:李相日
脚本:李相日/羽原大介
製作:李鳳宇/河合洋/細野義朗
音楽:ジェイク・シマブクロ
製作国:日本  2006年  120分 

町には「なにがハワイだ」という反対意見がある。
現状を打破し「ハワイ」を成功させようとする者と、あくまで炭鉱にしがみつく者に、町は二分される。
男は炭鉱夫、女は選炭婦として働くのが当たり前の土地柄。紀美子(蒼井優)の母親・千代(富司純子)も兄(豊川悦司)も、炭鉱で働いている。父親は落盤事故で亡くなった。千代は「ハワイ」に大反対だ。

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フラダンサー募集の説明会に集まったのは、募集の張り紙を紀美子に見せた早苗(徳永えり)、紀美子、炭鉱会社の事務員で子持ちの初子、大柄な小百合(山崎静代)のたった4人だけだ。

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そんな娘たちにダンスを教えるのは、吉本部長(岸部一徳)が東京から招いたSKD出身のダンサー平山まどか先生(松雪泰子)。
まどかは、カラフルなファションに身を包み、ビールの小瓶を片手に稽古場に到着するなり、飲み過ぎで吐いてしまうという体たらく、脛にキズを持つワケアリの女だ。
そして、4人を目の前にして、あまりのど素人ぶりに愕然とするのだった。
まどかは母親の借金を背負い借金取りに追われ、酒でも飲まないとやってられない自暴自棄の心境にあった。
そんな先生と生徒たちの練習の日々が始まる。
やがて、必死に踊りを練習する貴美子たちの姿に心打たれ、「おら、ケツ振れねえ」「おらの体、見世物じゃねえ」などと言っていた娘たちも、踊り子に志願するようになる。まどかもなんとかしようと、本気で教えるようになる。

ある日、母親の千代が稽古場にいくと、そこには一人でもくもくと練習する貴美子がいた。千代はその踊りに見とれるのだった。
このシーンどこかで見たことがある、『リトルダンサー』(2001年 スティーヴン・ダルトリー)だ。
状況もそっくり、ストライキで揺れるイギリスの炭鉱町、踊る息子を父親が見て踊りの才能を認めるシーン。それまで息子が踊りを習うことに、父親は大反対だった。

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数々の困難を乗り越えて、いよいよ常磐ハワイアンセンターのオープンの日を迎える。
見せ場は、本番でのフラガールたちの息の合った踊り。見事な踊りに大歓声が湧く。
ひときわ目を引くのは蒼井優のソロの踊りである。

古いしがらみと闘いながら、新しいことを始めようとする者たちの奮闘ぶりを描くありがちなパターンだが、笑いあり涙あり感動ありのストーリーは見応え充分。出演者たちの福島弁も、ジェイク・シマブクロのウクレレも、いい味が出ている。
あの頃「なんで、福島にハワイなんだ」と、日本中が思ったのではないだろうか。しかし、その強引な発想には先見の明があったのだ。→人気ブログランキング

2012年11月 4日 (日)

真珠の耳飾りの少女

1650年代、オランダのデルフト。
冒頭、フェルメールの絵に描かれている部屋や調度品が映し出される。壁に貼られた世界地図や、背もたれが鋲で留められた椅子や、市松模様風の床などが映ると、フェルメールファンは一気に引き込まれる。画面は、いわゆるフェルメールの光に満ちている。
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Girl with a Pearl Earring
監督:ピーター・ウェーバー
脚本:オリヴィア・ヘトリード
原作:トレーシー・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女』
製作:アンディ・パターソン/アナンド・タッカー
音楽:アレクサンドル・デプラ
製作国:英国  ルクセンブルク  2004年  100分

主人公のグリート(スカーレット・ヨハンセン)の父親は、デルフト焼きのタイル絵師。グリートは見習い女中としてフェルメール家に住み込むことになる。父親が盲目であったため、家具を元の位置のまま掃除ができる特技を持つ設定である。

グリートに仕事を説明する女中頭は、ひところ流れていた牛乳のTVコマーシャルでおなじみの「牛乳を注ぐ女」そのもの、白い帽子をかぶり前掛けをして肉付きがよく貫禄十分。

フェルメール(コリン・ファース)は寡作の画家で、妻の母親は資産家とはいえ、6人目の子供が生まれたばかりと子沢山、経済的な余裕はない。このあとも、フェルメール家は子宝に恵まれ、14人もの子供が生まれたという。

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画商のファン・ライフェン(トム・ウィルキンソン)はフェルメール家の生殺与奪の権を握っていると言っていい。ライフェンのさじ加減ひとつで、フェルメール家の経済状況は変わるのだ
ライフェンの事務所には、あの名作「デルフト眺望」が、さりげなく壁にたてかけられておかれている。「ふたりの紳士と女」の男のモデルは、ライフェン自身だと自慢する。
本作では「真珠の首飾りの女」のモデルは妻だと、フェルメール家に招かれたディナーの席でライフェンが言う。フェルメールの絵に何回か使われるテンの毛皮の襟がついた黄色の服を身にまとい、いままさに真珠の首飾りをつけようとしてる構図である。ライフェンは「妻は牛の小便で染めた黄色の服を着せられた」と嫌味を言う。当時、黄色の絵の具はマンゴーの葉を食べさせた牛の小便から抽出して作られたという(『深読みフェルメール』)。
ライフェンは、フェルメール家の女中に手を出し身ごもらせた前歴がある厄介な人物。機会あらばグリートを手篭めにしようと狙っている狒々ジジイだ。

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グリートには、アトリエの窓を拭くと光が変ってしまうとためらうような色彩に敏感なところがある。
そこをフェルメールが見込み、グリートに絵を描くために使うカメラの原型であるカメラ・オブスクーラを見せたり、絵の具の調合をさせたりするのだった。そうしてふたりは心を通わせていく。

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やがて、アトリエでフェルメールとグリートが過ごす時間が長くなり、妻はふたりの関係に疑惑を抱くようになる。

そして、普段は足を踏み入れないアトリエに逆上した妻が入り、フェルメールに描いている絵を見せるよう迫る。その絵には、青いターバンを巻き、妻が所有する大きな真珠の耳飾りをつけ、口を半開きにして、こちらを振り向くグリートが描かれていた。→人気ブログランキング
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フェルメール・ラバーは見逃せない映画。
第76回アカデミー賞で撮影賞・美術賞・衣裳デザイン賞で候補にあがった。

【2012.11.02】『深読みフェルメール』朽木ゆり子×福岡伸一
【2011.12.21】『フェルメール 静けさの謎を解く』藤田令伊
【2011.11.09】 フェルメールからのラブレター展@宮城県美術館
【2011.10.28】『フェルメール 光の王国』福岡伸一

2012年11月 3日 (土)

スタンド・バイ・ミー

ベン・E・キングが歌うR&Bの名曲「スタンド・バイ・ミー」の軽快なリズムにのって、クレジットが流れる。
連帯感で結ばれた4人の少年の冒険譚。
498b9337128048ac859da73f7a1aacfbスタンド・バイ・ミー
Stand by Me
監督:ロブ・ライナー
脚本:レイノルド・ギデオン/ブルース・A・エヴァンス
原作:スティーヴン・キング『恐怖の四季』
製作国:アメリカ合衆国  1986年 89分

1959年、人口1281人のオレゴンの田舎町。
4カ月前に、主人公ゴーディの兄が死んだ。両親はいまだに沈みこんでいる。兄は両親が期待をかける将来を嘱望される好青年だった。そんな兄に両親はゴーディ以上に愛情を注いでいた。そのことがゴーディのコンプレックスとなる。
12歳のゴーディは、気の合うクリス、バーン、テディーとともに、木の上の隠れ家にこもり、タバコをふかしトランプ遊びをして、つるんでいた。

1

ある日バーンは、兄たちの会話から、行方不明になっている少年が、森の奥で列車にはねられ死んでいることを知る。死体を発見すれば新聞に載り有名になると思った4人は、死体探しの旅に出かける。水筒と毛布を持って線路づたいに行けば30キロ先の目的地のハーロウにつくはずだ。
こうして、泣き笑いの冒険が始まる。
夜は焚き火を囲みながら、それぞれが悩みを打ち明け合うのだった。

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一方、兄たちチンピラもゴーディたちと同じことを考え、翌日2台の車に分乗して、死体のもとへ向かう。
ゴディたちに先こされてしまったチンピラたちは、死体を横取りしようとゴーディたちを脅す。リーダー格のエース(キーファー・サザランド)が、ナイフをちらつかせると、ゴーディはクリスが家から持ち出した拳銃でエースに狙いを定める。チンピラたちはなくなく引き下がるのだった。

6

そしてゴーディたちは、死体のありかを匿名で警察に連絡した。
こうしてゴーディたちの連帯感で結ばれた夏の旅は終わる。

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兄弟の関係において親に差別的に愛情を受けた場合、コンプレックスが生まれるという。このコンプレックスを負う者は、親の愛を巡る葛藤の相手となった兄弟と同じ世代の人間に対して憎悪を抱くことがある。これをユングは旧約聖書の逸話にちなんで「カインコンプレックス」と呼んだ。
まさに、ゴーディが銃でエースに狙いをつけたその表情は、憎悪と憤怒に満ちていた。それに押されてエースは引き下がったのだ。

その後、ゴーディはテディやバーンとはあまり会わなくなった。
友だちとはそんなものだと述懐する。
確かにそんなものだ。子供の頃は、どんなに仲良くしていた仲間でも、挨拶もしなくなるくらい疎遠になることがある。

バーンは高校を卒業すると結婚し4人の子供を設けた。今は製材所に勤めている。
テディーは視力の問題で、あこがれの軍隊に入れなかった。一度刑務所に入り、今は日雇いの仕事をしている。
クリスは町を出て大学に入り弁護士になった。

作家になったゴードン(ゴーディ)・ラチャンスは、過去を回想してタイプを打ち終わった。1週間前に新聞に載った「弁護士クリストファー(クリス)・チェンパーズ刺殺される」という記事を読んで、過去の日を思い起こしたのだ。
そして「スタンド・バイ・ミー」が流れる。
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『恐怖の四季』に収録されている4つの物語のうち『マンハッタンの奇譚クラブ』以外の3作品が映画化されている。
『刑務所のリタ・ヘイワース 春は希望の泉』 Rita Hayworth and Shawshank Redemption (Hope Springs Eternal)(『ショーシャンクの空に』)、 『ゴールデンボーイ 転落の夏』 Apt Pupil (Summer of Corruption)、『スタンド・バイ・ミー 秋の目覚め』 The Body (Fall From Innocence)、 『マンハッタンの奇譚クラブ 冬の物語』 The Breathing Method (A Winter's Tale)。

2012年11月 2日 (金)

『深読みフェルメール』 (朝日新書) 朽木ゆり子×福岡伸一

深読みフェルメール (朝日新書)

深読みフェルメール (朝日新書)

posted with amazlet at 12.11.02
朽木ゆり子×福岡伸一
朝日新聞出版
2012月7月
ISBN978-4-02-273457-0

『フェルメール全点踏破の旅』の著者であるジャーナリストの朽木ゆり子氏と、『フェルメール 光の王国』の著者である分子生物学者の福岡伸一氏の対談集である。両氏とも、現在鑑賞可能なフェルメールの絵画を全点踏破している。
門外漢だから言える自由なフェルメール論が楽しい。

フェルメールの絵を深読みしてしまう理由は、現在フェルメールが描いたとされる絵が37点(諸説あり)と少く、語るに手頃な数であること、これまでに4点が盗難にあい「合奏」を除き所有者の手元に帰ってきているというようなエピソードに事欠かないこと、さらに絵のなかに謎が散りばめられていることである。福岡氏は、村上春樹の小説を深読みしてしまうのに似ているという。

『フェルメール光の王国』で福岡氏が展開する推理を、この対談でも披露している。デルフトでフェルメールと同じ日に生まれたレーフェンフックが、「地理学者」のモデルではないかという。レーフェンフックは顕微鏡を発明した人物。フェルメールが正確な遠近法に基づき絵を描くために、レーフェンフックが所有していたカメラの原型であるカメラオブスクーラを借りたのではないか。さらに、レンズ磨きを生業としているユダヤ人の哲学者スピノザが、そのレンズを介して、レーフェンフックやフェルメールと交流があったのではないかなどである。

巷間言われている「手紙を読む女」が妊娠しているという説に対し、朽木氏は否定する。当時のオランダでは妊婦は魅力的ではないと考えられていたので、絵のモデルに登場することはなく、さらに、ハイウェストのファッションが流行っていたという。

フェルメールの絵には非真作、贋作の問題がつきまとう。
後世の者がその作者の作品に似ていると思うのが非真作であり、意図的にせよそうでないにせよフェルメールの絵には非真作が、かつて多数存在した。
1945年に、ナチスのゲーリングが所有していたフェルメール作とされる「キリストと悔恨の女」の流通経路が調査された。その調査で明らかになったことは、メーヘレンが敵国の高官にオランダの至宝フェルメールの絵を売ったということで、メーヘレンは反逆罪を問われた。しかし「キリストと悔恨の女」はメーヘレン自らが描いた贋作であると告白した。その自白はにわかには信用されなかったため、メーヘレンは法廷で実際に描いてみせたという。

1990年にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれた「合奏」が、近々出てきそうであると朽木氏がいう。詳細は本書にあたられたい。こういうホットな裏情報が知らせれると、なにか得したような気分になる。

最後は、全点踏破のノウハウについて語られている。

【2012.11.04】 『真珠の耳飾りの少女』
【2011.12.21】 『フェルメール 静けさの謎を解く』藤田令伊
【2011.11.09】 フェルメールからのラブレター展@宮城県美術館
【2011.10.28】 『フェルメール 光の王国』福岡伸一

2012年11月 1日 (木)

たそがれ清兵衞

庄内地方の海坂藩(うなさかはん 架空の藩)の下級武士、50石の井口清兵衛は、妻をなくし痴呆の母親の面倒をみながら娘ふたりを育て、ぎりぎりの貧乏生活を送っていた。仕事が終わると黄昏時にまっすぐ家に帰る清兵衛を、回りは「たそがれ清兵衛」と呼んでいる。

Image_20201217144001たそがれ清兵衛
監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
製作:大谷信義/萩原敏雄/岡素之/宮川智雄/菅徹夫/石川富康
音楽:冨田勲  主題歌:井上陽水「決められたリズム」
公開:2002年 日本 129分

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清兵衛の年収50石は、現在どれくらいの金額なのか。
50石といっても、「お借り米」つまり借金の返済で20石差し引かれていた。手元に残るのは30石。1石を1両、1両を4~5万円と換算すると、年収は120万~150万円。かなり深刻なワーキングプアである。
鶏を飼い、裏庭には野菜を栽培し、虫かご作りの内職をしているが、焼け石に水。生活は赤貧洗うがごとくである。

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清兵衛の幼馴染みの朋江(宮沢りえ)が甲田豊太郎(大杉漣)に嫁いだものの、酒乱で暴力夫の甲田を恐れて、離縁して逃げ帰ってきた。ある夜、朋江のもとに酒に酔った甲田が現れて朋江に絡む。それを静止する清兵衛に腹を立てた甲田は、清兵衛に果し合いを申し出るのだった。
よく日、真剣を振り回す甲田に、清兵衛は木刀の小太刀で立ち向かい、気絶させてしまう。

ここで清兵衛がただものでないことがわかる。かつて師範代を務めたこともある、小太刀の遣い手であった。

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藩主が亡くなり跡目争いの結果、反体制側は粛清され、一刀流の遣い手である余呉善右衛門(田中泯)は切腹を命ぜられた。余呉は藩命に従わず、自宅に立て籠もった。清兵衛に余呉を斬るようにと家老から命じられる。余呉を斬れば禄高を上げるとの甘い言葉にも、惑わされず断るのだった。しかし、家老の命令に逆らうわけにはいかず、引き受けざるを得ない。
清兵衛は朋江を呼んで事情を説明し、生きて帰ったら一緒になってくれるように、清兵衛は思いの丈を伝える。

さて、余呉の家に入った清兵衛に、余呉は逃がしてくれるように頼む。ところが、余呉が立て籠もったいきさつを聞いているうちに、清兵衛はつい気を許してしまう。妻の葬式で出費が嵩み、大太刀を売ったので、いま腰にさしているのは竹光であると、信じられないこと口走ってしまう。それを聞いた余呉は、自らの剣の実力を見くびったと怒り、清兵衛に挑みかかろうとする。清兵衛は、自分が修行した流派は小太刀で戦う流派だと言い訳しても、余呉の怒りは収まらない。当たり前だ。そこで壮絶な斬り合いが始まる。→人気ブログランキング
【ここからネタバレです。】

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