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2012年11月 9日 (金)

東京島

無人島に、女ひとり男16人が漂着し生活することになると、何が起こるのか。
まずは、暴力男がほかの男を力で押さえ込んで、アラフォーの清子(木村多江)をものにする。ここで、清子がその男を快く思っていないとしても、清子はそんな素振りは露ほども見せない。生きて行くためだ。
Image_20201214120401東京島
監督:篠崎誠
脚本:相沢友子
原作:桐野夏生
製作:宇野康秀/森恭一/伊藤嘉明/喜多埜裕明
音楽:大友良英
製作国:日本   2010年  129分

_1

なにかと清子につっかる男(窪塚洋介)は、ほかの者とは離れたところでドラム缶に囲まれ、ウミガメの甲羅を背負って暮らしている。
男たちは島を東京島と名づけた。

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ある日、その島に6人の中国人の男が漂着して、日本人たちと敵対するようになる。
中国人には日本人よりもサバイバルの知恵があった。中国人は、野生の豚を捕まえ、清子に豚肉をプレゼントする。
清子が媚を売って豚肉を手に入れたと思った暴力男は、逆上して中国人たちのところへすっ飛んで行く。翌日、暴力男は崖の下で死んでいた。

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日本人の男たちは清子に相談することなく、くじ引きで次の夫を決めることにした。ところがくじに参加したのは、男の3分の1ほど、清子は落胆の色を隠せない。もちろんウミガメ男はくじを引かない。
男たちは、清子より食べるものの方が重要なのだ。それにホモもいる。
当りくじを引いたのは、遭難前の記憶を失っている男。

清子は、男がどうにかしてくれると考えているようで、いたって能天気だ。中国人のところに遊びに行って、ご馳走になったり果物をもらったりしている。

いつのまにか、中国人はドラム缶で筏を作り島を脱出しようとしていた。ドラム缶を提供したウミガメ男は乗船を拒否され、清子だけが誘われた。清子はいったんは島に留まろうとするが、そこはしたたか、筏に乗り込むのだった。

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筏は何日かの漂流の末にある島にたどり着くが、そこは東京島であった。
夫と男たちを裏切って中国人を取った清子の立場は著しく悪くなる。
そんなおり、清子の妊娠が発覚する。誰の子供なのか。清子は父親をあるときは記憶喪失男、別のときは中国人リーダーと使い分けて、したたかに生きる。

そんなある日、若いフィリピンの女5人が島に漂着し、島の様相は一変して華やかなムードになる。女が増えたことで人間関係は落ち着きをみせるのだった。
やがて臨月を迎えた清子は、ふたごの男児を無事出産した。

その後、島は平穏な日々が過ぎていく。
月日は流れて、清子と息子のひとりが東京に戻ることになる。

そして東京。
10歳になった息子の誕生日に、ビルの屋上で清子と出産時に力になってくれたフィリピン女(サヘル)と息子の3人が男を待っている。男の席にはウミガメの甲羅がおかれている。東京島でのウミガメ男の清子に対する態度は、好意をよせる女になにかと悪態をつくという、あれだった。
女性のしたたかさを思い知らされる作品である。

本作は、戦後1945年から1950年にかけて、マリアナ諸島のアナタハン島で起こった事件をもとに、桐野夏生が執筆した『東京島』を原作にしている。→人気ブログランキング

【アナタハン女王事件】
アナタハン島で、南洋興発会社社員の妻、同社の男性上司、日本の軍人の計32人が共同生活を送っていた。しかし、1945年8月に終戦を迎え、米軍は島に拡声器で日本の敗戦を知らせたが、アナタハン島の日本人は誰も信じなかった。
その後、男たちはB-29の残骸の中から2丁の拳銃を手に入れた。これ以降、銃を持つものが権力を握るようになり、以後件の女性をめぐって、殺し合いが行われるようになった。
1950年6月、米国船が女性を救出し、翌1951年には生き残った男性19人も救出された。この事件で死亡および行方不明になった男は13人。
このアナタハン島の女性をめぐる一連の事件が大々的に報道され、件の女性のブロマイドが大いに売れたという。

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