ロビイストの陰謀
本作は、2006年に起こった「ジャック・エイブラモフ事件」をもとに作られている。この事件が、アメリカ政界を揺るがす大スキャンダルであったにもかかわらず、日本ではあまり大きく報道されなかったのは、ロビイストという存在が日本にはないため、あまり関心が持たれなかったからだろう。議会議員ら21人が有罪となるなど、ウォーターゲート事件に匹敵するアメリカ政界史上最大のスキャンダルとなった。
原題の『Casino Jack』は、主人公の名前ジャック・エイブラモフにかけている。
日本でロビイストが必要とされないのは、企業団体献金が認められているからだ。認められなければ、企業や団体は自分たちの利益を守るためにあるいは追求するために、画策する方法つまりロビイストが必要になるのではないか。
『セブン(95年)』『アメリカン・ビューティー(99年)』『ライフ・オブ・デビット・ゲイル(03年)』などで好演した個性派ケヴィン・スペイシーが、強欲なロビイストを演じて作品に抜群のリアリティーを与えている。
ロビイストの陰謀 Casino Jack 監督:ジョージ・ヒッケンルーパー 脚本:ノーマン・スナイダー 製作:ゲイリー・ホーサム/ビル・マークス/ジョージ・ザック 製作国:アメリカ合衆国 2010年 112分 |
特定の団体の代理として政治家や官僚と交渉し、政策や立法などを実現させるのがロビイスト。
大統領予備選でマケインを退け、ブッシュ共和党政権を誕生させたと言われる大物ロビイストのジャックは、ビジネスパートナーのマイケル・スキャンロン(バリー・ペッパー)と手を組み、私服を肥やしていた。
ジャックはユダヤ教徒。スカッシュで汗を流し、腹筋を鍛え、時間があればダンベルや重い本を持って腕を鍛えている。厚い信仰心を持ち、いつも体を鍛えてると自負する自信家である。
ジャックは、マイケルに誘われ、カジノを経営する先住民族のチペワ族を騙して大金を得る。その後も少数民族に対する優遇政策に目をつけたふたりは、優力議員に金を握らせ、敵対する部族の要望を同時に受け、両方の部族から巨額の報酬を巻き上げる。
さらに、欲に目が眩んだふたりはフロリダのカジノ客船をギリシャ人から騙し取り、大学時代の友人アダム・キダン(ジョン・ロヴィッツ)に経営を任せる。しかし、キダンは元の経営者であるギリシャ人とのトラブルを解決するためにマフィアを雇い、ギリシャ人を殺害してしまう。
ある日、配達されてきたマイケルの洗濯物を受け取った婚約者のエミリー(ラシェル・ルフェーブル)は、洗濯物の中に女性物の下着を見つけ、マイケルの浮気の動かぬ証拠をつかむ。これが、致命傷となった。エミリーは、腹いせにジャックとマイケルの悪事を洗いざらいワシントン・ポストに暴露し、ふたりはFBIに逮捕されてしまう。
公聴会はマケインが仕切った。作品の中で公聴会でのマケイン本人の映像がそのまま使われていてリアリティーがある。ジャックには6年の実刑が下された。
ジャックが収監され、数年経ったある日、ジャックの恩赦の書類がブッシュの手元に回ってきたが、ブッシュはサインを拒否した。
作中、ジャックの事務所にB級アクション映画『レッド・スコーピオン(1989年)』のポスターが目立つところに貼ってあるのは、ジャック・エイブラモフが、団体から巻き上げた金でこのシリーズ2作をプロデュースしたからである。→人気ブログランキング
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