真珠の耳飾りの少女
1650年代、オランダのデルフト。
冒頭、フェルメールの絵に描かれている部屋や調度品が映し出される。壁に貼られた世界地図や、背もたれが鋲で留められた椅子や、市松模様風の床などが映ると、フェルメールファンは一気に引き込まれる。画面は、いわゆるフェルメールの光に満ちている。
真珠の耳飾りの少女 Girl with a Pearl Earring 監督:ピーター・ウェーバー 脚本:オリヴィア・ヘトリード 原作:トレーシー・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女』 製作:アンディ・パターソン/アナンド・タッカー 音楽:アレクサンドル・デプラ 製作国:英国 ルクセンブルク 2004年 100分 |
主人公のグリート(スカーレット・ヨハンセン)の父親は、デルフト焼きのタイル絵師。グリートは見習い女中としてフェルメール家に住み込むことになる。父親が盲目であったため、家具を元の位置のまま掃除ができる特技を持つ設定である。
グリートに仕事を説明する女中頭は、ひところ流れていた牛乳のTVコマーシャルでおなじみの「牛乳を注ぐ女」そのもの、白い帽子をかぶり前掛けをして肉付きがよく貫禄十分。
フェルメール(コリン・ファース)は寡作の画家で、妻の母親は資産家とはいえ、6人目の子供が生まれたばかりと子沢山、経済的な余裕はない。このあとも、フェルメール家は子宝に恵まれ、14人もの子供が生まれたという。
画商のファン・ライフェン(トム・ウィルキンソン)はフェルメール家の生殺与奪の権を握っていると言っていい。ライフェンのさじ加減ひとつで、フェルメール家の経済状況は変わるのだ
ライフェンの事務所には、あの名作「デルフト眺望」が、さりげなく壁にたてかけられておかれている。「ふたりの紳士と女」の男のモデルは、ライフェン自身だと自慢する。
本作では「真珠の首飾りの女」のモデルは妻だと、フェルメール家に招かれたディナーの席でライフェンが言う。フェルメールの絵に何回か使われるテンの毛皮の襟がついた黄色の服を身にまとい、いままさに真珠の首飾りをつけようとしてる構図である。ライフェンは「妻は牛の小便で染めた黄色の服を着せられた」と嫌味を言う。当時、黄色の絵の具はマンゴーの葉を食べさせた牛の小便から抽出して作られたという(『深読みフェルメール』)。
ライフェンは、フェルメール家の女中に手を出し身ごもらせた前歴がある厄介な人物。機会あらばグリートを手篭めにしようと狙っている狒々ジジイだ。
グリートには、アトリエの窓を拭くと光が変ってしまうとためらうような色彩に敏感なところがある。
そこをフェルメールが見込み、グリートに絵を描くために使うカメラの原型であるカメラ・オブスクーラを見せたり、絵の具の調合をさせたりするのだった。そうしてふたりは心を通わせていく。
やがて、アトリエでフェルメールとグリートが過ごす時間が長くなり、妻はふたりの関係に疑惑を抱くようになる。
そして、普段は足を踏み入れないアトリエに逆上した妻が入り、フェルメールに描いている絵を見せるよう迫る。その絵には、青いターバンを巻き、妻が所有する大きな真珠の耳飾りをつけ、口を半開きにして、こちらを振り向くグリートが描かれていた。→人気ブログランキング
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フェルメール・ラバーは見逃せない映画。
第76回アカデミー賞で撮影賞・美術賞・衣裳デザイン賞で候補にあがった。
【2012.11.02】『深読みフェルメール』朽木ゆり子×福岡伸一
【2011.12.21】『フェルメール 静けさの謎を解く』藤田令伊
【2011.11.09】 フェルメールからのラブレター展@宮城県美術館
【2011.10.28】『フェルメール 光の王国』福岡伸一
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