ナイト・オン・ザ・プラネット
地球上の都市で、今もタクシード運転手と乗客の様々なやり取りが行われている。そんな思いを抱かせる話がオムニバスとなって5つ、それぞれに深い味わいがある。
ナイト・オン・ザ・プラネット Night on Earth 監督:ジム・ジャームッシュ 脚本:ジム・ジャームッシュ 製作:ジム・ジャームッシュ 製作総指揮:ジム・スターク 音楽:トム・ウェイツ 製作国:米、英、仏 1992年 129分 |
ロサンゼルス。
コーキー(ウィノナ・ライダー)は、空港で拾った客中年の女性ヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)をビバリーヒルズへ運ぶ。車内で携帯電話で話すヴィクトリアは、映画の若い女性の出演者を探していた。ヴィクトリアはコーキーに映画に出演しないかと誘う。ガムを噛みながら、タバコを吸い続ける、中途半端に生きていそうなコーキーには、将来に対するきちんとした設計図があった。
ニューヨーク。
凍えそうに寒い夜、黒人のヨーヨーがようやく捕まえたタクシーを運転していたのは、東ドイツからきたばかりのヘルムート。彼は英語がろくにできず、オートマ車をまともに運転できない。その上ブルックリンまでの道を知らないという有様。ヨーヨーは、金を払うから運転を変われと言い出す。このふたり、かみ合わないジョークを言い合って、至って能天気。そうこうするうちに、ブルックリン橋にさしかかる。
パリ。
酔った黒人ふたりの態度に腹を立てた黒人のタクシー運転手は、ふたりを途中で降ろしてしまう。続いて乗ってきたのは若い盲目の女性。感覚の鋭い彼女は、彼が黒人であることを当ててしまうし、橋を渡らなかったことも分かっている。彼は気の強い女に、心を見透かされたような気分になる。
ローマ。
運転手のジーノ、神父を乗せる。ジーノは司教ではないという神父を司教と呼び、勝手に懺悔し始める。話は子供の頃からの性の話。心臓の悪い神父は薬を飲もうとするが、ジーノが乱暴にハンドルを切ったせいで、薬を車内に撒き散らしてしまう。ジーノの懺悔を聞くうちに、神父は心臓発作を起こす。
ヘルシンキ。
無線連絡を受けた場所にミカが着くと、凍てついた歩道に酔っ払った労働者風の3人の男が待っている。その中のひとりアキは酔い潰れていて、他のふたりが、今日がアキにとってどれほど不幸な一日かをミカに説明する。しかし、ミカはアキよりはるかに不幸だ。ミカはふたりに自らの不幸を話し始める。
場面は車の中、登場人物はタクシー運転手と乗客だけという限られた条件で、巧みに人間模様が描かれている。落語のようなオチのある話がずらり、珠玉の短編集といった感じだ。→人気ブログランキング
« 食堂かたつむり | トップページ | ゴールデン・スランバー »
「ヒューマン」カテゴリの記事
- 夫婦善哉 織田作之助(2023.04.13)
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- ダラス・バイヤーズクラブ(2015.01.21)
「コメディ」カテゴリの記事
- リトル・チルドレン(2021.01.02)
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- フィッターXの異常な愛情 蛭田亜紗子(2015.06.15)
- 『ジャッジ!』(2015.02.28)
- 8月の家族たち(2014.10.16)
コメント