マッチポイント
野心を抱く男が上流階級に成り上がろうとする話。
![]() Match Point 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン 製作国:英・米 2005年 124分 |
ロンドンの会員制テニスクラブのコーチ、元プロテニスプレーヤーのクリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、資産家の息子トムと仲良くなる。
トムの妹クロエはクリスに好意を抱き、父親の会社への就職を斡旋する。野心家のクリスにとっては、願ったり叶ったりの展開となる。
上流階級の優雅な生活は、レストランで豪華な食事をして、ダンスやオペラ行ったり、狩りに出かけたり、クリスはそんな生活に足を踏み入れる。
トムの恋人ノラ(スカーレット・ヨハンソン)はクリスに挑発的な態度をとり、ふたりは関係を結んでしまう。
クリスは貧困の代名詞アイルランド出身。ジョナサン・リース=マイヤーズ自身がアイルランド出身だから、ウッディ・アレン監督は訛りも計算に入れたのだろう。
ノラは米国のコロラド出身で、母親はアル中、姉は薬物中毒。おまけに本人はバツイチ。クリスとノラを貧困層の出身とすることで、ふたりが手に入れようとしている上流階級の生活とのギャップを際立たせようとしているのが監督の意図だろう。
監督は、作中、ノラに「私はセクシー、姉はブロンドで正統派の美人」と言わせていて、その通りスカーレット・ヨハンソンの妖艶な魅力が見所のひとつだ。
トムの母親にすれば、そんな素性の知れない女と大事な息子が結婚することなど、許せない。トムは母親の反対でノラと別れさせられる。
やがて、クリスはトムの父親の会社に入り仕事を始める。仕事でのクリスの評価は上々、やがてクロエと結婚し、義父から与えられた高級マンションで暮らし始める。トントン拍子だ。
そんなおり、クリスはアメリカから戻ってきたノラと再会し、強引に性的関係を続ける。
クリスは妻には愛をノラには愛欲を感じると、身勝手なことを言うのであった。
そして、ノラが妊娠してしまう。クリスは絶対に生むと言い張るノラの殺害を画策する。
BGMは最初から最後までオペラが流れていて、ロンドンの上流階級「らしい」雰囲気が醸し出されている。
テニスネットに引っかかったボールが、こっちのコートに落ちるのか相手コートに転がるのかの、そんな一瞬息を呑む結末が用意されている。捻りの効いた結末に、「監督のコント趣味にやられてしまった」という印象が残る作品である。
本作は、ウディ・アレンの最高傑作と評されているとのこと。
「マッチポイント」オリジナル・サウンドトラック 1. ヴェルディ:オペラ『イル・トロヴァトーレ』より「激しく襲いかかり」 1910年の録音 2. ヴェルディ:オペラ『椿姫』より「思い出の日から」 3.カルロス・ゴメス:オペラ『サルヴァトール・ローザ』より「私のかわいい人」 1919年録音 4. ヴェルディ:オペラ『リゴレット』より「慕わしい人の名は」 5. ビゼー:オペラ『真珠採り』より「耳に残る君の歌声」 1904年録音 6. ロッシーニ:オペラ『ウィリアム・テル』より「何に気をとられて」 7. ヴェルディ:オペラ『マクベス』より「ああ、父の手は」 1916年録音 8. ヴェルディ:オペラ『オテロ』より「罪を犯したデスデモーナ」 9. ドニゼッティ:オペラ『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」 1911年録音 |
サウンドトラックに収録されたオペラのいくつかは、なんと100年前に録音されたもの。映画では処理されているのか気づかなかったが、サウンドトラックを聴くとプツプツという雑音が耳に触る。そこまで監督が思い入れるエンリコ・カルーソー(1873~1921年)は、イタリアが誇る不出世のテノール歌手だそうだ。
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