宇宙飛行士選抜試験 大鐘良一 小原健右
2008年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)は10年ぶりに宇宙飛行士を募集した。本書は、NHK取材班がその選抜試験の過程を、受験者たちに密着して取材したドキュメンタリーである。
宇宙飛行士選抜試験 大鐘良一 小原健右 光文社新書 2010年 |
選抜試験受験資格は、「自然科学系の大学を卒業し、実務経験が3年以上あること」という至って大雑把なもの。応募者は963人であった。
応募者は、子供の頃からの宇宙飛行士になる夢を抱き続けてきた人たちである。
一次試験は英語の筆記とヒアリングで、その結果230人が残る。さらに、心理テスト、5教科および一般教養試験が行われ、48人に絞り込まれる。
そのあと1週間かけて、最終選抜試験に進む10人が選ばれる。
10人はいずれも才能豊かな強者達である。女性は、35歳の産婦人科医師がひとり残った。
最終選抜試験は、まず2週間かけて競う。最後の1週間は閉鎖環境施設に入って共同生活を送る。
本書には、極限のストレスがかかる閉鎖環境施設の受験者たちの様子が事細かに書かれている。
宇宙飛行士選抜試験はどのような試験なのか。それは前書きに書かれているように、「どんなに苦しい局面でも決してあきらめず、他人を思いやり、その言葉と行動力で人を動かす力があるか、その人間力を徹底的に調べ上げる」試験なのである。
閉鎖環境施設での試験が終了すると、一行はNASAへ飛び最終段階の試験に臨む。行き先は、テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターだ。
ここで、宇宙飛行士は死と隣り合わせであること、今までの生活を捨てなければならないこと、家族も含め宇宙飛行士として生活する覚悟ができているかを徹底的に問われるのである。
宇宙飛行士候補に選抜されると、JAXAの職員として公務員並の給料が支払われる。そして宇宙飛行士になるためには、NASAで最低でも2年間の訓練が必要となる。
テレビに映る日本人宇宙飛行士のインタビューを聞いていると、どの飛行士も爽やかで明快な話し方をする印象を受ける。そもそも備わった資質、あるいは性格が、陽気でサービス精神旺盛、広い心を持つ人物たちであるということが本書によってわかった。さらに彼らが厳しい訓練を乗り越え過酷な宇宙旅行を経験すると、千日業を達成した阿闍梨のような向こう側の人間になるのだろうなと思った。→人気ブログランキング
【2011.11.09】『わたしを宇宙に連れてって』 by メアリー・ローチ
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