ブタがいた教室
人騒がせなことに、新学期のはじめに、生後2カ月の子豚を抱えて教室に現れた星(妻夫木聡)先生は、「豚を飼育して卒業の時に皆で食べましょう」と言い出した。先生は、命の大切さと、それを奪い生きていかなかればならない人間の抱えた矛盾を、子供たちに知ってほしいと思ったのだろう。熱血型の新米先生の思いつきそうなことだ。
ブタがいた教室 監督:前田哲 脚本:小林弘利 音楽:吉岡聖治 主題歌:トータス松本「花のように星のように」 製作国:日本 2008年 109分 |
子供たちは、豚を育てることには賛成なのだが、食べるとことには大いに戸惑う。
職員会議では、教頭(大杉漣)は食べるのはどういうものかと苦言を呈し、校長(原田美恵子)は子供たちの自主性に任せるという寛大な意見を述べた。さすが校長である。
子供たちによってグラウンドの片隅に豚小屋が建てられ、子豚は「Pちゃん」と名付けられた。
星先生は、「食べる豚にニックネームをつけるのは、ちょっと」と難所を示した。殺して食べなければならない動物に名前をつけると、過剰に感情移入をしてしまうと思ったが、先生は折れた。
われわれの数世代前までは、家で豚や鶏を飼い、祝い事があると潰して食べた。名前をつけると、殺すことが忍びなくなる。
かくして、クラスの子供たちの学校生活は、Pちゃんが中心となる。
やがて、豚の世話をして子どもがケガをした、服に豚の臭いが染み込んで帰ってくる、学校の話題は豚のことばかりだと、母親たちが先生に苦情を言うが、それは当然なことだろう。何しろやりすぎなのだから。
さて、年が変わると、Pちゃんはやって来た頃の何倍にも大きくなり、丸々と太っった。
そのPちゃんを食べるのか食べないのかで、クラスは喧々諤々の論争となる。さらに、畜産センターに送るか、飼育を買って出た下級生に任せるかで、大議論となるのだった。
議論する子供たちは、演技と思えないほど真剣に見える。
こういう突飛なことを子供たちに押し付ける先生は、少し常軌を逸したところがあるようなイメージがするが、星先生はいつも冷静で淡々としていた。
本作は大阪であった実話に基づいているという。
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