『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
posted with amazlet at 12.12.28
A Prairie Home Companion
監督:ロバート・アルトマン 脚本:ギャリソン・キーラー 製作:ロバート・アルトマン 他 製作総指揮:フィッシャー・スティーヴンス 他 音楽:リチャード・ドヴォスキー 製作国:アメリカ合衆国 2006年 105分 ★★★*☆ |
ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場で、1974年の放送開始以来30余年続いた人気の公開ラジオ番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』が、終了することになった。
テキサスの企業がラジオ局を買収したのだ。
なお本作は、実際に放送されているラジオ番組の「打切り」を、脚本を書いたキーラーと監督のアルトマンがでっち上げたものである。
今まさに、最後の公開生放送が始まろうとしているところから、映画は始まる。
口ひげを蓄えた保安主任のノワール(ケヴィン・クライン)、司会者キーラー(ギャリソン・キーラー)、娘を連れて現れたメリル・ストリープ扮するヨランダと姉のロンダ(リリー・トムリン)のジョンソン姉妹、ダスティ(ウディ・ハレルソン)とレフティ(ジョン・C・ライリー)らが、楽屋に姿を現す。
彼らはいつものように、挨拶を交わし、ジョークを飛ばし、雑談にふける。
最初の出演者であるダスティとレフティがなかなかスタンバイしない。臨月のおなかを抱えたステージマネジャー助手のモリー(マーヤ・ルドルフ)が、業を煮やし産気づいたような呻き声をあげて驚かせる。始まれば終わると思っているのかもしれない。
ふたりは重い腰を上げ、いよいよショーが始まった。
カウボーイソングが懐かしい。なにより舞台に上がる出演者それぞれが、歌手に負けなくらいに歌がうまい。
司会者キーラーが、歌の合間に読み上げるコマーシャルが、素朴で実にいい。
白いレインコートの謎の女(ヴァージニア・マドセン)が現れたり、歌い終わった歌手が倒れたりするが、ストーリーはドキュメンタリー風に淡々と進み、番組が終わってしまう寂しさを漂わせる。
番組の最後を見届けようと、テキサスからやってきた新オーナーのアックスマン(トミー・リー・ジョーンズ)が劇場に到着する。
残り時間が少なくなり、ヨランダの娘ローラも母親譲りののどを披露して、ステージの上にはその夜のゲスト全員が集まって、最後の大合唱が始まる。
こうしてフィッツジェラルド劇場は役目を終えた。
ある日の夜、取り壊されたフィッツジェラルド劇場の隣のダイナーに懐かしい顔ぶれが集まっている。彼らの新しい人生模索していた。
「みんなで別の形でやろう、各地を回ってさ」と、ヨランダが言って盛り上がるにだが、彼らはもう歳だ。
姉もヨランダも年金をもらう歳なのだ。ひとつの祭りが終わり、祭りの後の静けさに浸る、そんなペーソスが漂っている。
脚本を書いたギャリソン・キーラーは、『プレイリー・ホーム・コンパニオン』でも実際に司会を務めていたとのことだ。本作でも司会者として出演している。
番組のフィナーレでは、メルリ・ストリープとダンスを踊り、キスを交わした。役得というやつだ。
なお本物のラジオ番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』は、今も続いて放送されている。
また、2006年11月、ロバート・アルトマン監督は81歳で亡くなり、本作が遺作となった。
【メルリ・ストリープ主演作品】
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』The Iron Lady/2011年
『ジュリー&ジュリア』Julie & Julia/2009年
『ダウト ~あるカトリック学校で~』Doubt/2008年
『アフター・ザ・レイン』Dark Matter/2007年
『今宵、フィッツジェラルド劇場で』A Prairie Home Companion/2006年
『めぐりあう時間たち』The Hours/2002年
【2012.04.25】『ロング・グッドバイ』 (1973年)ロバート・アルトマン(サイト内リンク)
« テルマエ・ロマエ | トップページ | 『バッド・ティーチャー』 »
「コメディ」カテゴリの記事
- リトル・チルドレン(2021.01.02)
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- フィッターXの異常な愛情 蛭田亜紗子(2015.06.15)
- 『ジャッジ!』(2015.02.28)
- 8月の家族たち(2014.10.16)
コメント