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2013年1月

2013年1月30日 (水)

趣味は読書。 斎藤美奈子

著者は気鋭の文芸評論家。
2002年に『文章読本さん江』で、第1回小林秀雄賞受賞しました。
1999年7月から2002年10月まで、『月間百科』に掲載したベストセラーに関する書評に加筆訂正したもの。
41冊を解説しています。
Image_20201212153601趣味は読書。
斎藤美奈子
筑摩書房
2003年(ハードカバー)

日本では、どれくらいの人が本を買っているのでしょう。
「日本自由時間デザイン協会」の『レジャー白書2002』に基づき、著者なりの分析しています。
日本が100人の村だとしたら、40人はまったく本を読まない。
20人は読んでも月1冊以下、毎月1冊以上の本を買う人・定期的に書店に行く人などはもっと少数に違いなく、趣味として一定のお金と時間を割く人は100人のうち4~5人、日本全体では、500万~600万人がいいところと、著者は推定しています。
ということで、本書を買った人はよほど酔狂な人ということになるんだそうです。

著者は、ベストセラー本を批判的な目でみています。
各章のタイトルは、それぞれのベストセラーの核心をついています。

1 読書の王道は現代の古老が語る「ありがたい人生訓」である →『大河の一滴』
2 究極の癒し本は「寂しいお父さん」に効く物語だった →『朗読者
3 タレントの告白本は「意外に売れない」という事実 →『プラトニックセックス』
4 見慣れた素材、古い素材もラベルを換えればまだイケる →『買ってはいけない』
5 大人の本は「中学生むけ」につくるとちょうどいい →『海辺のカフカ』
6 ものすごく売れる本はゆるい、明るい、衛生無害 →『五体不満足』

ここで紹介されている41冊のなかで、購入済みは(必ずしも、読んだわけではありません)、『大河の一滴』『日本語練習帳』『働くことがイヤな人のための本』『鉄道員』『朗読者』『白い犬とワルツを』『プラトニックセックス』『買ってはいけない』『国民の歴史』『捨てる技術』『iモード事件』『海辺のカフカ』『五体不満足』『声に出してみたい日本語』の14冊。
わが購書ライフがベストセラーに振り回されていることが判明しました(2003/3/18)→人気ブログランキング

名作うしろ読み/斎藤美奈子/中公文庫/2016年
趣味は読書。 /斎藤美奈子/筑摩書房/2003年

2013年1月28日 (月)

リトル・ミス・サンシャイン

ロードムービーだから、目的地に着くまでに困難なことがいくつか起こり、それを解決または回避して、なんとか目的地にたどり着き、そこでまた一騒動あって、それも丸く収まって、パチパチパチというパターンだ。
出発点はニューメキシコ州のアルバカーキ、ルート66をカリフォルニアに向かう。目的地はレドンドビーチ、800マイルの旅。
Photo_20201218081101リトル・ミス・サンシャイン
Little Miss Sunshine
監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
脚本:マイケル・アーント
音楽:マイケル・ダナ
製作国:アメリカ合衆国   2006年  100分 

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本作には、親のエゴ丸出しの過熱気味の少女ミスコンのあり方に警鐘を鳴らすニュアンスが感じられる。

シェリル(トニ・コレット)は、ニューメキシコのアルバカーキに住む主婦。
夫リチャード(<グレッグ・キニア)は、自己開発セミナーで独自の成功至上論を声高に振りかざすが、自身は甲斐性なしで収入がおぼつかない。空軍パイロットになるために無言の行を続ける息子のドウェーン(ポール・ダノ)は、ニーチェかぶれで反抗期まっただ中。眼鏡をかけて小太りのオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、ビューティー・クィーンになること。ヘロイン中毒で老人ホームを追い出された祖父(アラン・アーキン)は、性力絶倫を自ら吹聴する不良老人。ところが、「負け犬がどういうものか知ってるのか?本当の負け犬は勝てないことを恐れ、努力もしないようなやつのことを言うんだ」などと、オリーヴがくじけそうになると、気の利いたことを言うのだ。
祖父はオリーブの振り付けを担当し、ふたりは日々ビューティーコンテストのための特訓に励んでいる。
そんな家族に、シェリルの兄でありプルーストの研究家で ゲイのフランク(スティーヴ・カレル)が、恋人に振られて自殺未遂を起こし、しばらく一家とくらすことになる。

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そんなある日、カリフォルニアで行われる「リトル・ミス・サンシャイン」の出場資格を得たという知らせが留守電に入り、オリーヴは狂気乱舞する。

シェリルは、オリーヴの夢をかなえてあげようとカリフォルニアに向かうことにする。しかし、一家に飛行機代を捻出する経済的な余裕はなく、また、自殺傾向のあるフランクを反抗期のドウェーンとともに残しておくこともできず、嫌がる二人も連れて一家全員がおんぼろのミニバス・フォルクスワーゲン・タイプ2に乗り込んで、一路カリフォルニアを目指す。

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オンボロ車での旅は、一難去ってまた一難の連続。
どういうわけか、オリーヴは色盲検査の本を持っていて、ドウェーンが色盲であることが判明する。パイロットになれないことに絶望したドウェーンを、オリーヴは慰めるのだった。
という強引なストーリーも差し込まれているが、なんとか目的地のミスコン会場にたどり着き、オリーブの出番が回ってくる。
オリーブの用意した曲・リック・ジェームズの『Super Freak』が会場に流れると、会場はざわめく。なにしろ、品性に欠ける歌詞なのだ。おまけに祖父がオリーブに伝授した踊りは、ストリッパー仕様の垢抜けないもの。

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審査員、観客の大顰蹙を買うなか、オリーブは弱気になるが、この映画のテーマはバラバラの家族がまとまるということ、オリーブを励まそうと一家はステージに上がり、オリーブとともに踊るのだった。

監督は、夫婦であるジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリス。
2006年アカデミー賞では、脚本賞、助演女優賞にオリーブ役のアビゲイル・ブレスリン、さらにアラン・アーキンが助演男優賞にノミネートされ、脚本賞と助演男優賞を受賞した。→人気ブログランキング

2013年1月25日 (金)

湿地 アーナルデュル・インドリダソン

主人公のエーレンデュル刑事は50歳、家庭に問題を抱えている。妻とは20年前に離婚しその後一度も顔を合わせていない。娘は薬物中毒、息子はアルコール中毒という悲惨な状況にある。自らは胸に痛みを感じているもののタバコをやめられないでいる。
Image_20210101083801湿地
アーナルデュル・インドリダソン(柳沢由実子 訳)
東京創元社
2012年

晩秋のアイスランドのレイキャヴィックにある建物の半地下室で、ひとり暮らしの老人が、ガラスの灰皿で頭部を殴られ殺害された。金品が奪われた形跡はない。エーレンデュルの同僚シグルデュル=オーリ刑事は、「典型的アイスランドの殺人ですね」と言う。汚くて無意味、証拠を隠したりの小細工のない殺人という意味である。

その後の捜査の過程でエーレンデュルは、被害者ホルベルクの家の引き出しに古いモノクロ写真を発見する。それはわずか4歳で亡くなった幼女の墓の写真であった。この写真から、ホルベルクの過去が少しずつ明らかになっていく。ホルベルクが約40年前に起こしたレイプ事件が、すべての始まりであった。

ホルベルクの殺害事件の謎を解くことをメインストーリーにして、エーレンデュルと娘の関係、さらに個人的に依頼された花嫁失踪事件の捜査のふたつをサイドストーリーにして、物語は展開していく。

訳者の柳沢由実子のあとがきによれば、アイスランドは人口がわずか32万人で、単一民族であり、外部からの影響が少なく、中世まで遡って家族の系譜を辿ることができるという。誰もがどこかで血の繋がりがあるという特異な環境にある。それゆえ、苗字は使われることがなくファーストネームで呼び合うという。この特異性こそが本作の大前提となっている。

アイスランドは遺伝子の研究が盛んで、レイキャヴィックには世界的な大企業であるdeCODE geneticsがある。同社は、本作のキーワードのひとつであるヒトゲノム(遺伝子)を扱っている。本作品では、アイスランド遺伝子研究所には国民の遺伝子がすべて登録されている設定になっている。シグルデュル=オーリの言葉「典型的アイスランドの殺人ですね」は、逆の意味で的を得ていると言える。

もうひとつのキーワードは、タイトルの湿地である。ホルベルクが住んでいたアパートは、北の湿地 (ノルデュルミリ)に建てられていた。湿地に建てられた建物は、年数を経ると土台に問題がでてくる。その土台が事件につながっていたのだ。
舞台に設定された2001年の秋は雨の日が多く、常に雨雲が垂れ込めいて暗い陰鬱な情景が浮かびあがり、物語に特徴づけている。

北欧のミステリの本書は、ヘニング・マンケルの『ヴァランダー・シリーズ』と、比べられることになる。訳者はどちらも柳沢由実子である。
登場人物の背景を深く掘り下げることによって生まれるリアリティは、『ヴァランダー・シリーズ』に軍配が上がるが、背景はほどほどにして物語をどんどん展開させる本作には、抜群の面白さがある。→人気ブログランキング

2013年1月23日 (水)

半落ち 横山秀夫

49歳の梶聡一郎警部は、アルツハイマー病の妻を絞殺した。妻に請われての犯行であった。夫妻は、8年前に、14歳の一人息子を急性骨髄性白血病で亡くしている。
梶は自首し、犯行を全面的に認めるが、犯行後2日間の行動については黙秘を続ける。空白の2日間、死に場所を求めてさまよっていたと調書に記載されるが、梶は否定しない。しかし、事実は違う。
空白の2日間に何があったのか。
半落ちとは警察用語で一部自供したという意味。
Image_20201216173901半落ち
横山秀夫
講談社文庫
2012年

本作は、2002年度下半期の直木賞候補に上がり、選考会において、ありえない設定であると北原謙三が指摘した。それを受けて林真理子が、その後過剰と思われるような批判を展開した。
あり得ない設定とは、「受刑者が骨髄移植のドナーになることは法的に不可能」というものであった。
出版社の講談社側は、事前に調査していて十分に可能であると反論した。
一方、骨髄バンクサイドは小説の設定に沿った検討を行い、「適合者が一人しかいない場合、法務省に協力を要請する」との見解にいたった。さらに法務省は、「事情を総合的に勘案して検討する」とふくみをもたせた判断を下した。
結果として、あり得ない設定と断定した林真理子の判断が、早計であったことになる。
この選考会をめぐる一連の騒動で、林真理子の選者としての資質を問う声が挙がった。
さらに、横山秀夫は「もう自分の作品を直木賞選考委員会に託すつもりはない」と、直木賞との決別を宣言をした。

本作品は読み応えのある優れた内容である。こうした話題性も手伝って、大ベストセラーになり、テレビドラマ化され映画化もされた。
直木賞史上、いわくつきの作品である(2004/12/29)。→人気ブログランキング

『直木賞のすべて』第128回直木賞(平成14年度、2002年下半期)における各選者のコメント。

2013年1月22日 (火)

雷桜

原作は宇江佐真理の『雷桜』、第123回直木賞(2000年度上期)候補作である。
また、『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』に本作を併せて、2010年公開の時代劇映画5作品共同の「サムライ・シネマキャンペーン」が行われた。

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監督:廣木隆一
原作:宇江佐真理『雷桜』
脚本:田中幸子/加藤正人
音楽:大橋好規/主題歌:舞花「心」
製作国:日本  2010年  133分

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天狗が出ると噂される森には、遊(蒼井優)と育ての親である田中理右衛門(時任三郎)が住んでいた。遊は毛皮で身を包み顔を毛皮の面で隠し、馬を乗り回し、弓矢を放って森に入る村人たちを威嚇した。そして、村人は瀬田山には天狗が住むと噂するようになった。
上手に乗りこなす蒼井優の乗馬姿がいい。

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一方、徳川十一代将軍・家斉の十七男に生まれた斉道(岡田将生)は、母親の愛情を知らずに育った、というより母親から虐待を受けた。
そんな斉道は病弱であり、ときどき発作を起こす。そして、孤独のあまり精神を病み、怒りやすく、すぐに剣を抜く「うつけ者の殿」と噂されていた。
斉道は療養を兼ねて、家臣とともに瀬田村に向かうことになった。
家臣の瀬田助次郎(小出恵介)は自らの故郷の瀬田山に天狗が住むという噂を斉道に伝えた。

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斉道は瀬田村への道すがら、天狗の棲むという森へ馬を走らせ、そこで遊に出会う。村に帰った斉道が森で出会った女天狗の話をすると、助次郎は15年前にさらわれた妹に違いないというのだった。
そんなある日、森の桜の巨木の下で斉道と遊は再開する。
世間を知らずに奔放に育った遊は、身分の違いを意識せず斉道に対等に向かいあう。そんな雷は、斉道にとって殿様の立場を抜きに話せる唯一の存在であった。そしてふたりは互いに惹かれてゆく。

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一度は山を降りて生家に戻った遊であったが、なにかと制約の多い暮らしに耐えられず、山に戻るのだった。

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遊が山で育てられたのは、20年前の不幸な事件による。
かつて、隣り合う藩同士の水の利権をめぐる話し合いが決裂し、理右衛門は、瀬田村の地主の娘を拉致し殺害する命令を受けたのだった。そして嵐の夜に遊を誘拐し、まさに首に手をかけて殺そうとしたとき、桜の巨木に雷が落ちた。それでも泣かずに笑い声をあげる遊を見て、殺すことを思いとどまり、雷と名付け育てることにした。
命令に背いた理右衛門は、藩の間者から逃れ、山に隠れて雷を育ててきたのだった。
しかし、雷が生家に戻っている間に、理右衛門は間者(池端慎之介)たちに居場所を突き止められ、姿を消してしまう。
奔放に育った雷(遊)は、初めは粗野ではあったが、恋を知って女性として成長した姿を、凛とした蒼井優ちゃんが見事に演じている。

精神を病んでいた斉道は、愛を知り、人の心の痛みを知ることで、人間的に成長を遂げる。幕府の命令で紀伊の国の殿様に命じられた斉道は、雷との愛を断ち切れない。そんな斉道を、家臣の榎戸角之進(柄本明)は腹を切って諌めるのだった。いくら世間知らずでうつけ者と噂される斉道であっても、この角之進の壮絶な死を目の当たりにして、我に返る。

やがて、斉道は紀伊の国に発つ。
それを馬で追いかけるようとする雷、しかし斉道は駕籠を開けずに進むのだった。
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2013年1月21日 (月)

アルゴ

1979年、イラク革命が起こり、アメリカがリンパ腫に侵されたバーレビ国王を受け入れたことに反発した過激派が、テヘランの米国大使館を襲撃した。その時、大q使館を密かに脱出してカナダ大使の公邸に匿われた6人がいた。アメリカ大使館人質事件のかげに隠れて、CIAによるこの6人の救出劇が行われた。本作は実話に基づいた脱出作戦の全貌を描いたもの。
脱出作戦は、当時のカーター政権下では極秘事項として扱われ、カナダ政府が行ったことになっていた。事実の詳細はクリントン政権になって公表された。
助かるとわかっていても、緊迫した場面が続きハラハラドキドキさせる上質のエンターテーメントになっている。
ベン・アフレック監督による『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07年)『ザ・タウン』(10年)に続く、3作目。
今年(2012年度)のアカデミー賞作品賞、脚本賞、監督賞の最有力候補と言われている。
Image_20201216113001 アルゴ
Argo
監督:ベン・アフレック
脚本:クリス・テリオ
原作:アントニオ・J・メンデス
製作:ジョージ・クルーニー/グラント・ヘスロヴ/ベン・アフレック
音楽:アレクサンドル・デスプラ
製作国:アメリカ合衆国   2012年  120分 

作戦を任されたのは、CIAの脱出の専門家であるトニー・メンデス(ベン・アフレック)。監督兼主役のベン・アフレックが演じるトニーのものに動じない冷静な演技に説得力がある。
作戦は、6人を架空のSF映画『アルゴ』のカナダ人ロケハンに仕立て上げ、テヘラン発の飛行機で脱出しようという、突拍子もないもの。「脱出とは堕胎手術のように嫌なもの、しかし、やらなければならない」とトニーは強引に押し通した。

Argo1

ハリウッドに事務所が開かれ、配役が決まり、キャストを集めての台本読みが行われ、記者会見が開かれ、大々的に宣伝した。マスコミが取り上げ、仕掛けは順調に進んだ。架空のプロデューサーであるジョン・グッドマンとアラン・アーキンのコンビがいい味を出している。

Argo2

かくして、6人のパスポートを持ってトニーはテヘランのカナダ大使公邸に向かう。
作戦を説明するトニーに、6人は時間も選択肢もないことを承知していても、馬鹿げた話だと乗ってこない。

Argo4

一方、革命軍側は、シュレッダーにかられた資料を、大勢の子供を使って修復させている。いずれ、6人の顔写真が修復されるだろう。
いずれにしても、作戦を決行するしかない状況に追い込まれている。数日後にはカナダ大使館も閉鎖される。そうなれば、6人は捕まり公開処刑されるだろう。
こうして最悪のシナリオで最高の演技が求められる救出作戦が始まる。

Argo5

ストーリーは、イラン革命が起こり大使館が占拠され救出作戦が検討されるまでが第一段階、カリフォルニアででっち上げのSF映画『アルゴ』が企画され、マスコミに取り上げられるまでが第二段階、そしてテヘランでの救出劇が第三段階と、三つのパーツに分かれる。

映画の最後に、カーター元大統領のこの救出作戦に対する賛辞が流れる。カーターの肉声が流れることで、この映画の価値を一段と高めた。作品のなかでは、作戦に関わった唯一の当事者なのだ。→人気ブログランキング

本作は、あまりにもアメリカ寄りの見方との非難があり、同事件のイラン側の見地に立った映画が作られるという。

→『アルゴ』 アントニオメンデス×マット・バグリオ著/ハヤカワ・ノンフィクション文庫

【ベンアフレック関連作品】
アルゴ』Argo/2012年/第85回アカデミー賞作品賞受賞
ザ・タウン』The Town/2010年
ゴーン・ベービー・ゴーン』Gone Baby Gone/2007年
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』Good Will Hunting/1997年
(アカデミー賞オリジナル脚本賞をマット・デーモンとともに受賞)

2013年1月20日 (日)

ザ・タウン

映画の舞台となったチャールズタウン(Charlestown)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市北東部にある。現在はアイルランド系の住民が多く住む犯罪多発地区である。
監督のインタヴューによれば、現地でのロケーションを数多く行い、この地に住む犯罪歴の持ち主をエキストラに起用してリアルに描くことを心掛けたとのこと。
最新作『アルゴ』で花開くベン・アフレックの監督としての才能が垣間見える、エンターテイメント性豊かな傑作である。
クリント・イーストウッドの後継者との呼び声も高い。
Photo_20210319124901ザ・タウン
The Town
監督:ベン・アフレック
脚本:ベン・アフレック/ピーター・クレイグ/アーロン・ストッカード
原作:チャック・ホーガン『強盗こそ、われらが宿命』

製作国:アメリカ合衆国   2010年  124年 

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タグはプロのアイスホッケーの選手として嘱望されたものの、今は銀行強盗のチームリダーとして、完璧な仕事をしている。しかし、ある銀行襲撃で女支店長のクレア(レベッカ・ホール)を人質にとったことで、完璧と思われた仕事にほころびが出てくる。
2度の逮捕歴がある親友ジェム(ジェレミー・レナー)は、今度逮捕されればスリー・ストライク法で、否応なく終身刑となる。ジェムは口封じのためにクレアを殺すことも辞さないと言い出す。タグはクレアを自分に任せるようにと、ジェムを制して、彼女に近づいていく。

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タグはクレアと親密になることで心が揺らぎ始め、強盗稼業から足を洗い、生き方を変えたいと思うようになる。しかし、タウンの元締めのファーギー(ピート・ポスルスウェイト)や相棒ジェムたちがが、そのようなことを許すはずがない。

3

FBIは、クレアの証言から銀行襲撃の実行犯をタグたちに絞っていく。
そんなおり、ファーギーの命令で、準備不足のまま次の強盗を決行することとなった。
案の定、FBIに事前に察知され、銃撃戦となりジェムは射殺されてしまう。
しかし、タグは銃撃戦をかいくぐり、ファギーを殺し街を出るのだった。
本作は、ピート・ポスルスウェイトの遺作となった。

ちなみに、スリー・ストライク法(三振法)とは、1990年代にアメリカ合州国において成立した州法の総称である。
アメリカでは、刑務所の定員が超過の状態にあるため、凶悪犯罪者が短い刑期で仮出獄して再犯を繰り返すことが多い。
さらに、アメリカは犯罪多発国であるにも関わらず検挙率が低く、凶悪犯罪者の多くは常習犯で、捕まる以前にも他に重罪を犯していることが多い。
本法律により、累犯者を微罪でも終身刑にすることで重罪を未然に防ぐことができるとされた。
本法に対しては賛否両論があり、現在はそれぞれの州で内容に修正が加えられている。→人気ブログランキング

2013年1月18日 (金)

パッセンジャーズ

「なるほど」派と「なんだこれ」派に評価が分かれる作品だ。
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Passengers
監督:ロドリゴ・ガルシア
脚本:ロニー・クリステンセン
製作国:アメリカ合衆国  2008年  93分

2

アン・ハサウェイ演じるドクター・クレアは精神科のセラピスト。
飛行機墜落事故で奇跡的に助かった5名の集団カウセリングを行おうとするが、エリック(パトリック・ウィルソン)だけは個人的に自宅でなければ話をしないと言う。

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その要望に応えてクレアはエリックの自宅を訪れると、彼はクレアになれなれしく迫ってくる。
彼はときどき突拍子もない行動をとり、クレアのコーヒーの好みを知っていて姉がいることも知っていた。彼は強度の精神的重圧を受けたことにより、超能力者になったのだろうか。

クレアのカウンセラーに集まる生存者が、ひとりまたひとりと来なくなって、さらに、彼女は何者かよって監視され、生存者の行動も探られているようだ。
バンクーバーの空は曇がちで、町は死んだように人影がまばら、何かを暗示していそうである。
事故の原因は機長のミスとする航空会社の発表に、クレアは会社が事故原因を隠蔽しようとする陰謀があるのではないかと疑い出す。

この後のストーリーは、まさかの大どんでん返しが待っているとだけにしておくのが無難そうだ。

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アン・ハサウェイのたれ気味の大きな目が魅力的だ。→人気ブログランキング
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2013年1月17日 (木)

苦役列車

19歳の北町寛多(森山未來)は、中学を卒業以来、日雇いの仕事で食いつないできた。稼いだ金はアルコールとのぞき部屋やソープランド代で消えてしまい、家賃を滞納してアパートを追い出されることがしばしばあった。頭の中はセックスのことでいっぱい、唯一の趣味は読書。
父親が性犯罪で逮捕され、両親は離婚して、転校を繰り返し悲惨な少年期を過ごした。そんな寛多は、中卒であることにコンプレックスを感じ、将来への希望は持てず、世間に対して憎悪の念を抱いている。
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監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
原作:西村賢太
音楽:SHINCO/主題歌:ドレスコーズ「Trash」
製作国:日本  2012年   114分 

コップ酒を飲み、口いっぱいに食べ物を詰め込み、そのまま話をする。タバコを片時も離すことがなく、背を丸めやや左に傾いて歩く。話す言葉は、ぶっきら棒で他人への配慮はない。社会の下層でその日暮らしする若者の姿を、森山未來が実によく演じている。

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ある日、港湾の仕事現場に専門学校生の日下部正二(高良健吾)が現れる。同い年の寛多と正二は打ち解けて付き合い始める。
寛多は古本屋でバイトをする大学生の桜井康子(前田敦子)が気になにっているが、自分で声をかける勇気がない。正二に仲介してもらい、友達として付き合ってもいいという康子の返事に有頂天になる。ところが、寛多は女性との付き合い方がわからない。握手した手を舐めるようなことするので、康子は気味悪がる。

ある日、3人は意気投合して冬の海に出かける。突如、寛多は服を脱ぎ捨て下着姿で海の中に入って行き、正二と康子も海に入り、3人は水をかけあってはしゃぐのだった。
この冬の海での馬鹿騒ぎのシーンは、暗いストーリーが続くなかで、観る者をほっとさせる息抜きの効果がある。
正二の恋人を交えて飲んだときに、寛多は悪酔いして暴言を吐いてしまい、そのことがあってから、寛太と正二は疎遠なっていく。

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ある日、彼は康子を待ち伏せして、いきなりセックスを迫るのだった。いつかはこんなことになつだろうと思っていたら、案の定だ。

食堂で、歌手になると言っていた仕事仲間がテレビで歌っているのを観て、寛多は釘づけになる。男は、夢を持っていれば今の生活から抜け出せると思ったら大間違い、この生活からは永遠に抜け出せないと、かつて寛多に言ったことがある。
寛多は何かを感じたのか、アパートに帰って机に向かい、憑かれたように書き始める。

原作は、2010年第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名の中篇小説。
暴力的で悲惨で陰鬱な原作を映画化するとどうなるか、興味があった。映画では、原作にはない康子との恋愛が取り入れられたり、海のシーンがあったりして、ストーリーに膨らみが出ている。
ところが、著者自身は「どうしようもなくつまらない映画」「原作者として名前をつらねるのも不快」「ストーリーの改変も、原作を超えてくれるものであれば、それはまた別物として大歓迎なのだが、客観的に見ても到底その域には達していない」(『私小説書きの日乗 』)と、メッタ斬りの悪口をぶちまけている。
著者にすれば、安っぽい青春ドラマ風にされたんじゃたまらないということだろう。原作はもっとおどろおどろしい。→人気ブログランキング

無頼化する女たち 水無田気流 

本書は、主にバブル期以降のニッポン女性の生き方の変化について、社会情勢と対比しながら分析した女性論である。
著者のいう「無頼化」とは、旧来の伝統的な規範からの逸脱、<「孤高の」「自立した」「文化的規範の逸脱を厭わない」P58>という女性の生き方を指す。つまり、羽目をはずしたとか、とんがったとか、目立ったというようなことである。
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水無田 気流
洋泉社新書y
2009年

著者は、バブル期、バブル崩壊から90年代、ゼロ年代は前半と後半に分けて、無頼化の変遷を提示している。

バブル期は、<これまで、日本の女性らしさは「引き算」で表現されることが多かった。控えめ、物静か、おしとやか・・・・・・。これが一気に「足し算」に反転したのがバブル期文化である。p28>ととらえている。著者は、バブル期において戦後ニッポン女子の「第一次無頼化」が起こったとしている。

バブル崩壊から90年代にかけては、「無頼化」が「病理」として現れたとし、「東電OL殺人事件」を例に挙げている。この事件は、東京電力の管理職にあった39歳の女性が、クラブのホステスとなり、やがて売春に走り、2009年3月にアパートの一室で殺害されたというショッキングな事件である。この時期を著者は「第二次無頼化」と名づけた。

ゼロ年代前半を「無頼化」は、「パロディ」や「自虐」であったとし、中村ウサギを登場させている。
ゼロ年代後半は「無頼化」を「サバイバル」に見られるとし、例として「婚活」や勝間和代を挙げている。ゼロ年代を「第三次無頼化」とした。

著者の訴えたいことは次の言葉に集約されている。
<いまだ、男性は女性の言葉づかいはもとより、あらゆる逸脱行為にうるさい。いや、女性たち自身も、女を許さず監視する傾向がある。美学(モラル)の問題は、日常慣れ親しんだ感性と直結しており、疑われないからこそやっかいなのだ。・・・・・女子というものは、これまでも、これからもつねに逸脱や無頼化の宿命を帯びている存在だ、とも言える。P216>

有史以来女性は、無意識のうちに仕掛けられた男社会の罠をかわしたり、あるいは蹴散らしてきた。蹴散らすことによって、つまり無頼化することによって、女性に課せられた規範のたがをすこしずつ緩めさせてきたと言える。本書は、一面から見た女性論として教科書的である。→人気ブログランキング

→『無頼化する女たち』 水無田気流
→『関係する女 所有する男』 斎藤 環
→『母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか』 斎藤 環

2013年1月15日 (火)

エリン・ブロコビッチ

抜群のプロポーションで色気を振りまくジュリア・ロバーツが、ふとしたことから公害問題に関わっていく。周りの人を惹きつける持ち前の魅力と抜群の行動力で情報を集め、気乗りしない被害者を説得し集団訴訟に持っていく。痛快なストーリー。
本作は実話に基づく。法律の教育を受けていない女性、エリン・ブロコビッチが、1993年に大手製薬会社PG&Eを訴え勝訴し、当時米国史上最高額の賠償金が支払われた。本人自らが出演している。写真を見る限り、エリン自身はュリア・ロバーツに負けず劣らず派手でゴージャスで陽気だ。
Image_20201118093101 エリン・ブロコビッチ Erin Brockovich
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スザンナ・グラント
音楽:トーマス・ニューマン
製作国:アメリカ合衆国   2000年  130分

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信号無視の車にぶつけられケガを負ったエリンは、自らの暴言で賠償金を取り損ねてしまう。2回の離婚歴、3人の子供がいるシングルマザーの彼女は困窮していて、弁護を依頼したエド(アルバート・フィニー)の法律事務所で、勝手に働き始める。
賠償金を手にできなかった弱みがあるエドは、仕方なく正式な法律教育を受けていない、なんのキャリアもないエリンを雇うことにした。
元ミスコンで優勝した美貌とプロポーションを持ち、大胆な服装で会社に現れる彼女は、同僚たちの顰蹙を買うものの、忠告などどこ吹く風、一向に改める気がない。

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そんなおり、ラッキーなことに、隣に引っ越してきた入れ墨男(アーロン・エッカート)が、3人の子供の面倒を見てくれることになった。

ある日、彼女は書類の中に腑に落ちないファイルを見つける。不動産売却の書類に血液検査の結果が添付されていたのだ。
持ち前の美貌とスタイルを武器に、彼女は単独で調査を開始する。そして、大企業の工場が有害物質を垂れ流しにしている事実を突き止 める。

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病に苦しんでいる多くの住民を目の当たりにしたエリンは、住民たちが集団訴訟を起こすように説得に回るのだった。
地道な仕事により住民たちの信頼を得て、600人以上もの原告を集めることができた。

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そして、大企業と交渉の場を持ち、弁護士顔負けの弁舌で一歩も引かないエリンは、ついに多額の和解金を勝ち取った。
事務所で個室を与えられた彼女は、さらにエドから驚きの額のボーナスを受け取るのだった。

ジュリア・ロバーツは、本作で第73回アカデミー賞主演女優賞を獲得した。→人気ブログランキング

2013年1月14日 (月)

モテキ

藤本幸世31歳は、ニュースサイト「ナタリー」の新入社員。自意識過剰なくせに、人の目を見て話せない。第2童貞期からどうやったら脱出できるかが、幸世にとっての最大のテーマ。
会社では、ポカミスを犯しボロクソ言われる毎日。とくに先輩の唐木素子(真木よう子)からは、怒鳴られっぱなしである。
そんな草食系ダメ男を、森山未來が演じる。

Image_20210103101101モテキ
監督:大根仁
脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ
製作国:日本  2011年  118分 

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ある日、ツイッターで知り合った雑誌編集の仕事をする人物と会うことになり、待ち合わせの場所に現れたのは、美人でスタイル抜群の松尾みゆき(長澤まさみ)。みゆきのアバターがヒゲの男だったから、男と思い込んでいた。

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みゆきはいきなり飲みに行こうと切り出し、前からの友達のようにフランクに接する。我が人生に「モテキ」が訪れたと、幸世は有頂天になる。
ここで、ダンサーでもある森山未來がウェストサイドストーリー張りのキレのある見事な踊りを披露する。

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みゆきには同棲している相手がいて、幸世の思い通りにことは進まなかった。
そんなおり、みゆきの友人である枡元ルミ子(麻生久美子)に告白をされて一夜をともにする。しかし、みゆきへの思いを断つことができない幸世は、「重すぎる」ルミ子を振ってしまう。

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その後、取材でみゆきの同棲相手のミュージシャンに会い、結婚をしていることを知る。
音楽フェスティバルの当日、ミュージシャンは離婚したことをみゆきに伝えるが、みゆきはなぜか動揺する。取材に来ていた幸世はみゆきに迫り、みゆきは逃げ出してしまう。

本作は、原作の久保ミツロウ(女性)が映画のために描き下ろしたもの。
サブカルチャー好きにはたまらない作品である。
マンガやテレビドラマ同様、本作も大ヒットとなった。→人気ブログランキング

『チェット・ベイカー・シングス』(CD)チェット・ベイカー

チェット・ベイカー・シングス

チェット・ベイカー・シングス

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チェット・ベイカー
EMIミュージックジャパン (2010-09-22)

「このアルバムは1954年と1956年の録音で構成されています」という『チェット・ベイカー・シングス』に関する文章について、ある人が「これは違うではないのか」と言い出した。「1954年と1956年に、それぞれアルバムを出したのを間違って書いたのではないか。そうとしか考えられない」と乱暴なことを言う。

「ジャズ・アルバムでは、よくあることで間違いではないと思う」と反論したものの、自信がなかった。
帰ってCDのブックレットを読むと、文章は正しかった。

1954年に録音した曲に、1956年に録音した6曲が加えられ、1956年に発売されている。

アルバムのタイトル『チェット・ベイカー・シングス』は、「トランペッターでならしたチェット・ベーカーが歌います」という決意がそのまま。
トランペッターが歌ったって、 個性が光っていればいい。歌ったら、いけるじゃないか、ということになった。技巧は無用。料理でいえば素材そのものの旨さだ。世紀の名盤はこうして生まれた。
そんな、チェットベーカーの歌声は少年のつぶやきのような中性的なもの。
音域は広くない、だから声を張り上げることもない。ハスキーで朴訥、物悲しい響きがする。
音量を落としてひっそりと聴くような曲が揃っている。

1.That Old Feeling(L. Brown, S. Fain)
2. It's Always You(J. V. Heusen, J. Burke)
3.Like Someone In Love(J. V. Heusen, J. Burke)
4.My Ideal(N. Chase, R. Whitning, L. Robin)
5. I've Never Been In Love Before(F. Loesser)
6. My Buddy(W. Donaldson, G. Kahn)
7.But Not For Me(G. Gershwin, I. Gershwin)
8.Time After Time(S. Cahn, J. Styne)
9. I Get Along Without You Very Well(H. Carmichael)
10.My Funny Valentine(R. Rodgers, L. Hart)
11. There Will Never Be Another You(M. Gordon, H. Warren)
12.The Thrill Is Gone(L. Brown, R. Henderson)
13. I Fall In Love Too Easily(S. Cahn, J. Styne)
14.Look For The Silver Lining(B. DeSylva, J. Kern)

 

2013年1月13日 (日)

エターナル 奇跡の出会い

『バイオハザード』シリーズでの派手なアクションを披露しているミラ・ジョヴォヴィッチが、けなげな女性を演じた作品。そのギャップが見所なんだろうね。本作でも、暴れるところはちゃんと用意されている。
ミラの母親ガリーナ・ジョヴォヴィッチが出演しているので、似ている似ていないで盛り上がることもできる。
映画は背景を知ると、面白さが倍増する。
それと、ロシアのコメディー映画はどのようなものか、それも知りたい。
Photo_20201215132101エターナル 奇蹟の出会い
Vykrutasy
監督: レヴァン・ガブリアーゼ

脚本: ローマン・ネポンヤスキー
製作: イヴァ・ストロミロヴ
製作国:ロシア  2011年  97分   

田舎の町からモスクワにやって来た教師のスラヴァ(コンスタンチン・ハベンスキー)は、交通事故に遭ってケガを負ってしまう。ところが、彼は車を運転していた美しいナージャ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)に一目惚れをしてしまい、猛烈な勢いで彼女にアタックをする。
その甲斐があって、彼はナージャの前の婚約者を押しのけて、結婚にこぎつける。式の日取りも決まって、スラヴァは学校を辞めモスクワに発とうとするが、そう思い通りにはいかない。

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スラヴァを手放したくない女校長の陰謀で、彼はサッカーチームの監督に祭りあげられ、おまけにパスポートを取り上げられてしまう。ロシアでは、国内の移動にパスポートが必要らしい。

モスクワで待つナージャの元へすぐにでも行き、結婚式に出たいスラヴァだが、パスポートなしではどうすることもできず、廃船で暮らす孤児たちを集め試合に望んだ。
1回戦で負けるだろうと踏んでいた孤児チームが勝ってしまい、そのあともチームは快進撃を続ける。

正直に事情を話せばどうにかなりそうなものを、遅れる理由をあれこれでっち上げるものだから、話はこんがらがっていく。

集まった孤児12人が、どういうかけか揃いも揃ってサッカーがめっぽう上手い。さらに、そのチームを監督の経験がないスラヴァが率いて勝ち続けるという強引なストーリー。

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サッカーチームが勝ち進めば、すでに始まっている結婚の宴に出ることができないし、かといって負ければせっかく奮闘している子供たちが哀れだ。孤児たちは優勝すればマスコミで取り上げられ、親の目に留まり親が迎えにきてくれるかもしれないという、子供らしい希望を抱いているのだ。
孤児たちは、忍者のようなアクロバティックな身のこなしで、チームは快進撃を続け決勝戦に進む。

一方、優勝候補のモスクワのチームが優勝すればドイツから契約金が監督の手元にがっぽり入るので、スラヴァのチームに負けるわけにはいかないと、監督は汚い裏工作をする。
ドタバタが続くなか、決勝戦は白熱の展開となっていく。

悪人は駆逐され、スラヴァとナージャは結ばれ大団円を迎えるという、大国ロシアのコメディーは大雑把で豪快なストーリー。→人気ブログランキング

2013年1月10日 (木)

『エレジー』

Photo エレジー
Elegy
監督:イザベル・コイシェ
脚本:ニコラス・メイヤー
製作:トム・ローゼンバーグ/ゲイリー・ルチェッシ/アンドレ・ラマル
製作国:アメリカ合衆国 2008年 112分 ★★*☆☆

通常、恋愛ものであれば主人公に感情移入してしまうが、この作品はそうはならなかった。
老大学教授のデヴィット(ベン・キングスレー)が女子大生のコンスエラ(ペネロペ・クルス)をものにしようと企んで、その通りになり、その関係が長続きはしないと思いきや、ずるずる引きずる。
あまりにも性に固執したデヴィットに、感情移入できないからだ。

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デヴィットは雑誌に演劇批評を書き、テレビで自らの著書を解説し文化人のインタビューをこなす有名人である。
友人(デニス・ホッパー)に、コンスエラとの関係を逐一報告しアドバイスをもらうのだ。
しかし、家庭はとうの昔に壊れ、医師の息子(ピーター・サースガード)ともうまくいっていない。
カナダに住む20年来の女友達(パトリシア・クラークソン)が訪れ、性的関係が続いている。

3

デヴィットは自宅のパーティに現れたコンスエラに、見せたいものがあると画集を手にし、ゴヤの『着衣のマハ』に似ていると言って、きっかけを作る。『着衣のマハ』の次のページは当然『裸のマハ』だろうが、それは見せなかった。オペラや演劇にいっしょにいかなかと、デヴィットは誘う。
この手口がまんまと成功するのだ。

はじめは性的な興味だけと友人に話していたが、デヴィッドは彼女にのめり込んでいく。
自らの歳を考えると、いつか別れなければならないことを悟り、デヴィッドは彼女との関係に一線を引こうとする、という純愛ものだった。

はじめっからそういう気配をにじませればいいものを、途中から、それならそういう目で観ようじゃないかと姿勢をただした。
老教授と女子大生の「結果的には」純愛もので、「結果的には」というのは、はじめ老教授の魂胆が若い娘を物にするという邪念に満ちたもので、到底ついていけないなと思わせておいて、途中から風向きが変わるのだ。
結末は、吉永小百合と浜田光男の『愛と死を見つめて』を思い起こさせる展開だった。
BGMは頗るいい。

【ピーター・サーズガード出演作品】
17歳の肖像(2009年)
エレジー(2008年)
フライトプラン(2005年)
ニュースの天才(2003年)

2013年1月 9日 (水)

洋菓子店コアンドル

蒼井優演じる田舎娘の主人公が、無邪気さと強引さで、行き詰まった状況に風穴を開けるというストーリー。
祖母役に佐々木すみ江、謎の老婦人役に加賀まりこ、上司のオーナーシェフに戸田恵子、幻のパテシエに江口洋介、ライバルに江口のりこ、という存在感のある役者を配し、主人公の周りを固めている。

Photo_20210315135901洋菓子店コアンドル
監督:深川栄洋
脚本:いながききよたか/前田こうこ/深川栄洋
製作国:日本  2011年  115分 

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なつめ(蒼井優)は、人気洋菓子店コアンドールに勤めた幼馴染の恋人に会うため、鹿児島から上京してきたが、恋人はとっくに辞めていた。
行き場所のないなつめは、コアンドールの住み込みのアルバイトとして雇ってくれるように、シェフの依子に懇願する。なつめは、実家がケーキ屋だからケーキ作りは得意だとアピールする。ところが、なつめの作るケーキは、クリスマスに買ってきて家族で食べるような時代遅れのケーキである。

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依子は、鹿児島弁訛りで垢抜けないが、純真でどこか憎めないなつめを雇うことにする。
こうして、なつめのパテシエ修行の日々が始まる。先輩でライバルのまりこ(江口のりこ)とぶつかりながら、なつめは試行錯誤を繰り返し、技術を身につけていく。そんな、なつめのひたむきな生き方に周りの人たちは好感を持つようになっていく。

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依子が、ある名家のディナーのデザートを引き受けたものの、階段から落ちて右腕を骨折をしてしまう。
このままではキャンセルしなければならない。どうにかしようと思い立ったなつめは、ある事件をきっかけにケーキ作りをいっさい止めてしまった幻のパテシエ十村にしつこく食い下がり、デザート作りを承諾させようとするのだった。

こうと思ったらあとに引かない、周りが何とかしてやらなくてはと思わせる健気な性格のなつめ役は、蒼井優がぴったり。朴訥でまっすぐな生き方を貫く田舎娘を演じさせたら、蒼井優がピカイチ。『フラガール』で証明済みだ。→人気ブログランキング

2013年1月 8日 (火)

『別離』

別離 [DVD]

別離 [DVD]

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監督:アスガル・ファルハーディー
脚本:アスガル・ファルハーディー
音楽:サッタール・オラキ
製作国:イラン  2011年  123分 ★★★★☆

Amazon.co.jp で詳細を見る

シミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)の夫婦は11歳になる娘のテルメーとともにテヘランで暮らしている。妻のシミンは娘の将来を案じ国を出て暮らした方がいいと考えている。既に出国のための書類は揃えてある。しかし、夫のナデルは一緒に暮らす父親がアルツハイマー病を患っていて、国を出ることなど到底できないと考えている。
そこで夫婦は離婚調停で裁判所を訪れたが、離婚は認められずシミンは家を出て実家に戻った。

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夫婦間の問題と子供の教育、そして親の介護、我々が抱える問題となんら変わりない。

シミンは義父の世話をすることに嫌気がさしたのだろうか。シミンはテルメーに一緒に家を出るように促すが、娘は母親に従わなかった。痴呆症の祖父と父親を取った娘の選択は正解だろう。シミンの考えは利己的すぎる。

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ナデルは父親の世話のために昼のあいだラジエー(サレー・バヤト)を雇った。
ラジエーは幼い娘を連れて、朝5時に家を出てバスを乗り継いでやってくる。ラジエーが働き始めたその日にナデルの父親は、小便を漏らしてしまう。敬虔なイスラム教徒のラジエーは、聖職者に電話で粗相をした男性を裸にしてシャワーで洗うことが宗教上の問題はないか?と伺いをたてるのだった。

数日後、ラジエーはどうしても外出しなければならない用事があって、父親の腕をベッドに縛りつけて外出してしまう。
帰宅したナデルがベッドから落ちて意識を失っている父親を発見し、怒ったナデルはラジエーを解雇して家から追い出してしまう。
ラジエーは入り口を出たところで階段にうずくまり流産をしてしまう。ラジエーは妊娠していたのだ。

妊娠している女性が介護の仕事に新しく就くことは、日本では考えられないが、ラジエー一家は妊娠を隠して仕事をしなければならないくらいに困窮していた。靴職人の夫は1年以上職にあぶれている。

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ラジエーの夫は、ナデルに押されて妻が転び流産したと裁判所でまくし立て、賠償金をせしめようとする。
争点は、なぜラジエーは外出しなければならなかったのか、ナデルたちがラジエーの妊娠を知っていたか、ナデルがラジエーに暴力を振るったかの3点である。
ナデルが暴行を働き流産したとすれば、殺人罪が成立するというのだ。
それぞれが、ちょっとだけ真実と異なることを語り、ナデルは窮地に追い込まれる。

本作で描かれているのはイスラム社会だから起こったことではなく、どの国でもありうる家同士の争いである。

第84回アカデミー賞では、脚本賞と外国語映画賞にノミネートされ、外国語映画賞を受賞した。

2013年1月 6日 (日)

グッドドクター 禁断のカルテ

マーティン(オーランド・ブルーム)は内科医専門医を目指す医者の卵。
感情を表に出さないマーティンは、どことなくぎこちなく、見るからに頼りなさそうでミスをしでかしそう。喋りに抑揚がなく滑舌が悪い。
Photo_20210710085001グッド・ドクター 禁断のカルテ
The Good Doctor
監督:ランス・デイリー
脚本:ジョン・エンボム
音楽:ブライアン・バーン
製作国:アメリカ合衆国 2011年 97分

 

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マーティンは、腎盂腎炎で入院している女子高校生のダイアン(ライリー・キーオ)を受け持つ。治療がうまくいき、ダイアンは回復に向かい無事に退院する。
医師は尊敬されるべきだと思っているマーティンは、黒人看護師のテレサ(タラジ・P・ヘンソン)が指示が読めないとクレームをつけてきたことに我慢できない。マーティンは、テレサが嫌がらせをしていると思っている。

そんなおり、ダイアンの両親から自宅での食事に招待を受け、ダイアンに惹かれているマーティンは喜んで出かけていく。しかし、ダイアンは別れると言っていた恋人と外出していて不在だった。
洗面所を借りることを口実にマーティンは家の中をうろつき、ダイアンの部屋で顔写真を盗んだまではまだいい。洗面所にあったダイアンの薬を取り替えてしまうという、とんでもないことをやらかしてしまう。

ダイアンは、マーティンの思惑通り再発して入院してくる。
マーティンは、ダイアンの入院が長引くように、点滴の中身を替え検査も操作し、難治性の感染症にしたてあげる。
このあたりになるとホラー映画のテイストになり、『ミザリー』を彷彿とさせる。
ところが、マーティンの浅知恵どおりには事は運ばす、ダイアンの病状は悪化し手の施しようがなくなり亡くなってしまう。

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指導医のウェイランズ医師(ロブ・モロー)をはじめ仕事仲間は、マーティンが精神的なショックを受けているだろうと慰めの言葉をかける。「受け持ち患者の死を乗り越えて一人前の医者になる」と励まされるのだった。テレサからも一目おかれるようになる。
マーティンにすれば、周りから非難されてしかるべきなのに、どうしたことか励まされ、尊敬される兆しまでが感じられる。このくらいのことをやっても大丈夫なんだと、思ってしまったから始末が悪い。

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そんなおり、看護助手のリッチ(ネイサン・キーズ)からダイアンの日記を持っていると脅され、麻薬や睡眠薬を調達するようゆすられる。
日記の公表を恐れるマーティンは睡眠薬を手に入れリッチに渡すが、リッチの要求はエスカレートしていく。そしてリッチ殺しを計画するのだった。

殺人を犯した医師の卵が罪を免れ野放しになることに不安を抱かせることが、監督の狙いなんだろうけれど、中途半端だ。観客を不安のどん底に陥れるような仕掛けが欲しい。→人気ブログランキング

2013年1月 4日 (金)

レンタネコ

サヨコ(市川実日子)は猫たちと一軒家で亡き祖母の仏壇を守りながらひとりで暮らしている。何かと気持ちを逆なでする隣の謎のおばさん(小林克也)に、悩まされている。
サヨコは子どもの頃から、猫に好かれやすい体質らしく、どこに行っても猫が寄ってきた。それは祖母譲りだ。
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監督:荻上直子
脚本:荻上直子
音楽 :伊東光介
製作国:日本  2011年  110分 

そんな祖母はエプロンに煮干しを忍ばせていた。サヨコは笹かまぼこにしている。
サヨコには強い結婚願望がある。結婚すれば癒されると思っているらしい。

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ある日、サヨコは「レンタネコ屋」を始めた。
「レンターネコ、ネコ、ネコ。寂しい人にネコ貸しまーす」とハンドマイクで連呼しながら、リアカーにネコを乗せて河川敷を歩く。
因みに小夜子のケータイの呼び出し音は、この「♪レンターネコ、、、♪」である。
宣伝文句どおり、猫で心の穴を埋めてくださいという、癒しを売る商売なのだ。

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老未亡人(草村礼子)、 単身赴任の中年男性(光石研) 、そしてレンタカーの受付女性(山田真歩)に猫を貸し出す。

淡々とした脱力ペースで話は進む。
同じシーンの繰り返しが使われる。
例えば隣のおばさんが出てくるシーンでは、気に障ることをひとことふたこと言って、歌いながら場面から消える。そしてサヨコは「ババア、ゼッテイぶっ殺してやる」と独り言で締めくくる。
繰り返されると、見ている方は次はこうなるなと読める。それが安心感につながって癒される。安定調和ってやつだ。

動物が登場すると「お涙頂戴」になる作品が多いけれど、本作は涙が出ない。
ゆるい画面がただただ続き癒される。
出演している猫は、どの猫も不思議なくらいにおとなしくて、利口だ。
猫好きで癒されたい方にお勧め。→人気ブログランキング
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2013年1月 2日 (水)

『ウェブ進化論』―本当の大変化はこれから始まる by 梅田望夫

私は2000年からインターネットを始めた。2002年3月にホームページを立ち上げ、その後ランニングクラブやラーメンや書評のサイトを作った。2005年3月から当時流行りだしたブログを始め、同年11月にはグーグルアドセンスに登録した。
現在は日常の多くのやり取りをメールで済ませ、ブログに記事を書き、たまにグーグルから私の口座に広告料として100ドルが振り込まれる。というのが、私のインターネットとのかかわり方のおおよそである。

1995年からのネット社会の地殻変動とも言うべき変化によって、私たちは産業革命より重大な転換期の真っ只中にいると言われている。著者は、その変化の根底にあるのは、リアル世界では成立し得ないインターネット特有の3つの法則であると述べている。つまり「神の視点からの世界理解」、「ネット上にできた新しい経済圏」、「無限大×ゼロが価値を生み出す可能性」である。
第一法則の「神の視点からの世界理解」は、仰々しい表現だが、「全体を俯瞰する視点」のことである。ネット事業者は100万人単位、1000万人単位の顧客に対してサービスを行い、顧客の情報を管理することができる。膨大な量の情報を持つことによって、全体として何が起きているかを、「俯瞰した視点」で理解することができる。これが「神の視点からの世界理解」である。ヤフーやアマゾゾンやグーグルなどの世界規模の企業は、この「神の視点」で企業戦略をたてていると言える。人々がネットに対して漠然とした不安を感じているとすれば、こうした「神」が登場するようなネットの得体の知れないところに感じるのかも知れない。

第二法則の「ネット上にできた新しい経済圏」については、多くの例がある。そのひとつであるアマゾン・コムに代表されるネットで商品を売るビジネスは、いち早く確立された。冒頭に書いたグーグルから私の口座に100ドルが振り込まれる理由は、私のサイトがグーグルアドセンスに登録しているからである。グーグルはサイトの内容を自動的に読み取り、独自のアルゴリズム(計算式)に基づいてページごとにマッチした広告を私のサイトに掲載する。その広告掲載料などが100ドルに達すると、グーグルから口座に振り込まれる。グーグルは集まってくる企業からの広告費を、自社の取り分を確保したあと流通機構を介在させることなく、世界中の膨大な数のサイトに分配している。そのひとつに私のサイトがある。リアル世界では中間に存在する流通機構にコストがかかるが、グーグルが築き上げたビジネスモデルではそのコストは生じない。グーグルの約5000億円の年間売上の大半が広告収入だと言われている。

第三の法則「無限大×ゼロが価値を生み出す可能性」が、インターネットの本質であると著者は言う。1億人から1円ずつを集めるという発想である。わずかな金や時間をゼロに限りないコストで無限大に近い対象から集めることができたら何が起こるのか、ここにインターネットの可能性の本質があると著者は強調する。
この法則に当てはまる例のひとつにウィキペディアがある。ウィキペディアは、誰でもどの項目に対しても加筆修正ができるネット上の百科事典である。ウィキペディアの信頼性は、スタートした2001年1月からずっと槍玉に挙げられてきたが、『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の項目数6万5千の10倍以上(英語)にも及ぶ項目の百科事典がすでに出来上がっており、それは日々更新され、さらに200の言語ごとに作られ始めている。ウィキペディアにまつわる著作権の問題はそう簡単には解決しないだろうし、素人が作り出す「知」をオーソリティー達はこれからも非難し続けるだろう。ウィキペディアの将来は、インターネットの本質がどう既存社会に受け入れられるかということであり、ネットの将来を占う重要な試金石とみることができる。

インターネットの未来は、簡単には予測できないことであるが、過去から起こっている流れが未来につながっていくことは間違いないだろう。著者はインターネットの未来について、次のように述べている。「これから始まる『本当の大変化』は、着実な技術革新を伴いながら、長い時間をかけて起こるものである。短兵急ではない本質的な変化だからこそ逆に、ゆっくりとだが確実に社会を変えていく。『気づいたときには、いろいろのことがもう大きく変わっていた』といずれ振り返ることになるだろう」。

著者は、1960年生まれ。慶大工学部、東大大学院を卒業した後、1994年からシリコンバレーに在住。2005年からは株式会社「はてな」の取締役を務める。IT分野の知的リーダーとして若者の絶大な支持を得ている人物である。 インターネットを理解するうえでの教科書の位置にあるのが、本書だと思う。
インターネットはペシミスティックな視点で論じられることが比較的多いが、カリフォルニアの青い空のように明るく陽気に捕らえているのが本書の特徴である。

→『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋 2016年
→『未来型サバイバル音楽論』津田大介×牧村 憲 中公新書ラクレ 2010年
→『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』梅田望夫 ちくま新書 2006年

2013年1月 1日 (火)

『ポテチ』

ポテチ〔初回限定仕様〕 [DVD]

ポテチ [DVD]

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監督:中村義洋
脚本:中村義洋
原作:伊坂幸太郎
製作:若林雄介
音楽:斉藤和義/主題歌:斉藤和義「今夜、リンゴの木の下で」
製作国:日本 2012年 68分 ★★★☆☆

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堂々とした呑気さがある主人公の今村忠司(濱田岳)は空き巣。
ある日、今村が空き巣に入った家の留守電に、これから飛び降り自殺をすると大西若菜(木村文乃)から電話がかかり、今村の説得で若菜は自殺を思いとどまった。そして、ふたりは同棲するようになる。

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尾崎はかつて高校球界屈指のスラッガーだった。鳴り物入りでプロ野球仙醍キングスに入団し、2年目に首位打者を獲得したが、いまは鳴かず飛ばずで補欠に甘んじている。監督との折り合いが悪いと言われている。

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今村は健康診断の結果について気にかかることがあり、母親(石田えり)にも健康診断を受けるように促した。
今村は、26年前の同じ日に同じ病院で生まれた尾崎に対し、特別な感情を持っている。今村は空き巣兼私立探偵の黒澤(大森南朋)に健診の結果について悩んでいることを打ち明けた。

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尾崎が活躍する高校野球の試合をテレビで観ていると、「お前と同い年の人間がホームランを打って人を喜ばせている。同じ高校生でこうも違うものかねえ」と母親に言われたことを、今村は忘れられないでいる。

尾崎のマンションに空き巣に入った今村と若菜は、留守電をかけてきた若い女性が男と組んで、尾崎を陥れて金を巻き上げようとしていることを知る。普段は温厚な今村が、そのカップルに対して机を蹴飛ばしたりして激昂することに、若菜は今村と尾崎の間になにか秘密があると思い始めるのだった。

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塩味とコンソメ味のポテトチップスを今村と若菜が食べているときに、どうしたわけか今村が突然泣き出した。

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かくして、今村と母親、若菜、黒澤がキングスとジャイアンツの試合をスタンドで観戦している。黒澤は尾崎の出番があるというのだった。
そして黒澤が細工したとおりに、尾崎が代打でバッターボックスに立った。

どことなく暖かい感じがするのは、濱田岳の脱力した演技のせいだろう。
原作は『フィッシュストリー』に収められた同名の中篇、原作そのままのストーリーだ。

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

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伊坂幸太郎
新潮文庫 (2011-06-17)

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