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2013年1月23日 (水)

半落ち 横山秀夫

49歳の梶聡一郎警部は、アルツハイマー病の妻を絞殺した。妻に請われての犯行であった。夫妻は、8年前に、14歳の一人息子を急性骨髄性白血病で亡くしている。
梶は自首し、犯行を全面的に認めるが、犯行後2日間の行動については黙秘を続ける。空白の2日間、死に場所を求めてさまよっていたと調書に記載されるが、梶は否定しない。しかし、事実は違う。
空白の2日間に何があったのか。
半落ちとは警察用語で一部自供したという意味。
Image_20201216173901半落ち
横山秀夫
講談社文庫
2012年

本作は、2002年度下半期の直木賞候補に上がり、選考会において、ありえない設定であると北原謙三が指摘した。それを受けて林真理子が、その後過剰と思われるような批判を展開した。
あり得ない設定とは、「受刑者が骨髄移植のドナーになることは法的に不可能」というものであった。
出版社の講談社側は、事前に調査していて十分に可能であると反論した。
一方、骨髄バンクサイドは小説の設定に沿った検討を行い、「適合者が一人しかいない場合、法務省に協力を要請する」との見解にいたった。さらに法務省は、「事情を総合的に勘案して検討する」とふくみをもたせた判断を下した。
結果として、あり得ない設定と断定した林真理子の判断が、早計であったことになる。
この選考会をめぐる一連の騒動で、林真理子の選者としての資質を問う声が挙がった。
さらに、横山秀夫は「もう自分の作品を直木賞選考委員会に託すつもりはない」と、直木賞との決別を宣言をした。

本作品は読み応えのある優れた内容である。こうした話題性も手伝って、大ベストセラーになり、テレビドラマ化され映画化もされた。
直木賞史上、いわくつきの作品である(2004/12/29)。→人気ブログランキング

『直木賞のすべて』第128回直木賞(平成14年度、2002年下半期)における各選者のコメント。

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