雷桜
原作は宇江佐真理の『雷桜』、第123回直木賞(2000年度上期)候補作である。
また、『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』に本作を併せて、2010年公開の時代劇映画5作品共同の「サムライ・シネマキャンペーン」が行われた。
![]() 監督:廣木隆一 原作:宇江佐真理『雷桜』 脚本:田中幸子/加藤正人 音楽:大橋好規/主題歌:舞花「心」 製作国:日本 2010年 133分 |
天狗が出ると噂される森には、遊(蒼井優)と育ての親である田中理右衛門(時任三郎)が住んでいた。遊は毛皮で身を包み顔を毛皮の面で隠し、馬を乗り回し、弓矢を放って森に入る村人たちを威嚇した。そして、村人は瀬田山には天狗が住むと噂するようになった。
上手に乗りこなす蒼井優の乗馬姿がいい。
一方、徳川十一代将軍・家斉の十七男に生まれた斉道(岡田将生)は、母親の愛情を知らずに育った、というより母親から虐待を受けた。
そんな斉道は病弱であり、ときどき発作を起こす。そして、孤独のあまり精神を病み、怒りやすく、すぐに剣を抜く「うつけ者の殿」と噂されていた。
斉道は療養を兼ねて、家臣とともに瀬田村に向かうことになった。
家臣の瀬田助次郎(小出恵介)は自らの故郷の瀬田山に天狗が住むという噂を斉道に伝えた。
斉道は瀬田村への道すがら、天狗の棲むという森へ馬を走らせ、そこで遊に出会う。村に帰った斉道が森で出会った女天狗の話をすると、助次郎は15年前にさらわれた妹に違いないというのだった。
そんなある日、森の桜の巨木の下で斉道と遊は再開する。
世間を知らずに奔放に育った遊は、身分の違いを意識せず斉道に対等に向かいあう。そんな雷は、斉道にとって殿様の立場を抜きに話せる唯一の存在であった。そしてふたりは互いに惹かれてゆく。
一度は山を降りて生家に戻った遊であったが、なにかと制約の多い暮らしに耐えられず、山に戻るのだった。
遊が山で育てられたのは、20年前の不幸な事件による。
かつて、隣り合う藩同士の水の利権をめぐる話し合いが決裂し、理右衛門は、瀬田村の地主の娘を拉致し殺害する命令を受けたのだった。そして嵐の夜に遊を誘拐し、まさに首に手をかけて殺そうとしたとき、桜の巨木に雷が落ちた。それでも泣かずに笑い声をあげる遊を見て、殺すことを思いとどまり、雷と名付け育てることにした。
命令に背いた理右衛門は、藩の間者から逃れ、山に隠れて雷を育ててきたのだった。
しかし、雷が生家に戻っている間に、理右衛門は間者(池端慎之介)たちに居場所を突き止められ、姿を消してしまう。
奔放に育った雷(遊)は、初めは粗野ではあったが、恋を知って女性として成長した姿を、凛とした蒼井優ちゃんが見事に演じている。
精神を病んでいた斉道は、愛を知り、人の心の痛みを知ることで、人間的に成長を遂げる。幕府の命令で紀伊の国の殿様に命じられた斉道は、雷との愛を断ち切れない。そんな斉道を、家臣の榎戸角之進(柄本明)は腹を切って諌めるのだった。いくら世間知らずでうつけ者と噂される斉道であっても、この角之進の壮絶な死を目の当たりにして、我に返る。
やがて、斉道は紀伊の国に発つ。
それを馬で追いかけるようとする雷、しかし斉道は駕籠を開けずに進むのだった。
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