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2013年1月17日 (木)

苦役列車

19歳の北町寛多(森山未來)は、中学を卒業以来、日雇いの仕事で食いつないできた。稼いだ金はアルコールとのぞき部屋やソープランド代で消えてしまい、家賃を滞納してアパートを追い出されることがしばしばあった。頭の中はセックスのことでいっぱい、唯一の趣味は読書。
父親が性犯罪で逮捕され、両親は離婚して、転校を繰り返し悲惨な少年期を過ごした。そんな寛多は、中卒であることにコンプレックスを感じ、将来への希望は持てず、世間に対して憎悪の念を抱いている。
Image_20201221091701苦役列車
監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
原作:西村賢太
音楽:SHINCO/主題歌:ドレスコーズ「Trash」
製作国:日本  2012年   114分 

コップ酒を飲み、口いっぱいに食べ物を詰め込み、そのまま話をする。タバコを片時も離すことがなく、背を丸めやや左に傾いて歩く。話す言葉は、ぶっきら棒で他人への配慮はない。社会の下層でその日暮らしする若者の姿を、森山未來が実によく演じている。

1

ある日、港湾の仕事現場に専門学校生の日下部正二(高良健吾)が現れる。同い年の寛多と正二は打ち解けて付き合い始める。
寛多は古本屋でバイトをする大学生の桜井康子(前田敦子)が気になにっているが、自分で声をかける勇気がない。正二に仲介してもらい、友達として付き合ってもいいという康子の返事に有頂天になる。ところが、寛多は女性との付き合い方がわからない。握手した手を舐めるようなことするので、康子は気味悪がる。

ある日、3人は意気投合して冬の海に出かける。突如、寛多は服を脱ぎ捨て下着姿で海の中に入って行き、正二と康子も海に入り、3人は水をかけあってはしゃぐのだった。
この冬の海での馬鹿騒ぎのシーンは、暗いストーリーが続くなかで、観る者をほっとさせる息抜きの効果がある。
正二の恋人を交えて飲んだときに、寛多は悪酔いして暴言を吐いてしまい、そのことがあってから、寛太と正二は疎遠なっていく。

5

ある日、彼は康子を待ち伏せして、いきなりセックスを迫るのだった。いつかはこんなことになつだろうと思っていたら、案の定だ。

食堂で、歌手になると言っていた仕事仲間がテレビで歌っているのを観て、寛多は釘づけになる。男は、夢を持っていれば今の生活から抜け出せると思ったら大間違い、この生活からは永遠に抜け出せないと、かつて寛多に言ったことがある。
寛多は何かを感じたのか、アパートに帰って机に向かい、憑かれたように書き始める。

原作は、2010年第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名の中篇小説。
暴力的で悲惨で陰鬱な原作を映画化するとどうなるか、興味があった。映画では、原作にはない康子との恋愛が取り入れられたり、海のシーンがあったりして、ストーリーに膨らみが出ている。
ところが、著者自身は「どうしようもなくつまらない映画」「原作者として名前をつらねるのも不快」「ストーリーの改変も、原作を超えてくれるものであれば、それはまた別物として大歓迎なのだが、客観的に見ても到底その域には達していない」(『私小説書きの日乗 』)と、メッタ斬りの悪口をぶちまけている。
著者にすれば、安っぽい青春ドラマ風にされたんじゃたまらないということだろう。原作はもっとおどろおどろしい。→人気ブログランキング

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