『別離』
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シミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)の夫婦は11歳になる娘のテルメーとともにテヘランで暮らしている。妻のシミンは娘の将来を案じ国を出て暮らした方がいいと考えている。既に出国のための書類は揃えてある。しかし、夫のナデルは一緒に暮らす父親がアルツハイマー病を患っていて、国を出ることなど到底できないと考えている。
そこで夫婦は離婚調停で裁判所を訪れたが、離婚は認められずシミンは家を出て実家に戻った。
夫婦間の問題と子供の教育、そして親の介護、我々が抱える問題となんら変わりない。
シミンは義父の世話をすることに嫌気がさしたのだろうか。シミンはテルメーに一緒に家を出るように促すが、娘は母親に従わなかった。痴呆症の祖父と父親を取った娘の選択は正解だろう。シミンの考えは利己的すぎる。
ナデルは父親の世話のために昼のあいだラジエー(サレー・バヤト)を雇った。
ラジエーは幼い娘を連れて、朝5時に家を出てバスを乗り継いでやってくる。ラジエーが働き始めたその日にナデルの父親は、小便を漏らしてしまう。敬虔なイスラム教徒のラジエーは、聖職者に電話で粗相をした男性を裸にしてシャワーで洗うことが宗教上の問題はないか?と伺いをたてるのだった。
数日後、ラジエーはどうしても外出しなければならない用事があって、父親の腕をベッドに縛りつけて外出してしまう。
帰宅したナデルがベッドから落ちて意識を失っている父親を発見し、怒ったナデルはラジエーを解雇して家から追い出してしまう。
ラジエーは入り口を出たところで階段にうずくまり流産をしてしまう。ラジエーは妊娠していたのだ。
妊娠している女性が介護の仕事に新しく就くことは、日本では考えられないが、ラジエー一家は妊娠を隠して仕事をしなければならないくらいに困窮していた。靴職人の夫は1年以上職にあぶれている。
ラジエーの夫は、ナデルに押されて妻が転び流産したと裁判所でまくし立て、賠償金をせしめようとする。
争点は、なぜラジエーは外出しなければならなかったのか、ナデルたちがラジエーの妊娠を知っていたか、ナデルがラジエーに暴力を振るったかの3点である。
ナデルが暴行を働き流産したとすれば、殺人罪が成立するというのだ。
それぞれが、ちょっとだけ真実と異なることを語り、ナデルは窮地に追い込まれる。
本作で描かれているのはイスラム社会だから起こったことではなく、どの国でもありうる家同士の争いである。
第84回アカデミー賞では、脚本賞と外国語映画賞にノミネートされ、外国語映画賞を受賞した。
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