アルゴ
1979年、イラク革命が起こり、アメリカがリンパ腫に侵されたバーレビ国王を受け入れたことに反発した過激派が、テヘランの米国大使館を襲撃した。その時、大q使館を密かに脱出してカナダ大使の公邸に匿われた6人がいた。アメリカ大使館人質事件のかげに隠れて、CIAによるこの6人の救出劇が行われた。本作は実話に基づいた脱出作戦の全貌を描いたもの。
脱出作戦は、当時のカーター政権下では極秘事項として扱われ、カナダ政府が行ったことになっていた。事実の詳細はクリントン政権になって公表された。
助かるとわかっていても、緊迫した場面が続きハラハラドキドキさせる上質のエンターテーメントになっている。
ベン・アフレック監督による『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07年)『ザ・タウン』(10年)に続く、3作目。
今年(2012年度)のアカデミー賞作品賞、脚本賞、監督賞の最有力候補と言われている。
アルゴ Argo 監督:ベン・アフレック 脚本:クリス・テリオ 原作:アントニオ・J・メンデス 製作:ジョージ・クルーニー/グラント・ヘスロヴ/ベン・アフレック 音楽:アレクサンドル・デスプラ 製作国:アメリカ合衆国 2012年 120分 |
作戦を任されたのは、CIAの脱出の専門家であるトニー・メンデス(ベン・アフレック)。監督兼主役のベン・アフレックが演じるトニーのものに動じない冷静な演技に説得力がある。
作戦は、6人を架空のSF映画『アルゴ』のカナダ人ロケハンに仕立て上げ、テヘラン発の飛行機で脱出しようという、突拍子もないもの。「脱出とは堕胎手術のように嫌なもの、しかし、やらなければならない」とトニーは強引に押し通した。
ハリウッドに事務所が開かれ、配役が決まり、キャストを集めての台本読みが行われ、記者会見が開かれ、大々的に宣伝した。マスコミが取り上げ、仕掛けは順調に進んだ。架空のプロデューサーであるジョン・グッドマンとアラン・アーキンのコンビがいい味を出している。
かくして、6人のパスポートを持ってトニーはテヘランのカナダ大使公邸に向かう。
作戦を説明するトニーに、6人は時間も選択肢もないことを承知していても、馬鹿げた話だと乗ってこない。
一方、革命軍側は、シュレッダーにかられた資料を、大勢の子供を使って修復させている。いずれ、6人の顔写真が修復されるだろう。
いずれにしても、作戦を決行するしかない状況に追い込まれている。数日後にはカナダ大使館も閉鎖される。そうなれば、6人は捕まり公開処刑されるだろう。
こうして最悪のシナリオで最高の演技が求められる救出作戦が始まる。
ストーリーは、イラン革命が起こり大使館が占拠され救出作戦が検討されるまでが第一段階、カリフォルニアででっち上げのSF映画『アルゴ』が企画され、マスコミに取り上げられるまでが第二段階、そしてテヘランでの救出劇が第三段階と、三つのパーツに分かれる。
映画の最後に、カーター元大統領のこの救出作戦に対する賛辞が流れる。カーターの肉声が流れることで、この映画の価値を一段と高めた。作品のなかでは、作戦に関わった唯一の当事者なのだ。→人気ブログランキング
本作は、あまりにもアメリカ寄りの見方との非難があり、同事件のイラン側の見地に立った映画が作られるという。
→『アルゴ』 アントニオメンデス×マット・バグリオ著/ハヤカワ・ノンフィクション文庫
【ベンアフレック関連作品】
『アルゴ』Argo/2012年/第85回アカデミー賞作品賞受賞
『ザ・タウン』The Town/2010年
『ゴーン・ベービー・ゴーン』Gone Baby Gone/2007年
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』Good Will Hunting/1997年
(アカデミー賞オリジナル脚本賞をマット・デーモンとともに受賞)
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