シスタースマイル ドミニクの歌
本作品は実話をもとに作られた。
主人公のジャニーヌは、両親の束縛から逃れるために修道院に入り、『ドミニク』を歌い一世を風靡するシンガーソングライターになる。そのあと、修道院から自由になるために環俗し、一転してカソリック教会を批判する歌を歌うが、世間には振り向かれず行き詰まってしまう。そんな頑固で純粋な生き方をした女性をセシル・ド・フランスが、好演している。
シスタースマイル ドミニクの歌 Sister Smile Soeur Sourire 監督:ステイン・コニンクス 脚本:クリス・ヴァン・デル・スタッペン/ステイン・コニンクス/アリアン・フェート 音楽:ブリュノ・フォンテーヌ 製作国:仏・ベルギー 2009年 124分 |
1950年代末のベルギー。
ジャニーヌの家業はパン屋、両親と従姉妹の4人で暮らしていた。
両親はジャニーヌが平凡な結婚をして、パン屋を継いでくれることを望んでいた。しかし、ジャニーヌは折り合いの悪い母親から逃れ、大切なギターとエルヴィス・プレスリーのプロマイドをもって、ドミニコ会フィシェルモン修道院に入り修道女になる道を選んだ。
修道院では、愛用のギターを取り上げられてしまう。修道女になるには6年間もの修行が必要であることがわかる。
彼女は、修道院の厳格な規律に縛られる生活に反発するが、修道会の聖人ドミニコを讃える『ドミニク』を作って歌ったところ、修道女たちに絶賛される。
この歌がレコードになると、瞬く間に全米のヒットチャート入りし、ジャニーヌはシスター・スマイルと名乗り、一夜にして国際的な人気歌手となった。『ドミニク』はエルヴィス・プレスリーのレコードをも凌ぐ300万枚の大ヒットとなり、彼女は印税の大半を修道院に寄付していた。
世間は謎のシスターの素顔を知りたがり、教会にマスコミが押し寄せ、ファンも教会に大挙して訪れるようになる。さらに音信不通だった両親も、スターになった彼女のサインをもらいに、修道院に面会に来るのだった。
子供の頃、「♪ドミニク、ニク、ニク♪」と、意味も考えずにピクニックの歌だろうと思って口ずさんだ歌に、こんなドラマがあったとは驚きである。
やがて、修道院を出たジャニーヌは、カトリック教会の保守的な体質に批判的な行動をとるようになる。1967年には、産児制限を指示する歌『黄金のピルのために神の栄光あれ』を発売したものの、まったく売れなかった。環俗したシスターに、世間は振り向かなかったのだ。
ドミニクはいわばカソリックを賛辞する歌、一方『黄金のピルのために神の栄光あれ』はカソリックの保守性を批判する歌である。このギャップをファンが受け入れるのは難しい。
失意のジャニーヌは、かつての親友アニー(サンドリーヌ・ブランク)を訪ね、2人は新しい家を借りて共同生活を始める。このことがスキャンダルとして新聞に載り、母親からは恥知らずと罵られるのだった。
悪いことは続くものだ。
その後、ベルギー政府から彼女に対して5万米ドルの追徴税が課せられる。これに対してジャニーヌは、金は修道院に寄付したと主張したが、寄付であったことを示す領収書が存在しなかった。まともなマネージメントが行われなかったのだ。彼女の言い分は認められず、惨憺たる経済状態に陥ってしまう。
やがて、生きる希望を失った、ジャニーヌはアニーとともに自ら命を絶った。セシル・ド・フランスは存在感のある、訳ありの女性を演じたらぴか一です。→人気ブログランキング
【セシル・ド・フランス出演作品】
『少年と自転車』(12年)
『ヒアアフター』(10年)
『シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
『ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
『モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
『スパニッシュアパートメント』(02年)
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