エターナル・サンシャイン
『マルコヴィッチの穴』(99年)脚本、『脳内ニューヨーク』(08年)の監督・脚本で、異才を放ったチャーリー・カウフマンが、本作ではアカデミー賞脚本賞を受賞した。
また、ケイト・ウィンスレットが、アカデミー賞主演女優賞ノミネートされた。
消す必要のない記憶を消そうとすることで騒動が巻き起こる異色のラブストーリー。
エターナル・サンシャイン Eternal Sunshine of the Spotless Mind 監督:ミシェル・ゴンドリー 脚本:チャーリー・カウフマン 原案:チャーリー・カウフマン/ミシェル・ゴンドリー/ピエール・ビスマス 音楽:ジョン・ブライオン アメリカ 2004年 107分 |
ジョエル(ジム・キャリー)は決断力がなく消極的で平凡な男。
一方のクレメンタイン(クレム/ケイト・ウィンスレット)は気まぐれでひっきりなしに喋っている女。髪の毛の色を「青い廃墟」「アカの脅威」「緑の革命」「枯葉剤色」などと名付けて、しょっ中替えている。
ふたりはバレンタインの日を前に別れてしまう。
クレムにすげなくされたジョエルは、彼女がクリニックで記憶消去の処置を受けたことを知る。それならばと、彼もクレムを忘れるために記憶消去の処置を受けることを決意する。
相手に関わる思い出の品物やエピソードを脳からひとつずつ消していく方法で、記憶消去は行われる。
ジョエルの記憶消去は、彼が無意識に記憶を消し去ることに抵抗しているのか、スムースにいかない。
記憶を消す処置を行うスタン(マーク・ラファロ)にも問題があった。スタンとクリニックの受付嬢メアリー(キルスティン・ダンスト)は、ジョエルが消却の処置を受けて寝ているベッドの上で、酒を飲んで踊りマリファナを吸ってセックスをするというデタラメさなのだ。
そんな、いい加減なことで処置がうまくいくはずがなく、ジュエルの脳のどこかにクレムについての記憶が紛れ込んでしまう。
どうにも手に負えなくなったスタンは、真夜中にハワード博士(トム・ウィルキンソン)を呼び出すことにした。博士が現れると、マリファナの影響が抜けないメアリーは、前から思いを寄せていた博士に言い寄ってキスをせがんでしまう。メアリーには、ハワード博士のことを忘れるために記憶消去を受けた過去があった。
ここで、博士を追いかけてきた妻が、博士とメアリーがキスをするところを目撃して逆上するのだった。
記憶を消す過程をどう映像化するかが、この映画の難しいところだが、そこに今ひとつ説得力がない。
もうひとりの助手パトリック(イライジャ・ウッド)は、クレムに記憶消却の処置をしているときに一目惚れをしてしまい、不届きにも彼女のパンティを盗んだり言い寄ったりするのだ。
こんなドタバタするなか、振り出しに戻ったふたりは、それぞれの欠点を認め合いながら、やり直そうとするのだった。
見終わった直後は不可解さに戸惑うが、時間が経ってストーリーを思い返す
と、どこか救われるような気持ちになる、不思議な魅力がある映画だ。
ちなみに、原題の「Eternal Sunshine of the Spotless Mind/汚れなき心の永遠の陽光」は、作中メリーが口ずさむ、18世紀前半の英国詩人アレクサンダー・ポープの詩の一節からきている。
How happy is the blameless vestal’s lot !
The world forgetting, by the world forgot.
Eternal sunshine of the spotless mind !
Each pray’r accepted, and each wish resign’d.
【チャーリー・カウフマンの作品】
『脳内ニューヨーク/Synecdoche, New York』(08年)監督・脚本
『アダプテーション』(02年)脚本
『エターナル・サンシャイン/Eternal Sunshine of the Spotless Mind 』(04年)脚本
『マルコヴィッチの穴/Being John Malkovich』(99年)脚本
【ケイト・ウィンスレット出演作品】
『おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
『愛を読むひと』The Reader/2008年
『リトル・チルドレン』Little Children/2006年
『エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年
『アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
『いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年
« シスタースマイル ドミニクの歌 | トップページ | マルコヴィッチの穴 »
「SF」カテゴリの記事
- タウ・ゼロ ポール・アンダースン(2020.11.17)
- 火星のレディ・アストロネート メアリ・ロビネット・コワル(2020.10.26)
- 宇宙(そら)へ メアリ・ロビネット・コワル(2020.10.17)
- 三体 Ⅱ 黒暗森林 劉 慈欣(2020.07.10)
- 復活の日 小松左京(2020.05.19)
「コメディ」カテゴリの記事
- リトル・チルドレン(2021.01.02)
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- フィッターXの異常な愛情 蛭田亜紗子(2015.06.15)
- 『ジャッジ!』(2015.02.28)
- 8月の家族たち(2014.10.16)
コメント