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2013年2月 9日 (土)

ニュースの天才

本作は、1998年にアメリカで実際に起こった記事捏造事件に基づいて作られている。登場人物や雑誌名、会社名などは実名が使われているという。
Photo_20210524075701ニュースの天才
Shattered Glass
監督:ビリー・レイ脚本:ビリー・レイ
製作総指揮:トム・クルーズ
アメリカ   2003年  94分 

Shatteredglass_1

25歳の主人公のスティーブ・グラス(ヘイデン・クリステンセン)は、アメリカを代表する政治論説週刊誌『ニューパブリック』の新進気鋭のジャーナリスト。
彼が書く記事は、着眼点もさることながら分析が巧みで、なにしろ面白い。記事が次々に当たり、若手の売れっこジャーナリストととして注目を集めている。

スティーブが会議で書こうとしている記事の要約を説明すると、上司も同僚も賞賛の声をあげる。そんなスティーブは、強気になるどころか、同僚たちに気を遣っているから、周りは彼を暖かい目で見ている。
今のところ、スティーブは会社の宝だ。

Shatteredglass1

『ニューパブリック』は、実際に大統領専用機にただ1冊備え付けられている雑誌。厳重に管理された質の高い記事が載せられていることになっていて、記者たちのプライドは高い。本作中、この大統領専用機に置かれていることがたびたび話題に上がる。

ことの発端はスティーブの記事『ハッカー天国』である。
この記事の内容は、あるソフトウェア会社のホームページに侵入した少年ハッカーを、会社は告発せずにコンピュータのセキュリティ要員として、高額の報酬で雇ったという、どこかで聞いたことがあるような話。
この記事がインターネット雑誌社の編集長の目に留まり、部下になぜ特ダネを見逃したのか調査を命じた。その結果、会社もハッカーも存在せず、スティーブが作り上げた架空のものであることが判明した。
『ハッカー天国』と似た内容がヘニング・マンケルの『ファイヤー・ウォール』にも出ていた。警察がハッカー少年を極秘で雇い、セキュリティをかいくぐって犯人のコンピュータに忍び込む話。

この捏造が暴かれたあと、ケイトリル(クロエ・セヴィニー)をはじめ同僚たちがスティーブに冷たい応対をすると思いきや、意外なことに、いたって同情的なのだ。
そんなとき、新しい編集長に抜擢されたのは、同僚から人気のないチャック(ピーター・サースガード)。彼はスティーブの記事を徹底的に調べることにした。そうしたチャックは同僚の反発を買う。
アメリカも日本とかわらず、いい人に弱く身内に甘い。
チャックの考えは、あくまでも真実を明らかににし会社を救うことだ。

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スティーブの取材資料はすべて手書きのノートに収められていて、追求されると、ノートを調べてみないと何とも言えないと時間稼ぎをして、工作を繰り返すのだった。しかしそうした工作も次々にばれ、スティーブの化けの皮が剥がされていく。
調査の結果、彼の書いた記事はほとんどがでっち上げたものだった。

一流誌の記事が公にされるまでに、複数の人間の目でかなり厳重にチェックされているように描かれている。そんなやり方のなかをスティーブはかいくぐったのだから、アメリカの一流出版社といえども、どこか杜撰なところがあったのだろう。
眠たそうな目のサースガードは、何か心に秘めたものがある人物にぴったりである。
原題の『Shattered Glass』「粉々になったグラス」は、主人公のスティーブ・グラスにかけているが、邦題の『ニュースの天才』の方が味がある。→人気ブログランキング

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