いつか晴れた日に
19世紀はじめのイギリスでは、すべての財産は息子が継ぐことになっていた。
夫が亡くなって前妻の息子に財産のすべてが渡ってしまう理不尽な状況になり、本妻母娘の苦悩は始まる。
いつか晴れた日に Sense and Sensibility 監督:アン・リー 脚本:エマ・トンプソ/シドニー・ポラック/ジェームズ・シェイマス 原作:ジェーン・オースティン『分別と多感』 音楽:パトリック・ドイル アメリカ イギリス 1995年 136分 |
ダッシュウッド氏(トム・ウィルキンソン)が妻と三人の娘たちの身を案じ、臨終の際に彼女たちを頼むと息子のジョンに遺言したにもかかわらず、ジョンの鬼妻ファニーが遺言に従わせなかった。
妻と三人の娘は、年500ポンドの遺産しか手にできないことに愕然とする。
ジョンと鬼妻ファニーは、母娘たちが住んでいるダッシュウッド氏の館に乗り込んできて、彼女たちを邪慳に扱うようになる。
館に遊びに来たファニーの弟エドワード(ヒュー・グランド)は、教会の仕事をして実直に生きて行こうと考えていた。エリノア(エマ・トンプソン)はそんなエドワードに惹かれ、ふたりは愛を育んでいく。ところが、ファニーはふたりの関係を快く思っていない。
やがて、ダッシュウッド母娘は、ファニーのいじめに耐え切れなくなり、親戚の厚意でバートン・コテージへ移り住むことになった。
そこで、マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)はブランドン大佐(アラン・リックマン)から見初められるが、彼女は精悍なウィロビーに心を奪われる。
ウィロビーは黄色い馬車を操る、現代で言えばオープンカーで走り回るような男である。
ふたりは恋仲になるが、ある日ウィロビーは理由も告げずにロンドンへ行ってしまい、マリアンヌは悲しみに沈む。
一方、エリノアはエドワードにルーシーという婚約者がいることを知り、大きな衝撃を受ける。
この時代、資産のない上流階級の女性が生きて行くためには、結婚して夫の世話になるしかない。
この階級の男も女も、生産性のある仕事に就くわけではなく、地位や財産を受け継いで暮らすわけだから、自ずと関心事は玉の輿争奪の婚活である。
失意のエリノア、マリアンナ姉妹、ルーシーはロンドンを訪れる。
ロンドン滞在中に明らかになるのは、大佐のかつての恋人の娘がウィロビーの子供を妊娠したこと、このことでウィロビーは叔母からの財産権を失い、金持ちの娘と結婚することになったこと。ルーシーが鬼妻ファニーにエドワードと付き合っていることを伝えると、「性悪女!」と追い出されたこと。
エドワードが母親の命令に従わなかったことで財産相続権を失ったことなど。
これで、登場人物の相続にまつわる複雑な人間関係が、整理されたわけだ。
そしてエドワードは大佐の好意で領地の半分を任せられることになり、彼とエリノアはめでたく結婚する。
さて、マリアンヌは、ウィローのすげない態度に自暴自棄になり、雨の中をさまよう。
救い出したのは大佐であったが、マリアンナは重い流感に罹り生死の境をさまよう。
大佐が手配した医者の治療により彼女は快方に向かうのだった。
そして、マリアンナと大佐は親密になり、結婚する。
正直で慎ましやかなエリノアをエマ・トンプソンが、感情の起伏が激しいマリアンヌをケイト・ウィンスレットが、巧みに演じている。
アン・リー監督の才能がほとばしる作品。
えげつない話になりそうなところを、エマ・トンプソンが自ら脚色して、シドニー・ポラックたちも協力して、上品な物語になっている。
アカデミー賞脚色賞を受賞した。→人気ブログランキング
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