夢売るふたり
コメディ風に始まってコメディかと思いきや、シリアスな方向にストーリーは進み、主人公夫婦の関係が破綻していき、やがて因果応報な結末をむかえるというシリアスなドラマだ。
夢売るふたり 監督:西川美和 脚本:西川美和 音楽:モアリズム 日本 2012年 137分 |
主人公は、居酒屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。
店は繁盛していたが、調理場から失火して何もかもが焼けてしまい、ここからふたりの人生は歯車が狂った。
妻はどうにかなると前向きだが、夫は立ち直れないで酒浸りの毎日を送っていた。
夫は、妻を幸せにできない自分に無理についてこなくてもいいと、別れをほのめかすことを口にする。
ある夜、貫也は常連客だった女性(鈴木砂羽)と出会い、酒を飲んで一夜を共にする。別れ際に、女性が不倫相手からの手切れ金を、店の再建に使うようにと貫也に手渡たした。
浮気は里子にバレれるが、彼女は夫には女から金を騙し取る才能があると見抜いてしまう。
そして、自分たちの店を持つという夢にむかって、ふたりは共謀して次々と女たちを騙し始めることになる。
貫也がターゲットにしたのは、結婚願望の強いOL(田中麗奈)、ヒモに金を搾り取られてなおも貢ぐ風俗嬢(安藤玉恵)、ウェートリフティング選手(江原由夏)、息子をかかえたシングルマザー(木村多江)たち。
はじめは詐欺がうまくいき、徐々に金は貯まり、新しい店の工事も始まる。
しかし、もともと悪人ではないふたりが、結婚詐欺をやっていつまでもうまくいくはずがない。そもそも金のためとはいえ、夫がほかの女と関係を持っていることは、妻にとって心穏やなではなく、夫婦の間にほころびが生じてくる。
お互いが、もう詐欺を止めようと思った瞬間があった。
貫也がシングルマザーの家に自転車で向かおうとしたとき、里子が止めるかもしれないと貫也は自転車を止めて後ろを振り返るが、里子は現れない。そのあとに、里子が貫也を追うように家から出てくるが、すでに貫也の姿は見えなくなっていた。
出演者を見ると、鈴木砂羽は不倫お構いなしの女を演じ、田中麗奈は三枚目でシリアスな役柄がうまい。
安藤玉恵は、貧乏くじを引き通しのあっけらかんとした風俗嬢をそれらしく演じている。
江原由夏が演じる重量級ウェートリフティング選手は、本作の重要な役どころで、それを見事にこなしている。
木村多江が演じるシングルマザーは、頼りなさそうにしていて、その実、なにかを企んでいそうである。
あまり感情を表に出さない気丈な妻は、松たか子にぴったりの役。
というふうに様々な女性の生き様が描かれている。
後半には、アクの強い笑福亭鶴瓶が悪役で顔を出し、なりより、画面に映るだけで何かを訴えことができる阿部サダヲが、本作の全体を引き締めている。→人気ブログランキング
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