アダプテーション
『マルコヴィッチの穴』で成功を収めた脚本家のチャーリー・カウフマンが、自分自身が映画の脚本を書くことに苦しむ話を脚本にした。
悶え苦しんだ挙句に考えついたストーリーは、カウフマン自身を登場させるというマトリョーシカ人形のような話。『マルコヴィッチの穴』で、マルコヴィッチ自身が穴に入るのと同じ発想になる。しかも、チャーリーには双子のそっくりな弟がいるという回帰と重層とが絡み合った設定である。
アダプテーション Adaptation. 監督:スパイク・ジョーンズ 脚本:チャーリー・カウフマン(ドナルド・カウフマン) 音楽:カーター・バーウェル アメリカ 2002年 114分 |
チャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)が、『マルコヴィッチの穴』の撮影現場に顔を出し、ジョン・キューザックやキャサリン・キーナーやジョン・マルコヴィッチが忙しそうにしているなか、係員から邪険に扱われるところから、この映画は始まる。まるで、『マルコヴィッチの穴』の撮影現場から、そのまま話が引き継がれたような設定になっている。
チャーリーは、脚本家は現場に顔を出すものではないと反省することしきり。ハゲでデブと自らを卑下している。
彼は、プロデューサーのヴァレリー(ティルダ・スウィントン)から、スーザン・オーリアン(メルリ・ストリープ)の著書、『蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界』の映画化を依頼された。
ヴァレリーからスーザンが近くにいるから会ってはどうかとすすめられるが、まだ準備が不十分だとか、著者に会うと影響を受けてしまうと言って、逃げ出してしまう。というくらいチャーリーは内気で自信がない。
彼は脚本のことが頭から離れないが、筆は進まないスランプ状態に陥っている。そのせいで、ガールフレンドのアメリア(カーラ・シーモア)との間もうまくいかない。
一方、チャーリーと同居する双子の弟ドナルドは、陽気で前向きな性格。ロバート・マッキーの脚本家養成セミナーに参加しただけで書いた脚本が、高い評価を受けてしまう。
スーザンが、著書を書き上げるまでの取材の過程は、苦悩するチャーリーの話と並行して進んで描かれる。
主人公は、フロリダで蘭を不法採集した栽培家のジョン・ラロシュ(クリス・クーパー)。ジョンの幽霊蘭の採取に同行したスーザンは、夫とうまく行ってないこともあって、一線を超えてしまう。
ところで、ジョンの前歯が何本も欠けているのは、自堕落な生活をしているからではなく、悲惨な事故にあったからだ。
チャーリーの脚本は相変わらずさっぱり進まず、スーザンの著書を読み進むうちに、彼女にあらぬ妄想を抱く始末。彼は、脚本に自らを登場させるアイデアを思いつき、思い腰をあげてスーザンに会うことを決心する。そして、チャーリーとドナルドは、彼女のいるマイアミに向かう。
ここまでのストーリーは、チャーリーとスーザンのそれぞれの話が、幾分関係を持ちながら並行して進んでいって、マイアミで交差しクライマックスに向かう。
マイアミで、兄弟はラロシュが蘭から麻薬を抽出したことを掴み、さらにスーザンとラロシュの不倫現場を目撃してしまう。
兄弟に秘密が知られたラロシュは、銃を持ってふたりを追い掛け回し、その結果、ドナルドは自動車事故に遭い、ラロシュはワニに襲われて死亡してしまう。
ほうほうの体でマイアミから逃げ帰ったチャーリーは、陽気なドナルドの性格が乗り移り、アメリアに愛の告白をするのだった。
ドタバタしていて、どこか愉快。
チャーリー・カウフマンのアイディアに、振り回されているような気分になる作品。→人気ブログランキング
【チャーリー・カウフマンの作品】
『脳内ニューヨーク/Synecdoche, New York』(08年)監督・脚本
『アダプテーション』(02年)脚本
『エターナル・サンシャイン/Eternal Sunshine of the Spotless Mind 』(04年)脚本
『マルコヴィッチの穴/Being John Malkovich』(99年)脚本
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