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『白夜に惑う夏』 アン・クリーヴス

白夜に惑う夏 (創元推理文庫)
アン・クリーヴス
玉木 享訳
東京創元社

『大鴉の啼く冬』につづく、アン・クリーブスのシェトランド四重奏の第2章。
本シリーズではシェトランドの極端な気候がたびたび触れられるが、本作でも白夜が登場人物たちに及ぼす影響が何回か語られる。

シェトランド警察署のペレス警部は恋人のフランとともに、ビディスタという町の絵画展に出でかけた。その絵画展はフランともうひとりの画家シンクレアとの共同絵画展であった。その絵画展で、絵の前で奇妙な行動をとった男が、翌朝道化師の仮面をつけたまま首吊り死体となって発見された。
ペレスは、前作『大鴉の啼く冬』と同様に、本土のテイラー主任警部と組んで捜査を開始する。被害者が島の住人でなかったことから、事件は他人事のように冷静に受け止められていた。

しかし、第2の殺人事件が起こり、島の人間関係に微妙な変化が表れてくる。
テイラーは「人を殺しておいて、翌日、しれっと嘘をつける人物といったら、誰が思い浮かびますか?」と、ペレスに投げかける。テイラーにすれば、お互いに知っているはずの狭い島で、誰が犯人かはすぐに見当がつきそうなものだというのだ。
しかし、ペレスは旧知の間柄だからこそ秘密を作りたがるということがあるのを知っている。

都会からやってきた気障な作家にフランが惹かれているのではないかと、ペレスは心が穏やかではない。ペレスとフランの恋の進展もストーリーに絡んでいる。

第一の殺人が起きたあと、著者は次のように書いている。
おそらくノイローゼ気味の観光客だろう。でなければ、酔っぱらっていたとか、ドラッグをやっていたか。一年のこの時季になると、シェトランドはそういう連中が引き寄せられてくるようだった。彼らは楽園や平穏を求めて、ここを訪れる。そして、白夜のせいで精神がますます不安定になることを知るのだ。
ある意味で本作の主役は白夜であるといえる。(2011年9月)→ブログランキングへ

【シェトランドに関するミステリ】
アン・クリーブス著〈シェトランド四重奏〉
大鴉の啼く冬』(07年7月)、『野兎を悼む春』(11年7月)、『白夜に惑う夏』(09年7月)、『青雷の光る秋』(13年3月)
シャロン・J・ボルトン著
三つの秘文字』 

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