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2013年4月 7日 (日)

青雷の光る秋 アン・クリーブス

本作『青雷の光る秋/Blue Lightning』 は、『大鴉の啼く冬/Raven Black』(07年)、『白夜に惑う夏/White Nights』(09年)、『野兎を悼む春/Red Bones』(11年)に続いて出版された、アン・クリーヴスのシェトランド4重奏の最終章である(カッコ内は邦訳が出版された年)。原作と邦訳のタイトルを比べてみると、邦訳のどれもがストーリーの内容を汲み取っていて味わいがある。
Image_20201210105901青雷の光る秋
アン・クリーヴス
玉木 享訳
創元推理文庫
2013年

10月中旬、ペレス警部は、婚約者のフランを供なって故郷のフェア島に帰省した。あまりの悪天候でフェア島に向かう飛行機は激しく揺れて、フランは死の恐怖を覚えるほどだった。両親はふたりに、島のフィールドセンターで婚約祝いのパーティを予定したと告げる。
灯台を改築したフィールドセンターは野鳥観察の拠点で、春から秋にかけて島に逗留するバードウォッチャーたちの宿泊所や、島民のパーティの会場として使われていた。フィールドセンターの所長のモーリスには、年下の妻監視員のアンジェラがいて、彼女はテレビにも出演する鳥類学の有名な美人学者である。

婚約祝いのパーティは滞りなく終わるが、その夜、センターでドレス姿のままアンジェラが背中をナイフで一突きされ殺される。遺体には白い鳥の羽根が振りかけられていた。

パーティの前にアンジェラは、評判のいいセンターの料理人ジェーンに、来期からの解雇を言い渡していた。また、パーティでは、アンジェラとモーリスの連れ子・義理の娘ポピーとの口論になり、ポピーがアンジェラの自慢の長い髪の毛に、ビールを引っ掛けた。また、ペレスが調査を進めるとアンジェラの奔放な男性関係が明らかになってくる。
そんな中、第二の殺人事件が起こる。

第一の殺人は、孤島のフィールドセンターで起こったいわば密室殺人であり、犯人となりうる人物はせいぜい5~6人であるにもかかわらず、捜査が遅々として進まない。シェトランド本島からの援軍が天候のせいで遅れたこともあるが、第二の殺人が起こっても、犯人の目星がつかないことに、まどろっこしさを感じる。
実は、この捜査の遅れはシェトランド4重奏を終結させるために必要な布石であると、読み終わって気づく。
ストーリーは緻密に構成され、納得させられるシリーズの最終章になっている。

本シリーズは、それぞれが独立した話として成り立っているのでどれから読んでも良いわけだが、できれば翻訳順に読むことが推奨される。ペレスとフランは第一作の『大鴉の啼く冬』で出会っていて、作を重ねるごとに親密になっていっている。第三作の『野兎を悼む春』では新米刑事のサンディが登場していて、本作では成長をした姿を見せている。翻訳された順に読む方が、そうした関係がスムースに感じられるだろう。→人気ブログランキング

【シェトランドを舞台にするミステリ】
アン・クリーブス著〈シェトランド四重奏〉
大鴉の啼く冬(07年7月)
野兎を悼む春(11年7月)
白夜に惑う夏(09年7月)
青雷の光る秋(13年3月) 
シャロン・J・ボルトン著
三つの秘文字  

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