ある秘密
フィリップ・グランベールの同名小説の映画化。
本作は、パリに暮らすユダヤ人一家の運命を、第二次世界大戦中、戦後の落ち着きを取り戻した頃、そして1985年の現在の三つの時代で描いた物語である。
ある秘密 ~愛に焦がれて~ Un secret 監督:クロード・ミレール 原作:フィリップ・グランベール『ある秘密』(新潮クレストブック) 脚本:クロード・ミレール/ナタリー・カルテル 音楽:ズビグニエフ・プレイスネル フランス 2007年 110分 |
父親のマキシムが家からいなくなったと、フランソワ(マチュー・アマルリック)に連絡が入る。フランソワは父親を探しに向かう途中で、自らの幼い頃を回想する。
マキシムの回想シーンはモノクロになっている。
第二次世界大戦が終結しヨーロッパの政情が落ち着きを見せ始めた頃のパリ。ひとりっ子で病弱なフランソワは、体を鍛えることが趣味の父親マキシム(パトリック・ブリュエル)と水泳が得意でモデルだった母親タニア(セシル・ド・フランス)とパリで暮らしていた。
両親は再婚同士。そうした両親の血筋を引いているにもかかわらず、虚弱なフランソワは、父親からは疎ましく思われていることを敏感に感じとっている。それゆえ、フランソワ自身にしか見えないスポーツ万能の兄の幻影を作り出していた。
フランソワが心を許せるのは、家の向かいでマッサージ店を営む優しいルイズ(ジュリー・ドパルデュー)だった。
ある日、彼は屋根裏部屋でぬいぐるみを発見する。そのぬいぐるみに両親が動揺する姿を見て、彼はルイズから両親の過去を聞き出すのだった。
両親の過去とは戦時下のパリで起ったことである。
第二次世界大戦中、タニアと結婚する前に、マキシムはユダヤ人のアンナ(リュディヴィーヌ・サニエ)と結婚していた。マキシムもユダヤ人であるが、むしろフランス人として生きていこうとしていた。そんなマキシムに対しアンナの両親は批判的であった。
アンナとマキシムの間に生まれたシモンは、スポーツ万能で誰もが一目おく両親自慢の息子であった。
マキシムは、こともあろうか、二人の結婚式で出会ったアンナの弟の妻タニアの健康美に惹かれた。このマキシムの邪念が、悲劇を引き起こしたそもそもの元凶である。
ナチスのユダヤ人弾圧が日に日に激しくなっていくなか、タニアの夫は戦地に赴く。一方、夫に疑惑を持ち始めたアンナは、情緒不安定になっていく。
いよいよ、パリでユダヤ人として暮らすことが困難になり、マキシムたちはナチスの目の届かない田舎に脱出することになった。ところがマキシムたちに遅れてパリを経ったアンナとシモンの身に、取り返しがつかないことが起こってしまう。
アンナは夫とタニアが睦まじくすることに耐えられなかった。そんな生き地獄で暮らすよりは、いっそナチスに捕まった方がまだましと考えたかもしれない。また夫が溺愛するシモンを巻き込んでしまうことは夫への復讐であったかもしれない。
ぬいぐるみはタニアが誕生日プレゼントとしてシモンに贈ったものだった。
一家を襲った悲劇は、マキシムの抑えきれない欲望が引き金になった。→人気ブログランキング
【セシル・ド・フランス出演作品】
『少年と自転車』(12年)
『ヒアアフター』(10年)
『シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
『ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
『モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
『スパニッシュアパートメント』(02年)
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