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2013年5月

2013年5月28日 (火)

シンプル・プラン スコット・B・スミス

オハイオ北部の町。
雪の中で墜落した飛行機に積まれた440万ドルを見つけた主人公のハンクと兄のジェイコブとその友人のルーの3人は、ほとぼりが冷めるまで待って、山分けすることにした。
3人が車に戻ると保安官がいた。ジェイコブがつい口を滑らせ飛行機のことを言いかけるが、なんとか誤魔化して事なきを得る。しかし話はそう単純にいかない。
Image_20201208094501 シンプル・プラン
スコット・B・スミス/近藤純夫訳
扶桑社ミステリー文庫
1994年

なにかまずいことが起こったら、金を燃やすという条件で、ハンクが金を預かることになる。
家に帰るとハンクは臨月間近の妻サラの意見を聞こうとするし、ルーは同棲相手の女に億万長者になったと話す。金のことを3人以外の誰にも話してはいけないという約束は、こうして早々と破られる。その後、問題が持ち上がるたびにハンクはサラの助言を求めるようになる。サラは金を手にしたいとの強い願望がある。

ジェイコブは定職を持たない独り者。ルーも仕事らしい仕事はしておらず、ふたりはその日暮しのような生活をしていた。そんな人物が、半年も待てるはずがない。

金のことを他人に知られないようにジェイコブとハンクは殺人を犯してしまい、事故死に見せかけることに成功する。ところが、ジェイコブがこの事件をルーに話してしまい、ルーは早く金を渡せとハンクをゆするようになる。
金のことがばれないことを最優先させ、辻褄を合わせるために、ハンクの犯罪はエスカレートして行くのだった。

普通の人間が大金が目の前にちらついたことで、普通でなくなっていく過程が無理がなく描かれている。伏線がそこかしこに敷かれ、あとにつながっていく展開が見事で、ついのめり込んでしまう。
本書はスコット・スミスの処女作。発刊当時、本書に対する評価は賛否両論にわかれたという。スティーヴン・キングがTVで「その年のベスト・サスペンス」と本書を絶賛したとのこと。→人気ブログランキング

シンプル・プラン(映画 1998年)
シンプル・プラン/スコット・スミス/扶養社ミステリー文庫/1994年

2013年5月23日 (木)

ジェーン・エア

シャーロット・ブロンテの同名小説の映画化。『ジェーン・エア』は何回も映画化され、舞台劇としても上演されている。監督は南米の過酷な移民の生き様を描いた『闇の列車、光の旅』(2009年)の日系アメリカ人キャリー・フクナガ。

Photo_20201225084401ジェーン・エア
Jane Eyre
監督:キャリー・フクナガ
脚本:モイラ・バフィーニ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
イギリス  アメリカ  2011年 120分

ジェーン・エアは自己主張の強い少女。
両親が亡くなり、伯父に引き取られるがその伯父も他界し、オバにいじめられる日々を送っていた。よくある「継母もの」の展開で始まる。

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ジェーンは寄宿学校に入れられる。彼女を理不尽な目に合わせるようにと、オバは寄宿舎長に賄賂を払ったという、おまけつき。その賄賂が効いて、ジェーンはいじめられっぱなし。彼女はそうした過酷な環境に耐えて勉学に励み、ついに寄宿学校の教師になり、やがて寄宿舎を出る。
寄宿舎の環境の悪さは、シャーロット・ブロンテが実際に経験したことらしい。
この当時の家庭教師は、上流階級から転落した女性が多く、なかには素姓が怪しい女性も混じっていたとかと、本作中ではなっている。

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そして、ジェーン(ミア・ワシコウスカ)はソーンフィールド館に住み込みの家庭教師として雇われる。
ジェーンの家庭教師ぶりは上々で、女中頭のフェアファックス夫人(ジュディ・デンチ)の覚えも良く、ジェーンはささやかな幸せを見出した。

屋敷の主ロチェスター(マイケル・ファスベンダー)は、いつも不機嫌で高飛車な男。ところが、彼は雛には稀なジェーンの聡明で毅然とした態度に惹かれていく。
ある日、館に逗留した男が夜中に背中を刺される事件が起こる。さらに館ではボヤ騒ぎがあり、館にはいよいよもって尋常ならざる秘密がありそうだ。
ジェーンとロチェスターは、「お互い美男美女じゃないけれど」などと言いながら愛を育んでいく。美男美女じゃないというのは、まったくその通りで、額が後退しかけたロチェスターは、もう少し福のある人物に演じて欲しい。ミア・ワシコウスカの美人でないが品のある容姿は、ジェーンにぴったりの役どころである。女中頭のジュディ・デンチがいるから本作は締まる。

ついに、ふたりは結婚式を挙げるに至るが、ロチェスターは既婚者だったという仰天の事実が判明する。
理由は父親の事業の資金繰りのために政略結婚させられたというもの。結婚後、妻は発狂し凶暴になり、館に幽閉させられていたのだ。幽閉が奉公人たちにバレなかったとは信じがたいが、それともソーンフィールド館の公然の秘密で、ジェーンか知らないだけだったのか。

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裏切られたジェーンは館を飛び出し、飲まず食わずで、瀕死の状態でたどり着いたのが、若い牧師と二人の妹が暮らす家。九死の一生をえたジェーンは、体調が戻ると、農家の子供たちを教える教職につく。そんなジェーンに転機がおとずれる。叔父の遺産が転がり込んだのだ。「幸福は金で買えないが、不幸は金で解決されることがある」とは、ヒッチコックの『サイコ』(1960年)のなかで娘のために土地を買って大金を払った初老の男が口にする言葉。ともかく大金があればなんとかなる。
天涯孤独の身となったジェーンは、その遺産を牧師兄妹と分配し、4人で家族として暮らすことを提案する。ところが、牧師はジェーンに求婚する。あくまで姉弟としての関係でいたいジェーンは、己の愛する人はロチェスターと思い直し、ソーンフィールド館を訪ねることにする。

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館はロチェスターの妻に放火された半焼し妻は焼死していたが、女中頭がジェーンを暖かく迎えてくれた。そして失明したロチェスターと再開を果たすというハッピーエンド。

本作は、だいぶ昔に大いに流行った『少女』とか『なかよし』に掲載されていた少女漫画のストーリーそのもの。というより、その頃の漫画家がヨーロッパのこの手の小説をパクって、似たようなストーリーの少女漫画を量産したのだろうね。
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【キャリー・フクナガ監督の作品】
闇の列車、光の旅』(2010年)
ジェーン・エア』(2011年)

2013年5月19日 (日)

ビッグ・ドライバー  スティーヴン・キング

本書には・キングの『Full Dark.No Stars』に収録されている4編から、女性が主人公の『ビッグ・ドライバー』と『素晴らしき結婚生活』が収録されている。残りの2編は『1922』(文春文庫 2013年1月)に収録されている。著者の話の運びのうまさが光る。
あとがきによれば、『素晴らしき結婚生活』は映画化権が買い取られていて、著者がすでに脚本を書き上げているという。
Photo_20201116081801ビッグ・ドライバー
スティーヴン・キング
高橋恭美子 風間賢二 訳
文春文庫 2013年

『ビッグ・ドライバー』
講演を終えた小説家のテスは、主催者に教えてもらった道を車で帰宅する途中、パンクしてしまう。車のタイヤを交換してやろうと近寄ってきた大男に、暴行を受けて殺されかけ、暗渠に放置された。そこには女性の腐乱死体がふたつあった。ほうほうの体で自宅に逃げてきたテスは身に降りかかった不幸を嘆き悲しむ間もなく、不安定な精神状態にもかかわらず、暴行殺人犯を野放しにしておけないと捨て身の行動を起こす。
愛猫や車のナビ、小説の登場人物、犬、果ては死人までが主人公と会話しながら物語が進むが、違和感はない。彼らは恐怖にうち震えるテスの心の声なのだ。
テスのパンティがヒッチコックのいうマクガフィンとして使われている。

『素晴らしき結婚生活』
ダーシーは40歳代後半の専業主婦、夫は几帳面で真面目な会計士。息子は友人と会社を起こし軌道に乗りつつあり、娘は来年結婚する予定。平和でまずまずの結婚生活だったといえる。
ところがある日、TVのリモコンが動かなくなったことから、歯車が狂う。ダーシーは夫の仕事部屋に単三電池を探しに入った。そこで彼女が見つけたものは、猥雑なエロ本以外に、彼女が夫と暮らし続けるために何かの形で方をつけなければならないとんでもない品物であった。
日常生活の細々としたことがユーモアを交えて描写され、息が詰まる深刻なストーリーが淡々と進んでいく。→人気ブログランキング

キャリー   キャリーDVD
ミザリー
ファインダー・キーパーズ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
アンダー・ザ・ドーム1~4/文春文庫
セル 上下 新潮文庫
ダークタワー IV1/2 鍵穴を吹き抜ける風
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 下
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 上
ダークタワー III 荒地 下
ダークタワー III 荒地 上
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
幸運の25セント硬貨
ビッグ・ドライバー
1922
第四解剖室
神々のワード・プロセッサ
夕暮れを過ぎて
いかしたバンドのいる街で
スタンド・バイ・ミー(DVD)
ジェラルドのゲーム
ドランのキャデラック
深夜勤務(ナイトシフト1)はしがき
深夜勤務(ナイトシフト1)

書くことについて
死の舞踏 /ちくま文庫/2017年

2013年5月15日 (水)

ウェブはバカと暇人のもの  中川淳一郎

ネットのニュースサイトの編集者であった著者は、ネット流れている情報を知り尽くしている。著者の目でみるネットは次のようなものである。
ネットの使い方を「頭のいい人」「普通の人」「バカ」に分けて、主に「普通の人」「バカ」のことを論じている。
「普通の人」「バカ」の関心事は、あくまでB級テイストなものである。
ネットは暇つぶしの場所であり、人々が自由に雑談する居酒屋のようなところ。そこに長居するのは、暇人である。
Photo_20210816082801ウェブはバカと暇人のもの
中川淳一郎
光文社新書
2009年

ちなみに、著者が断言するネットで受けるねたは以下である。
①話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
②身近であるもの(含む、B級感があるもの)
③非常に意見が鋭いもの
④テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフートッピックスが選ぶもの
⑤モラルを問うもの
⑥芸能人関係のもの
⑦エロ
⑧美人
⑨時事性があるもの

ネットは本来一緒にいるべきでない両者を、同じ土俵に上げているようなところがある。出会わなかったであろう人と人が交流できるようになって、「すばらしき交流」など生み出すわけがなく、「うんざりするようなドロドロの争い」を生み出す。

ネットはプロの物書きや企業にとってもっとも発言に自由度がない場所である。ネットが自由な発言の場だと考える人は失うものがない人だけである。豊崎由美も『ニッポンの書評』(光文社新書、2011年)で、同じような指摘をしている。

ネット関連の本には、ネットは「農業革命」「産業革命」、それに続く「情報革命」であると書かれている。そしてこれからは特別な時代だと期待されている。そんなことを言うのはネットがわかっていないからだ。ネットはとんでもなく便利なツールである。しかし、ネットによって人生が変わることはない。

著者の意見に賛同する。
テレビ朝日の朝番組では、ヤフーの「リアルタイム検索」のキーワードを紹介するという安易な番組作りをしている。所詮、多くの人はネットを「普通の人」か「バカ」の使い方をしているのだから、そうしたことがまかり通るのだろう。ネットもテレビもそう変わりがないということだ(2009/6/2) 。→人気ブログランキング
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2013年5月14日 (火)

ミレニアム2 火と戯れる女

前作『ドラゴン・タトゥーの女』では、リスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)よりもミカエル・ブルムクヴィスト(<ミカエル・ニクヴィスト)が登場する場面が多かった。本作ではリスベットが大活躍する。
スケールの大きなストーリーに魅了される一本。

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監督:ダニエル・アルフレッドソン
脚本:ヨナス・フリュクベリ
原作:スティーグ・ラーソン
スウェーデン デンマーク ドイツ 2009年 130分 

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海外放浪の旅からストックホルムに戻ってきたリスベットは、自らの保護観察記録書を確かめる目的で、かつてレイプされその仕返しに下腹部にタトゥーを刻んだ後見人のヴュルマンの部屋に忍び込みんだ。少女時代に起こした障害事件で精神病院に強制入院させられたリスベットは、退院後は後見人の監視下で生活せざるをいない立場にある。リスベットは机の引出しにあった拳銃でヴァンゲルを脅し、「問題ない」と書くよう脅した。これがリスベットにとって不覚であった。ヴァンゲルが復讐を企てたのだ。

その記事は、売春規制の法案作成に携わった役人や警察官、弁護士、ジャーナリストなどの名前が連なったスキャンダラスなものだった。やがてダンと恋人が銃殺され、発見された凶器はリスベットの指紋のついたヴァンデルの拳銃であった。直ちに、警察はリスベットを容疑者として指名手配した。

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リスベットの無罪を信じるミカエルは彼女に接触し、ふたりで事件の調査を進めるが、少女買春の被害者達は報復を恐れて口を開こうとしない。彼女達が恐れているのは「ザラ」という人物であった。
何十年も前にスウェーデンに亡命したソ連のスパイが、冷戦時代にはもてはやされた。冷戦が終結したあと、スパイの存在の隠蔽をもくろむ公的機関の弱みに漬け込んで、その人物はモンスター化していった。それがザラだった。

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やがてリスベットはザラの居場所を突き止め単身乗り込んでいく。
そして、バイクに乗った悪党達や、巨漢の金髪男がリスベットを待ち受ける。

リスベットは華奢ながら、持ち前の感のよさと敏捷さで、仕掛けられた罠を回避し敵の攻撃をかいくぐっていく。リスベット自らが罠を仕掛けるという大胆さで巨悪と戦う痛快な終盤が待っている。
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→『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

2013年5月13日 (月)

アイリス

実在の作家アイリス・マードックを、若い頃はケイト・ウィンスレットが、アルツハイマー病を患った晩年はジュディ・デンチが鬼気迫る演技で演じている。若い頃と晩年が交互に映し出される。
ジョンを演じたジム・ブロードベントがアカデミー賞助演男優賞を受賞した。
ジム・ブロードベントは『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(11年)で、本作と似た役柄のサッチャー首相の夫デニスを演じた。
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Iris
監督:リチャード・エアー
脚本:リチャード・エアー/チャールズ・ウッド
原作:ジョン・ベイリー
音楽:ジェームズ・ホーナー
イギリス  アメリカ  2001年  91分 

 

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自由奔放で才能あふれる魅力的なアイリスの夫は生半可な男には務まらない。
心が広い、男女関係に疎い、そういうことに気がつかない純粋な、言い方を変えれば鈍感な男に限る。
オックスフォード大学の講師であるジョンは、こうした条件を兼ね備えたアイリスにぴったりの男である。都合のいいことに6歳年下のジョンはアイリスに、一目惚れしてしまう。
アイリスもジョンに惹かれるようになり、ふたりは結婚する。

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結婚してからもアイリスの奔放さは変わらない。アイリスの男性関係に悩まされるが、ひたすら彼女を愛するジョンは苦悩を乗り越えていく。
そんなアイリスはイギリスを代表する小説家として活躍するようになる。

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そして40年後、年老いたアイリスにアルツハイマーの症状が現れる。病気の進行は予想以上に早く、知的だったアイリスがどんどん朽ちていく。そのアイリスをジョンは献身的に介護しようとするが、彼も寄る年波には勝てず、アイリスを施設に預けることにする。

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夫婦の永遠の愛が描かれた感動の伝記ドラマ。
ジョンは若い頃はアイリスの奔放な男性遍歴に悩まされ、老いてからはアルツハイマー病を患った彼女を介護する。傍から見れば、アイリスに振り回された人生に見えるが、彼にとってはアイリスと一緒にいられることが至福だったのだろう。

湖だか池だかで泳ぐシーンが数囘出てくるが、水が少し濁っている。『裏切りのサーカス』でも同じようにあまりきれいでない淡水で泳ぐシーンがあるが、イギリスでは少しくらい濁った水は気にしないのかもしれない。
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【ケイト・ウィンスレット出演作品】
おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
愛を読むひと』The Reader/2008年
リトル・チルドレン』Little Children/2006年
エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年 
アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年

2013年5月 9日 (木)

イン・ハー・シューズ

仲の良い姉と妹の仲違いが、素行の悪い妹の更生を促し姉の婚約の引き金になり、ひいては父と祖母の積年の不仲を解消し、家族の絆を取り戻すという、瓢箪から駒のヒューマンドラマ。靴が、姉と妹そして祖母を結びつけ、詩で締めくくられるストーリー。
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In Her Shoes
監督:カーティス・ハンソン
脚本:スザンナ・グラント
音楽:マーク・アイシャム
アメリカ 2005年 131分

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弁護士の姉(トニ・コレット)は、ストレスの解消に履きもしない靴を何足も買い込んでいて、太り気味を気にするキャリアウーマン。一方、妹(キャメロン・ディアス)は、スタイル抜群で女を武器に生きてきところがあり、未だに定職に就けないでいる不良娘。正反対の姉妹だが、共通点は自分に自信が持てないことと、靴のサイズが同じこと。姉妹の母親は早くに亡くなり、父親は後妻と暮らしている。

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継母から実家を追い出された妹は、フィラデルフィアの姉のアパートに転がり込む。姉の服や靴を無断借用する妹は、案の定、恋人も借用してしまい、それを知った姉は妹をアパートから追い出してしまう。

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行き場を失った妹は、祖母(シャーリー・マックレーン)を訪ねてマイアミの高齢者用住宅に向かう。ここから画面の色調は明るくなり、ストーリーも少しずつ好転しはじめる。色気を振りまいて老人男たちを悩殺する妹の受けはいい。妹は、祖母の勧めで老人の介護に携わるようになり、アルコールやタバコと縁を切り、まっとうな生き方に目覚めていく。彼女は自らが介護を担当する盲目の元大学教授の勧めで詩の朗読を練習し、コンプレックスである識字障害を克服するのだった。

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識字障害(ディスレクシア、Dyslexia)は、知的能力に異常がないにもかかわらず、文字の読み書きに困難をきたす障害とのこと。アメリカでは15%の人がこの障害を持つという驚きのデータがある。

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一方、姉は人間らしさを取り戻そうと仕事を辞め、犬の散歩のアルバイトをはじめる。そんな姉に、かつての法律事務所の同僚が声をかけ、ふたりの関係は婚約するまでに発展する。ところが、トラブルメーカーの妹の話題を避け完全には心を開かない姉に男は戸惑い、婚約は暗礁に乗り上げてしまう。ここで祖母が一役買い、ストーリーはハッピーエンドに向かう。
コメディー、ラブストーリー、ヒューマンドラマが入り混じった不思議な魅力を醸し出す作品である。
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2013年5月 6日 (月)

ファンシイダンス

原作は、岡野玲子による漫画。『プチフラワー』(1984年から1990年)に連載され、1989年の第34回小学館漫画賞を受賞した。
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監督:周防正行
脚本:周防正行
原作:岡野玲子
音楽:周防義和
日本   1989年   101分

ロックバンドのボーカリスト、大学4年生の塩野陽平(本木雅弘)は寺の跡取り息子。
跡を継ぐ決意をした彼は、頭の左半分を刈り上げて、ライブで『若者たち』を踊りながら歌う。世俗社会との決別の場面だ。
とは言っても、陽平の動機は不埒、禅寺で1年間修行して、住職の免許を手にしようという軽い気持ちで寺に入ることにしたのだ。一緒に寺に入ったのは、修行を積んで立派な僧侶になることが目標の弟の郁生(大沢健)、裕福な寺の娘を恋人に持つ英俊(彦摩呂)、母親に説得され嫌々ながら修行にきた珍来(田口浩正)、新入りはこの4人。

彼らを待ち受けていたのは、理不尽な古参の光輝 (竹中直人)たちの仕打ちと地獄ような修行の日々であった。しかし、慣れてみれば寺の裏事情が見えてきて、偉そうな顔した古参たちは、すきを見て世俗と変わらない生活を送ろうとしていた。

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やがて、かつてのバンド仲間のアツシが社員研修で寺にやってきて、陽平の恋人だった真朱(鈴木保奈美)が元彼のキリスト教男(大槻ケンヂ)とつきあい始めたと聞かされ、陽平は不安になる。そんな陽平の前に真朱が現れ、いちゃついているところを光輝に見つかってしまい、大目玉を食らう。そして真朱は長くは待てないと言うのだった。

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適当に修行をしてなにかと問題を起こしてきた陽平であったが、どういうわけか修行僧のリーダーを命じられる。そして、真朱ら観客が見守るなか、修行僧同士の問答戦「法戦式」に望む。問答戦をなんとか乗り切って晴れて下山できると思いきや、ボケ気味の老師から「陽平ちゃん、まだ修行が足りないよ」と言われ、彼は寺に残るのだった。

それでいい、陽平にはもっと修行を積んで徳のある僧侶になってもらわないと、人生を甘くみているからね。

周防監督は1984年に、にっかつロマンポルノ『変態家族 兄貴の嫁さん』で監督デビューした。小津安二郎監督をリスペクトした作品だという。
最近は『それでもボクはやっていない』(07年)や『終の信託』(12年)と、裁判がテーマのガチガチの社会派作品を手がけている。本作や『シコふんじゃった。』(91年)、『Shall We ダンス?』(96年)などのコメディタッチの作品に抜群の才能を見せていたので、このジャンルの作品に再チャレンジして欲しい。→人気ブログランキング

2013年5月 3日 (金)

モンテニュー通りのカフェ

電話がかかってくると、「クソッ、誰だ」と思う人と「誰かしら」と心ときめく人がいる。セシル・ド・フランス演じる主人公のジェシカは陽気で前向き、「誰かしら」と思うタイプだ。

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Fauteuils d'orchestre
監督:ダニエル・トンプソン
脚本:ダニエル・トンプソン/クリストファー・トンプソン
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
製作国:フランス 2006年 106分

モンテニュー通りはパリで一番輝いている場所。
そこにあるカフェには、シャンゼリゼ劇場のピアノ演奏会、ホテルで行われるオークション、コメディ・デ・シャンゼリゼで行われる芝居、などの関係者が集う。コーヒーを飲み食事をしたり、出前注文がカフェに寄せられる。
そのカフェに雇ってもらおうとジェシカは掛け合い、女は雇わないと断られるものの、押しの一手でなんとか潜り込む。

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第一線を退くかどうかで悩んでいる世界的に有名なピアニスト、チャンスをつかもうと躍起になっている女優、かつて買い集めた美術品をすべて競売にかけようとする妻を亡くした老紳士とその息子、歌手になれなかった劇場の女性管理人。

そうした人たちがくりひろげる悲喜こもごもの人間模様に、ジェシカが絡んでいく。そしてジェシカに関わった者はなにかのかたちで癒されていくのだ。

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シュザンヌ・フロンの遺作となった本作で、主人公ジェシカを愛情たっぷりで育てた祖母役を演じた。彼女も明るく陽気な役柄である。
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2013年5月 1日 (水)

裏窓

カメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュアート)は、脚の骨折でアパートの中での車椅子生活を余儀なくされている。彼の気晴らしは窓から見える隣のアパートの住人たちを覗き見すること。窓から外を見ると、まさにそれは小宇宙、隣のアパートが丸見えなのだ。
Photo_20201222082901裏窓
Rear Window
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
原作:ウィリアム・アイリッシュ
音楽:フランツ・ワックスマン
アメリカ  1955年 112分

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部屋からは、新婚ほやほやの夫婦、レッスンに余念がないセクシーなバレリーナ、男を追い求める孤独な未亡人、ピアノを弾く音楽家が見える。多くの作品でどこかに姿を見せるヒッチコック監督は、本作ではピアニストの部屋で時計のネジを巻いている。
問題は夫が粗野で、口論が耐えないセールスマンの夫婦である。

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ある日、セールスマンの妻の姿が見えなり、ジェフは夫が殺害したのではないかとの疑惑を抱く。
看護婦のステラ(セルマ・リッター)も恋人のリザ(グレース・ケリー)も、覗き見はモラルに反すると思っている。肉眼ならまだしも双眼鏡や望遠レンズを使って盗み見することは、犯罪だと言う。はじめはジェフの妄想と取り合わなかったふたりだが、彼が次々に挙げる状況証拠に殺人の疑惑を抱くようになる。そうなるとモラルもなにもあったものではなく、ジェフは双眼鏡や望遠レンズを駆使して四六時中覗くことになる。もちろんふたりも興味津々で、話題はもっぱらセールスマン風夫婦のこと。
この覗きも殺人の疑惑もどんどんとエスカレートしていくところが本作の見所。

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ジェフは友人の警官に捜査を依頼するが、証拠がないとまともに取り合ってもらえない。警察が動かないなら自分たちで証拠をつかもうと、リザはセールスマン風の部屋にしのびこもうとするのだった。

画面に映るのは、部屋から見える隣のアパートで起こっていることと、部屋で繰り広げられるジェフとリザやステラや警官とのやり取りだけである。まるで舞台劇のように計算された画面が組み合わされてストーリーが進んでいく。
本作は、第27回アカデミー賞の監督賞、脚本賞、撮影賞(カラー部門)、録音賞にノミネートされた。
本作は、アメリカン・フィルム・インスティチュート (American Film Institute, AFI)が選ぶ「アメリカ映画ベスト100」の42位である。 →人気ブログランキング

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