ジェーン・エア
シャーロット・ブロンテの同名小説の映画化。『ジェーン・エア』は何回も映画化され、舞台劇としても上演されている。監督は南米の過酷な移民の生き様を描いた『闇の列車、光の旅』(2009年)の日系アメリカ人キャリー・フクナガ。
![]() Jane Eyre 監督:キャリー・フクナガ 脚本:モイラ・バフィーニ 音楽:ダリオ・マリアネッリ イギリス アメリカ 2011年 120分 |
ジェーン・エアは自己主張の強い少女。
両親が亡くなり、伯父に引き取られるがその伯父も他界し、オバにいじめられる日々を送っていた。よくある「継母もの」の展開で始まる。
ジェーンは寄宿学校に入れられる。彼女を理不尽な目に合わせるようにと、オバは寄宿舎長に賄賂を払ったという、おまけつき。その賄賂が効いて、ジェーンはいじめられっぱなし。彼女はそうした過酷な環境に耐えて勉学に励み、ついに寄宿学校の教師になり、やがて寄宿舎を出る。
寄宿舎の環境の悪さは、シャーロット・ブロンテが実際に経験したことらしい。
この当時の家庭教師は、上流階級から転落した女性が多く、なかには素姓が怪しい女性も混じっていたとかと、本作中ではなっている。
そして、ジェーン(ミア・ワシコウスカ)はソーンフィールド館に住み込みの家庭教師として雇われる。
ジェーンの家庭教師ぶりは上々で、女中頭のフェアファックス夫人(ジュディ・デンチ)の覚えも良く、ジェーンはささやかな幸せを見出した。
屋敷の主ロチェスター(マイケル・ファスベンダー)は、いつも不機嫌で高飛車な男。ところが、彼は雛には稀なジェーンの聡明で毅然とした態度に惹かれていく。
ある日、館に逗留した男が夜中に背中を刺される事件が起こる。さらに館ではボヤ騒ぎがあり、館にはいよいよもって尋常ならざる秘密がありそうだ。
ジェーンとロチェスターは、「お互い美男美女じゃないけれど」などと言いながら愛を育んでいく。美男美女じゃないというのは、まったくその通りで、額が後退しかけたロチェスターは、もう少し福のある人物に演じて欲しい。ミア・ワシコウスカの美人でないが品のある容姿は、ジェーンにぴったりの役どころである。女中頭のジュディ・デンチがいるから本作は締まる。
ついに、ふたりは結婚式を挙げるに至るが、ロチェスターは既婚者だったという仰天の事実が判明する。
理由は父親の事業の資金繰りのために政略結婚させられたというもの。結婚後、妻は発狂し凶暴になり、館に幽閉させられていたのだ。幽閉が奉公人たちにバレなかったとは信じがたいが、それともソーンフィールド館の公然の秘密で、ジェーンか知らないだけだったのか。
裏切られたジェーンは館を飛び出し、飲まず食わずで、瀕死の状態でたどり着いたのが、若い牧師と二人の妹が暮らす家。九死の一生をえたジェーンは、体調が戻ると、農家の子供たちを教える教職につく。そんなジェーンに転機がおとずれる。叔父の遺産が転がり込んだのだ。「幸福は金で買えないが、不幸は金で解決されることがある」とは、ヒッチコックの『サイコ』(1960年)のなかで娘のために土地を買って大金を払った初老の男が口にする言葉。ともかく大金があればなんとかなる。
天涯孤独の身となったジェーンは、その遺産を牧師兄妹と分配し、4人で家族として暮らすことを提案する。ところが、牧師はジェーンに求婚する。あくまで姉弟としての関係でいたいジェーンは、己の愛する人はロチェスターと思い直し、ソーンフィールド館を訪ねることにする。
館はロチェスターの妻に放火された半焼し妻は焼死していたが、女中頭がジェーンを暖かく迎えてくれた。そして失明したロチェスターと再開を果たすというハッピーエンド。
本作は、だいぶ昔に大いに流行った『少女』とか『なかよし』に掲載されていた少女漫画のストーリーそのもの。というより、その頃の漫画家がヨーロッパのこの手の小説をパクって、似たようなストーリーの少女漫画を量産したのだろうね。
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