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『1922』 スティーヴン・キング

1922 (文春文庫)
1922 (文春文庫)
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スティーヴン キング (横山啓明 中川聖 訳)
2013年1月

4編が収録されている『Full Dark,No Stars』(2010年)から、本書には『1922』『公正な取引』の2編が収録されている。『1922』は長編に迫る長さ、一方『公正な取引』は短編になる。どちらも中年の男が主人公で、どんどん悲惨な状況になっていくストーリーである。『Full Dark,No Stars』の残り『ビッグ・ドライバー』『素晴らしき結婚』の2編は、『ビッグ・ドライバー』(2013年4月 文春文庫)に収録されていて、どちらも中年の女性が主人公の物語である。
なにしろ話の運びが巧妙で文章がうまい。

『1922』
1922年に妻を殺した主人公ジェイムスが手紙に真相を書いて明かす形で始まる。
彼にはもともと80エーカーの土地があり、妻が父親から相続した100エーカーの土地と合わせて、農業を続けようと思っていた。ところが妻は、土地を売って都会で暮らしたと言い出す。あるいは180エーカーの土地を全部売って金を半分ずつ分配し、離婚しようと言い出した。夫婦喧嘩が耐えなくなった。息子のヘンリーは都会に出て行くのを嫌がった。息子はは妻が引き取るという。そんなある日、ヘンリーが母親に逆らって殴られた。
ジェイムスはヘンリーを説得し妻を殺すことを同意させる。
いよいよ決行する日がきた、土地を売ることに賛同妻を喜ばせ、祝杯をあげる。妻はワインを2杯飲むと止まらなくなる。酔った妻は娼婦のように下品になった。
泥酔した妻を肉切り庖丁で首を切って殺そうとしたが、思いのほか手こずった。そして遺体を古井戸に投げ込んだ。
この時点から、ジェームスに次々と不幸が襲っていく。

『公正な取引』
癌に侵され希望を失っていた50歳のストリーターに、癌を治してやると言って、ずんぐりした男が現れる。ストリーターが憎む人物を教えるようにという。ストリーターは小学校時代からの親友の名前を挙げる。
親友はストリーターよりハンサムでスポーツ万能、なによりストリーターが付き合っていた女性を奪った。その後も親友の人生は順風満帆に見えた。今の暮らしにしたって、ストリーターよりはるかに裕福で、子供達も優秀で幸せそうである。
そして数日後病院を訪れたストリーターの癌は小さくなっていた。
ずんぐりした男が言ったように、彼は体調がどんどん良くなり、代わりに親友は不幸に見舞われていく。
その対比する状況の描き方が巧みである。

著著者は異様な状況下における普通の人々を語ることに興味があると、『ビッグ・ブラザー』のあとがきで書いているように、本書でも普通の人々の異様な状況下におけるエスカレートする姿が描かれている。残酷なことが容赦なく降りかかる主人公たちに共感を持てないところが、本書の2作品の特徴だと思う。→ブログランキングへ

1922
ビッグ・ドライバー
『幸運の25セント硬貨』

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