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2013年6月

2013年6月23日 (日)

『ドライヴ』

ドライヴ [DVD]
ドライヴ [DVD]
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Drive
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ホセイン・アミニ
原作:ジェイムス・サリス
音楽:クリフ・マルティネス
アメリカ  2011年 100分
★★★★☆

主人公のドライバーは己の身に降りかかった火の粉を振り払っていく。彼には欲はなく、自らのせいで危険な状況におかれた母子を助けたい一心で行動する。ドライバー役のライアン・ゴズリングの冷静無比な演技が、この映画に静謐さを与えている。

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ドライバー(名前は明らかにされない)は、並外れた運転テクニックを持っている。昼は自動車修理工として働き、ときにアルバイトで映画のカースタントマンを務め、夜には強盗の逃がし屋をこなしていた。彼はアパートの同じ階に住むアイリーン(キャリー・マリガン)に思いを寄せるが、ほどなく服役していた夫スタンダード(オスカー・アイザック)が出所してきて話は動き出す。

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服役中に多額の借金を負ったスタンダードは、強盗を強要されていた。スタンダードに助けを求められたドライバーは、1回きりの約束で無償で運転手役を引き受けることにした。
ところが、首尾よく金を奪ったスタンダードが逃げようとしたときに、背後から撃たれ命を落としてしまう。奪った金100万ドルは組織の裏金で、何者かによる罠であることを知ったドライバーは、裏で操る黒幕を突き止めようと動き出す。
やがて、自動車修理工場の社長が無残な死体で発見され、ドライバーは愛するアイリーン母子と自らの身を守るため反撃に出る。

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ドライバーと刃物で向かい合った黒幕との決着が、駐車場のアスファルトに映る影だけで表現される場面が印象的だ。→ブログランキングへ

2013年6月21日 (金)

思秋期

失業中のジョセフ(ピーター・ミュラン)は激昂しやすい性格。
かっとして飼い犬を蹴って殺してしまい、ショーウィンドウのガラスを割り、バーでビリヤードに興じる若者たちに因縁をつけ殴りかかった。いつも怒りを抱えイライラしていて、酒を飲んでは暴れ、落ち込む生活を送っている。
Photo_20220128142801思秋期
Tyrannosaur
監督:パディ・コンシダイン
脚本:パディ・コンシダイン
イギリス  2011年  98分 

ある日、ジョセフはリサイクル・ショップで働くハンナ(オリヴィア・コールマン)にであう。はじめはハンナに突っかかるように接したジョセフだが、彼女と会うことで心の安らぎを感じるようになる。
ジョセフは、死が間近に迫った友人のために祈りを捧げてくれるように、信心深いハンナに頼む。

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本作に、「Tyrannosaur」という飛んでるタイトルをつけたのはなぜか?イギリス仕込みのユーモアだろうか。ティラノサウルスは、ジョセフが亡くなった妻につけたあだ名である。彼の妻は大柄で大食い、歩くと床がきしみ大きな音をたてた。糖尿病を患い、目が見えなくなり両足を切断したという。ジョセフはそんなあだ名をつけてしまったことを、後悔しているとハンナに話す。

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子供を産んで育てる、そんな平凡な暮らしを望んでいたハンナも闇を抱えていた。高級住宅地に夫とふたりで暮らす彼女は、経済的には恵まれていたが、夫婦の関係がうまくいっていない。夫は異常なくらい嫉妬深い。
そんなある日、ジョセフが亡くなった友人の葬式に着ていくスーツをハンナの店で見繕い、ネクタイをハンナに締めてもらうところを、ハンナの夫に見られてしまう。
そのことをきっかけに、悲惨な事態へとなっていく。
中年の恋愛の物語でもある。→人気ブログランキング
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2013年6月19日 (水)

レザボア・ドッグス

ギャングたちの宝石店襲撃は警察にばれていて、警察のイヌ探しでお互いが銃を向けあい、ついには引き金を引いてしまうというストーリー。
ストーリーと関係のない会話がそこかしこに入り込むものの、話の運びはスムースで斬新。これが、タランティーノのその後の作品にも見られるパターンである。女性は出てこない男だけのギャングストーリー。
タイトルのReservoir Dogsの意味は、掃き溜め(貯水池)の犬たち。
なお本作は、イギリスの雑誌『エンパイア』(2011年)が選んだインディペンデント(インディーズ)映画ベスト50のトップに輝いた。
Image_20201130152701レザボア・ドッグス
Reservoir Dogs
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
音楽:カリン・ラクトマン/主題歌:ジョージ・ベイカー「リトル・グリーン・バッグ」
アメリカ  1992年  100分

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不都合なことが起こったときに警察に素姓がばれないという理由で、ボスがメンバーを色で呼ぶことにした。ところが、Mr.ピンクはピンクは嫌だパープルにしてくれと駄々をこねる。『サブウェイ・パニック』(ジョセフ・サージェント監督 、1974年)でも、実行メンバーが色で呼ばれているとのこと。
メンバーを色のあだ名で呼ぶところは、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹著)にも出てきた。

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レストランで、タランティーノ演じるMr.ブラウンが、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」についてのしょうもない薀蓄をたれ、その横ではボスの手帳をMr.ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)が取り上げて、ボスが返せというのを返さない、そんな小学生のようなことをやっている。後に、タランティーノに対し、マドンナは「セックスの歌ではなくて、恋の歌よ」と書いたCDを彼に送ったという。
ボスが、「オレが食事代を払うから、お前たちはチップを1ドルずつ出せ」というと、Mr.ピンク(スティーヴ・ブシェミ)が嫌だという。マクドナルドではチップを払わないのに、レストランで払うのは変だと、Mr.ピンクが屁理屈をいう。高卒の女性の就職ナンバーワンの職業がウェートレスなのは、チップの実入りがバカにならないからだと誰かがいう。その構図を崩さないためにも譲歩しろという。結局、Mr.ピンクも1ドル払って決着する。
というようなストーリーと関係のない会話が交わされ、これから宝石店を襲撃する緊張感は微塵もない。

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彼らは警察が待ち伏せしていることを知らずに宝石店に押し入り、ふたりが射殺される。そのあと逃走用に奪った車の運転手にMr.オレンジが腹を撃たれ、後部座席に血まみれでのたうち回るMr.オレンジ(ティム・ロス)をその車に乗せて、Mr.ホワイトは待ち合わせの倉庫にたどり着く。そこにMr.ピンクが現れ会話が始まる。さらに、警官たちに銃を乱射したMr.ブロンド(マイケル・マドセン)が現れ、メンバーに紛れた警察のイヌ探しが始まる。ひと騒動あってからボスとその息子(クリス・ペン)が現れ、最後はMr.ピンクを除いて、お互いの銃で撃ちあって死んでしまうという結末。

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ストーリーと関係のない会話がプロットとうまく絡み合っていて、ラジオのDJのトークや流れる音楽もタランティーノ監督ならではの凝りよう。→人気ブログランキング

2013年6月15日 (土)

キッズ・オールライト

数ヶ月前に、アメリカで同性愛者カップルの子供4万5千人の人権が侵害されていると報道された。同性愛者カップルの婚姻は認められているが、彼らが育てる子供には、財産相続などの子供として当然与えられる権利が認められていないという。
一方、今年の6月に「同性愛の宣伝」を禁止する法案が、ロシア下院でほぼ全会一致で可決されたというニュースが流れた。ロシアの同性愛者に対する差別は相当なものらしい。
Photo_20210201082701<キッズ・オールライト
The Kids Are All Right
監督:リサ・チョロデンコ
脚本:リサ・チョロデンコ/スチュアート・ブルムバーグ
音楽:カーター・バーウェル/ネイサン・ラーソン/クレイグ・ウェドレン
アメリカ  2010年  104分 

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カリフォルニアに住む、レスビアン・カップルのニック(アネット・ベニング)とジュールズ(ジュリアン・ムーア)は、それぞれが人工授精で子どもを産んだ。ふたりにはニックが生んだ娘ジョニ(ミア・ワシコウスカ)18歳とジュールズが生んだ息子レイザー15歳がおり、とりあえず、問題なく暮らしていた。ふたりの子供は、素直に育っている。
ショートカットのヘアスタイルのニックは、医者として一家の家計を背負ってきた。ジュールズといえば、表立った仕事はしていないが、家事をこなしてきた。トラディショナルな夫婦の役割分担がされている。

大学に合格しこれから家を離れて暮らそうとしているジョニは、親たちに束縛されることに反発し始めている。
そして、機会に自分たちの生物学的父親、つまり精子提供者を知ろうと調べ始める。

やがて、精子提供者がポール(マーク・ラファロ)であることが判明する。
ポールは、オーガニック野菜を栽培し、その野菜を使ったメニューで人気のレストランを経営している。独身生活を送る気さくなポールにジョニとレイザーは打ち解けていき、ポールと子供たちの付き合いが始まる。

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一方、子供たちがポールと会っていることを知ったニックとジュールスは、ポールを食事に招くことにする。
このあたりから、ジュールズの異性に対する本能が目覚めて、ことはこんがらがり、レスビアンカップル瓦解の危機に陥ってしまうのだ。

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ところで、レスビアンカップルが親だと意外なことが起こる。
息子が友人とママたちの寝室の引き出しで見つけたのが、性具と男性のゲイのビデオ。
そのビデオを観ているところを、ママたちに見つかってしまう。
「レスビアンのビデオを観ればいいのに」と息子が言うと、ママたちの言い分は、「レスビアンビデオはストレートの女が演じているので、本物じゃない」という答え。何ともすごい会話だが、射精をもって完結する男性のゲイビデオは本物ということだろうか。それともレズビアンの女性は、腐女子が好むボーイズラブの実写版を好むということだろうか。→人気ブログランキング

2013年6月13日 (木)

パリ、テキサス

印象的なタイトルに秘められたささやかな謎が本作のテーマである。
Photo_20201203084701パリ、テキサス
Paris,Texas
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:L・M・キット・カーソン/サム・シェパード
音楽:ライ・クーダー
西ドイツ フランス  1984年  147分

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テキサスの砂漠が空撮され、炎天下を歩く主人公トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)が映される。やがて、彼は熱射病にやられ病院に収容される。
兄が倒れたとの知らせを聞いて、はるばるサンフランシスコから迎えにきた弟に、トラヴィスは口を開こうとしない。
なぜ彼は4年前に突然家を出て行方知れずになってしまったのか。
弟は飛行機を嫌がる兄を、仕方なくレンタカーで自宅に連れて帰ることにする。その道すがら彼が初めて口にした言葉が「パリ」だった。こうしたストーリーの展開にスティール・ギターの音色が悲しげに響き渡る。

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タイトルの「パリ、テキサス」はフランスのパリではなく、テキサス州の「パリ」という名前の地域のことで、以前トラヴィスが通販で買った土地があるところ。パリという地名が、妻のジェニー(ナスターシャ・キンスキー)に似合いそうだからという理由で土地を買った。

サンフランシスコの弟の家には、4年前に別れたトラヴィスの7歳の息子ハンターが暮らしている。
ハンターは、突然現れた父親に戸惑った。
トラヴィスが現れたことで、弟の妻は息子同然に育ててきたハンターが、トラヴィスに連れて行かれるのではないかと不安である。一方、弟はこれからのことは親子ふたりが決めることだと思っている。

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ここで、ホームムービーが映され、そこにはトラヴィス夫妻とハンター、弟夫婦が楽しそうに映っている。ホームムービーは幸せだった過去を思い起こさせるアイテムとして効果的だ。こうしたことで、ハンターは父と次第に打ち解けていく。
ハンターは自分を産んでくれた母親に会いたい。トラヴィスも妻に会いたい。
そして、ふたりはジェニーを捜しにテキサスに向かうのだった。

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本作はロードムービーの金字塔と評価されている。
弟がトラヴィスをテキサスからサンフランシスコに連れもどる過程と、トラヴィスが息子をとともに妻を捜しにサンフランシスコからテキサス州ヒューストンに向かう過程があそれである。

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トラヴィスはのぞき部屋にいたジェニーを探し出す。ここでトラヴィスとジェニーの間で起こったことが明らかにされ、謎が解ける。
ハンターを母親に逢わせたあと、ふたりがやっていけるかを見定めて、トラヴィスは去っていく。

ヴィム・ヴェンダース監督と脚本サム・シェパードのコンビで作った『アメリカ、家族のいる風景』(05年)は、本作に似たテイストが漂う。→→人気ブログランキング

【ロードムービー】サイト内リンク
星の旅人たち』The Way/10年
リトル・ミス・サンシャイン』Little Miss Sunshine /06年
サイドウェイ』Sideways/04年
ヴァイブレータ』Vibrator/邦画/03年
モンスター』Monster/03年
ストレイト・ストーリー』The Straight Story/99年
テルマ&ルイーズ』Thelma and Louise/91年
スタンド・バイ・ミー』Stand by Me/86年
『パリ,テキサス』Paris,Texas/84年

2013年6月11日 (火)

ジャッキー・ブラウン

ジャッキー・ブラウン(パム・グリア)が三流航空会社のスチュワーデスの安っぽい制服に身を包み、空港の動く歩道の上を右から左に移動するバストショットが、延々と映し出されて映画は始まる。ジャッキーの肌は褐色に輝き、溢れんばかりの色気が漂う。彼女はそのまま空港で逮捕される。
原作は『ラブラバ』の作者で名をはせるエルモア・レナードの『ラム・パンチ』。彼は本作の製作総指揮に名を連ねている。
Photo_20201119083101ジャッキー・ブラウン
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
原作:エルモア・レナード  『ラム・パンチ』(角川文庫)
アメリカ  1997年  154分   

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監督タランティーノは若かりし頃、パム・グリアの大ファンで、彼女を自慰の対象にしていたという。タランティーノから直接に言われたどうかはわからないが、そんなことを知ってしまった主演女優の気分はいかばかりか。誇らしく思えるものなのか、気持ち悪いと思うものなのか。もともとB級映画のセクシー路線で売り出した主演のパム・グリアは、太っ腹そうなので、「そうなだったの」といってウインクぐらい返したかもしれない。そう感じさせるところが彼女の魅力だ。

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武器密売人オデール(サミュエル・ジャクソン)の資金の運び屋をしているジャッキーは刑務所から出所したばかりだった。やっと今の職を得て安い給料でなんとかしのいでいたのに、再び刑務所に入れば、出所したときには職がないくらい切羽詰まってしまう。なにしろスチュワーデスとしては歳も歳だ。

ここで、ジャッキーは起死回生の手を打つことにした。
彼女の身柄を引き取りにきた保釈金融業者のマックス(ロバート・フォスター)を抱き込んで、警察とFBIと取引して罪を逃れ、オデールの金を横取りしようと画策した。
パム・グリアとサミエル・ジャクソンがかぶっている「Kangol」のベレー帽が気になる。つい、かぶってみたいと思うくらいに、ふたりとも似合っている。

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一方、オデールの相棒ロバート・デ・ニーロが演じる落ち目のヤクザのルイスは、オデールの女ブリジッド・フォンダに、彼のドジぶりをののしられて逆上し彼女を撃ち殺してしまう。映画界の血統書つきのブリジット・フォンダを黒人が囲う蓮っ葉な女として登場させ、しかもあっさり殺されてしまう役柄に配するところが、いかにもタランティーノらしい。

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事が計画通りに進み、まんまと大金を手にしたジャッキーはマックスに一緒に暮らそうと誘うが、彼はもう歳だからとやんわり断る。この場面は、タランティーノがかつてお世話になったパム・グリアに個人的な感謝の意を込めて、マックスに「ピリオド」を打ってもらったと、とれなくもない。
本作は監督の思いが込められた大人の恋愛物語でもある。タランティーノは正直者だ。→人気ブログランキング  

オンブレ/新潮文庫/2018年3月
ラブラバ/ハヤカワ・ミステリ/2017年
ラム・パンチ/角川文庫/1998年(『ジャッキー・ブラウン』DVD)
ミスター・マジェスティック/文春文庫/1994年

2013年6月10日 (月)

17歳のカルテ

精神病院の思春期病棟に入院する、ウィノナ・ライダー演じる不安定な精神状態のスザンナ、アンジェリーナ・ジョリー演じる破天荒でアグレッシブなリサ、そのふたりを取り巻く入院患者たちをめぐる物語である。スザンナ役はウィノナ・ライダーが地で演じても違和感がない感じがする。看護婦役のヴァレリー・オーウェンズの渋い演技が光る。
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Girl, Interrupted
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ジェームズ・マンゴールド/リサ・ルーマー/アンナ・ハミルトン=フェラン
原作:スザンナ・ケイセン『思春期病棟の少女たち』(草思社文庫)
製作総指揮:ウィノナ・ライダー/カロル・ボディ
音楽:マイケル・ダナ
アメリカ   ドイツ   1999年   127分

高校を卒業するスザンナは、以前から何かと問題を起こしてきた。
アスピリンひとビンとウォッカを1本飲んで自殺を計り、精神病院に収容される。医師には、自殺しようとしたのではなく自分を消そうとしたと表現した。
テレビのニュースでキング牧師の暗殺事件が報じられている、1960年代後半が舞台。彼女以外の同級生は全員が大学に進んだ。

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スザンナが入院したのは思春期の少女たちがいる開放的な病棟。病名は境界型人格障害、うつ的で情緒不安定で気まぐれ、性的に奔放、ときに自分を制御できなくなる症状を抱えている。

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スザンナが入院して数日後、病院から脱走していたリサが連れ戻されてきた。リサは、「フロイト創業の精神病産業に舞い戻ってきた!」と大声で叫ぶ。彼女は入院患者の注目の的で、いつも騒がしい。リサの自信に満ちた振る舞いに惹かれ、スザンナは病院こそが自分の居場所のように思えてくるのだった。

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患者たちがひっきりなしにタバコを吸い、集まって歌ったり、病院の地下室にあるボーリング設備で遊んだり、さっぱり精神病院らしくない。

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ある日、リサは父親との近親相姦が摂食障害の原因であることを患者にストレートに言い、彼女を自殺に追い込んでしまう。リサは事実を知らせ背中を押しただけだと開き直る。このことでスザンナはリサが許せなくなり、リサやほかの入院患者と疎遠になっていく。
ある日、スザンナはリサが病院内でしか生きられないことを指摘するのだった。そして、スザンナは自らを奮い立たせ退院する。

まだ新人の部類だったアンジェリーナ・ジョリーは、本作でアカデミー賞助演女優賞を獲得した。賞に値するぶっ飛んだ演技だ。本作の製作総指揮でもあるウィノナは、あの役であれば誰でも賞を取れたと嫌味を言ったとか。→人気ブログランキング

2013年6月 7日 (金)

1922 スティーヴン・キング

4編が収録されている『Full Dark,No Stars』(2010年)から、本書には『1922』『公正な取引』の2編が収録されている。『1922』は長編に迫る長さ、一方『公正な取引』は短編になる。どちらも中年の男が主人公で、どんどん悲惨な状況になっていくストーリーである。『Full Dark,No Stars』の残り『ビッグ・ドライバー』『素晴らしき結婚』の2編は、『ビッグ・ドライバー』(2013年4月 文春文庫)に収録されていて、どちらも中年の女性が主人公の物語である。
なにしろ話の運びが巧妙で文章がうまい。
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スティーヴン キング (横山啓明 中川聖 訳)
文春文庫
2013年

『1922』
1922年に妻を殺した主人公ジェイムスが手紙に真相を書いて明かす形で始まる。
彼にはもともと80エーカーの土地があり、妻が父親から相続した100エーカーの土地と合わせて、農業を続けようと思っていた。ところが妻は、土地を売って都会で暮らしたと言い出す。あるいは180エーカーの土地を全部売って金を半分ずつ分配し、離婚しようと言い出した。夫婦喧嘩が耐えなくなった。息子のヘンリーは都会に出て行くのを嫌がった。息子はは妻が引き取るという。そんなある日、ヘンリーが母親に逆らって殴られた。
ジェイムスはヘンリーを説得し妻を殺すことを同意させる。
いよいよ決行する日がきた、土地を売ることに賛同妻を喜ばせ、祝杯をあげる。妻はワインを2杯飲むと止まらなくなる。酔った妻は娼婦のように下品になった。
泥酔した妻を肉切り庖丁で首を切って殺そうとしたが、思いのほか手こずった。そして遺体を古井戸に投げ込んだ。
この時点から、ジェームスに次々と不幸が襲っていく。

『公正な取引』
癌に侵され希望を失っていた50歳のストリーターに、癌を治してやると言って、ずんぐりした男が現れる。ストリーターが憎む人物を教えるようにという。ストリーターは小学校時代からの親友の名前を挙げる。
親友はストリーターよりハンサムでスポーツ万能、なによりストリーターが付き合っていた女性を奪った。その後も親友の人生は順風満帆に見えた。今の暮らしにしたって、ストリーターよりはるかに裕福で、子供達も優秀で幸せそうである。
そして数日後病院を訪れたストリーターの癌は小さくなっていた。
ずんぐりした男が言ったように、彼は体調がどんどん良くなり、代わりに親友は不幸に見舞われていく。
その対比する状況の描き方が巧みである。

著著者は異様な状況下における普通の人々を語ることに興味があると、『ビッグ・ブラザー』のあとがきで書いているように、本書でも普通の人々の異様な状況下におけるエスカレートする姿が描かれている。残酷なことが容赦なく降りかかる主人公たちに共感を持てないところが、本書の2作品の特徴だと思う。→人気ブログランキング

1922
ビッグ・ドライバー
『幸運の25セント硬貨』

2013年6月 4日 (火)

おどろきの中国  橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司  

本書は3人の社会学者による鼎談の形をとっている。昨年ベストセラーになった『不思議なキリスト教』(講談社現代新書)は、本書の著者である橋爪大三郎と大澤真幸の対談で構成されている。本書はそのやり方を踏襲した。対談や鼎談では、複数の視点から語られるので話が膨らむ。また往々にして大胆な切り口になるので面白い。本書は「中国とはそもそも何か」「近代中国と毛沢東の謎」「日中の歴史問題をどう考えるか」「中国のいま・日本のこれから」の4部で構成されている。中国を根本から理解させてくれそうな、またベストセラーになりそうな本である。
Image_20201201170201 おどろきの中国
橋爪 大三郎×大澤 真×宮台 真司
講談社現代新書2013年

まず、中国をヨーロッパ社会のものさしで測ることはできないという。中国は領土が広大で多数の異民族が暮らし、とてつもなく人口が多い。同じ中国語といえども離れた場所では通じない。中国を考えるとき比べるべきモデルはEUであり、その意味で中国は国家の概念から外れているという。ではEUが統合されて間もないのに、中国が2200年も前に秦の始皇帝により統一されたのはなぜか。これが中国の謎を解く重要な鍵である。
理由のひとつは中国人のエゴセントリックな性癖にあるという。5車線道路に車線を無視して8台の車が並んで走り、ギリギリのタイミングで事故を回避するということが、現在の中国の大都市において日常的に行われているという。いわば毎日チキンレースをしているようなものだ。しかし、こうした争いが絶えない社会は疲弊する。中国人は、なによりも政治的な安定を優先するようになったという。
ふたつ目は、儒教を取り入れたことである。儒教は伝統を大切にし、年長者の教えを尊び道徳を守ろうとする考え方であり、統治する側に都合がいい。
3番目は漢字である。表意文字の漢字を理解できるのは一握りの人々で、大多数の民衆は漢字を理解できない。税を徴収される農民たちに不満が募って政府に抵抗しようと思っても、中国語の方言は生易しいものではなく、まるでそれぞれが外国語のようなもので、漢字があるからこそ通じる。漢字を理解できない農民は団結できないから大きな暴動にはならなかったという。
さらに官僚の序列を決める科挙試験がある。中国人はランキングに異常にこだわることで、争いが起きない仕組みを作ってきた。これが中国社会の文法であって、中国人の骨身にしみついているというのだ。また古来、中国では政治と軍事では政治が優先されてきた。官僚と軍人では官僚の方が偉いとランキングされている。中国で軍事クーデターが起こらない理由はここにあるという。

中国の大いなる謎のひとつは毛沢東である。毛沢東が推し進めた大躍進政策と文化大革命により、数千万人が亡くなったと言われている。これらの政策は、その当時から多くの人々が失敗と思っていたはずなのに、なぜ毛沢東は失脚しなかったのか。さらに毛沢東は人間性に問題があったと指摘されているにもかかわらず、いまもって優れた指導者と崇拝されているのはなぜか。毛沢東だけは失脚しないことが前提になっているとしか思われないと分析する。毛沢東をたたえることが、今の中国の政治が安定することにつながるからだということになる。
中国のいささか奇妙に見える現象は、歴史をたどれば大抵ある程度説明できる。ところが文化大革命だけは突飛であり不思議さが残るという。文化大革命の意図しなかった効果は、市場経済に適さない中国特有の伝統や習慣、行動様式を一掃したことであろう。つまり、ヨーロッパ社会のものさしでは測りえない社会主義市場経済という奇妙なシステムが、成功している所以であるという。

有史以来、日本は中国から多くのことを学び、中国をリスペクトしてきた。日本が中国より優位に立ったかに見えるのは、せいぜいここ100年くらいであるが、現在日本が中国をリスペクトしている気配はない。これは由々しいことだという。極東の国の関係を例えると、中国はクラスの担任の先生、韓国がそのクラスの優等生、日本と台湾は劣等生だったという。日本は朝鮮にも台湾にも占領政策を行ったが、朝鮮が反発し台湾が親日的なのは、クラスにおける上下関係によるという。中国も韓国も、劣等生の日本が近年力をつけてきて生意気な態度をとっていると見ている。日本側に多少の中国コンプレックスがあると日中関係は安定するという。
 明治維新のあと、日本は列強の端くれに加わりたいという願望があった。日本は亜細亜主義を唱えて末期の清国を助ける目的で、列強が植民地化しようとする中国に進出した。最初は中国も頼れる助っ人ととらえたが、いつの頃からか日本が変容し侵略者になった。南京事件は何が問題なのかを日本人が正しく認識しなければ、今後も相入れない両国の関係が続くという。中国が一番許せないのは、日本人が歴史を忘れていることである。

中国国内の格差に目を向けてみる。所得分配の不公平さを測る指標としてジニ係数がある。 0が平等で1に近いほど不平等の程度が大きくなる。一般に0.4を超えると暴動が起こる警戒領域だと言われている。日本は0.3、中国は0.6という報告もあるが、少なくとも0.5は超えているとみられている。すでに中国各地で暴動は起きているが、格差の割に比較的文句をいう人が少ない印象であるという。ジニ係数からするともっと大きな暴動が起きて、体制が危機的になっても不思議でないように思えるが、そうなっていなのはなぜか。ひとつは、国民が高度経済成長の恩恵に浴しているからであり、実際、所得が5年で2倍になっている。もうひとつは、一人っ子政策をやめるのではないか、あるいは、差別制度である農民戸籍がなくなるのではないかという期待があるからだという。また党や政府の幹部が汚職で摘発されると、すぐに死刑になる。これが国民に対しての申し開きのようになって、バランスをとっているように思えるという。しかし、いずれ行き詰まることは目に見えているが、そのときどんな問題が起こるか予測するのは困難だという。

21世紀は、衰退するアメリカをヨーロッパ諸国や日本がテコ入れして支え、躍進する中国と覇権を争うことになるだろう。しかし説明責任を果たそうとせず行動を予測できない中国は、覇権国家として認められることはないだろうという。そうした時に、日本の取るべき立場はインターフェイスの役目、つまり中国とアメリカの窓口になるというものである。米中が直接交渉できない、その間に入って活路を見出せという。所詮、日本は米中関係の付属物に過ぎないことを認識すべであるという。日本の選択肢が、うまく立ち回ってせこく生きるしかないというのは情けない。しかし、歴史も踏まえた冷静な目で見れば、これが日本のおかれた立場なのだろうと思う。→人気ブログランキング

2013年6月 2日 (日)

パルプ・フィクション

三つの話が別に別に進み、最後のシークエンスで最初の場面に戻り、ストーリーがつながるという構成になっている。
レストランで、チンピラの男女が突如銃をかざして怒号をあげたところで画面はストップし、そこからクレジットが流れる。
Image_20201201204901 パルプ・フィクション
Pulp Fiction
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー
音楽:カリン・ラクトマン
アメリカ   1994年  154分 

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場面は変わって、黒づくめの殺し屋ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)とジュールス(サミュエル・ジャクソン)が、アメリカンジョーク満載のマシンガントークを交わしながら、組織を裏切った男たちの隠れ家に向かっている。ジョン・トラボルタは、ギャング役が板についたようにピッタリはまっている。

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話の内容は、アムステルダムの麻薬事情、最近コカインよりもヘロインが流行っていること、ボスの妻の足をマッサージした男が4階から突き落とされ失語症になった話。これらはその後に起こるストーリーを暗示している。
ふたりは仕事をつつがなくこなし、つまり裏切り者を殺し、金塊の入ったカバンを取り返して帰路につく。

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【ボスの妻とのデート】愛妻家のボス・マーセルスから妻のミア(ユマ・サーマン)のお守りを頼まれたヴィンセントは、どうしたものかと思いあぐねて、とりあえず売人からヘロインを手に入れる。ミアの望み通り、有名女優のそっくりさんがいるレストランに出かけ、食事をする。レストランで、急遽開かれたダンス大会に出たふたりは優勝してしまう。ヴィンセントの『サタデイ・ナイト・フィーバー』ばりの踊りが見もの。ふたりは意気揚々と屋敷に戻ってくるが、ミアがヘロインの過剰摂取で心停止となり、ヴィンセントは慌ててミアを売人のところに運ぶ。

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【ボクサーの逃避行】落ち目のボクサーのブッチ(ブルース・ウィルス)は試合で八百長負けするはずが、相手をノックアウトして勝ってしまい、マーセルスに捕まることを恐れ街を出ようとする。ところが恋人はブッチが大切にしている祖祖父から受け継いだ金時計をアパート置き忘れてくる。金時計を取りにアパートに舞い戻るが、交差点を渡るマーセルスに出くわす。マーセルスに追いかけられてブッチが逃げ込んだ銃砲店でふたりは監禁され、ホモ男たちに犯されそうになる。

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【車のなかの死体の処理】話は前に戻り、ひと仕事を終えたヴィンセントとジュールスが車で帰るとき、後部席に乗せたジュールスの知合いの男をヴィンセントが誤って銃で頭を撃ち抜いてしまう。車の中が、骨と脳みそと血だらけになり、仲間のジミー ( クエンティン・タランティーノ)のガレージでどうにかしようとする。恐妻家のジミーは看護師である妻のボニーが、夜勤明けで帰ってくるまでになんとかしてくれないと、離婚されてしまうと騒ぐ。
そこに、マーセルスが派遣した始末屋のウルフがやってくる。
車の中を清掃しとりあえず市中を走れる状態にする前に、ウルフのマッシブなトークに、殺し屋ふたりもジミーも観ている者もイライラさせられる。

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場面は初めのレストランに戻って、血だらけの黒服をジミーから借りたTシャツとバミューダーパンツに着替えたヴィンセントとジュールスが、レストランで朝食を摂りながら話をしている。ジュールスはいまの稼業から足を洗うと言う。そして、ヴィンセントがトイレに入ったあと、チンピラの男女が銃を振りかざし、大声をあげ始める。

女性に対しては、マールセルにしてもブッチにしても、ジミーにしても、愛妻家だったり、恐妻家だったりする。
こういう映画でありがちな、女が男に虐待される場面は出てこない。監督は多分マザコンなんだろうな。
悲惨な殺しが次々に起こるが、タランティーノ監督が仕掛けているのは下っだらない話(プルプ・フィクション)のコメディである。→人気ブログランキング

2013年6月 1日 (土)

女はみんな生きている

パリに住むリベラルそうな白人一家も、アラブの大家族も突き詰めれば同じで、頼り甲斐のない男どもが威張っている。女を下僕のように扱う男社会に対するアンチテーゼの物語。
C4cf278aa1184ab7a5d993409a68c914女はみんな生きている
原題:Chaos
監督:コリーヌ・セロー
脚本:コリーヌ・セロー
音楽:リュドヴィク・ナヴァール
フランス 2001年  112分

年老いた母親がアパートに訪ねてくると、夫のポールは居留守を使い妻エレーヌに応対させる。エレーヌが息子のアパートを訪れると今度は息子が居留守を使い、同棲相手に対応させる。まったく親子揃って同じことをやっている。

ある日、暴漢から逃れようと若い女がポールとエレーヌの乗った車に助けを求めたが、ポールは無視する。女性はふたりの目の前で殴られ重症を負ってしまう。エレーヌが救急車を呼ぼうとするのを制止し、ポールは車を走らせ立ち去った。

女性の容態が気になって仕方がないエレーヌは、その女ノエミの入院先を突き止め、瀕死の彼女に付き添う。徐々に回復するノエミを暴漢が連れ去ろうとするが、ふたりは魔の手から危機一髪で逃れる。やがてエレーヌは休暇をとって、ひたすらノエミを助けようとする。

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一方、エレーヌの留守宅では、彼女がいないとポールも息子も何もできない。洗濯物はたまるし、寝室も台所も居間も汚れ放題、そんな状況にポールはブチ切れて家具に当たり散らしている。

一方、ノエミの抜き差しならない事情を知るに至ったエレーヌは、ノエミとともに組織に追跡されるようになってしまう。したたかに生きてきたノエミは、組織への復讐を次々に成し遂げていくのだった。
本作では、男がとことん頼りない一方、女はしたたかで力強く描かれている。女性の活躍が痛快なコメディタッチの作品。→人気ブログランキング

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