ジャッキー・ブラウン
ジャッキー・ブラウン(パム・グリア)が三流航空会社のスチュワーデスの安っぽい制服に身を包み、空港の動く歩道の上を右から左に移動するバストショットが、延々と映し出されて映画は始まる。ジャッキーの肌は褐色に輝き、溢れんばかりの色気が漂う。彼女はそのまま空港で逮捕される。
原作は『ラブラバ』の作者で名をはせるエルモア・レナードの『ラム・パンチ』。彼は本作の製作総指揮に名を連ねている。
![]() 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ 原作:エルモア・レナード 『ラム・パンチ』(角川文庫) アメリカ 1997年 154分 |
監督タランティーノは若かりし頃、パム・グリアの大ファンで、彼女を自慰の対象にしていたという。タランティーノから直接に言われたどうかはわからないが、そんなことを知ってしまった主演女優の気分はいかばかりか。誇らしく思えるものなのか、気持ち悪いと思うものなのか。もともとB級映画のセクシー路線で売り出した主演のパム・グリアは、太っ腹そうなので、「そうなだったの」といってウインクぐらい返したかもしれない。そう感じさせるところが彼女の魅力だ。
武器密売人オデール(サミュエル・ジャクソン)の資金の運び屋をしているジャッキーは刑務所から出所したばかりだった。やっと今の職を得て安い給料でなんとかしのいでいたのに、再び刑務所に入れば、出所したときには職がないくらい切羽詰まってしまう。なにしろスチュワーデスとしては歳も歳だ。
ここで、ジャッキーは起死回生の手を打つことにした。
彼女の身柄を引き取りにきた保釈金融業者のマックス(ロバート・フォスター)を抱き込んで、警察とFBIと取引して罪を逃れ、オデールの金を横取りしようと画策した。
パム・グリアとサミエル・ジャクソンがかぶっている「Kangol」のベレー帽が気になる。つい、かぶってみたいと思うくらいに、ふたりとも似合っている。
一方、オデールの相棒ロバート・デ・ニーロが演じる落ち目のヤクザのルイスは、オデールの女ブリジッド・フォンダに、彼のドジぶりをののしられて逆上し彼女を撃ち殺してしまう。映画界の血統書つきのブリジット・フォンダを黒人が囲う蓮っ葉な女として登場させ、しかもあっさり殺されてしまう役柄に配するところが、いかにもタランティーノらしい。
事が計画通りに進み、まんまと大金を手にしたジャッキーはマックスに一緒に暮らそうと誘うが、彼はもう歳だからとやんわり断る。この場面は、タランティーノがかつてお世話になったパム・グリアに個人的な感謝の意を込めて、マックスに「ピリオド」を打ってもらったと、とれなくもない。
本作は監督の思いが込められた大人の恋愛物語でもある。タランティーノは正直者だ。→人気ブログランキング
オンブレ/新潮文庫/2018年3月
ラブラバ/ハヤカワ・ミステリ/2017年
ラム・パンチ/角川文庫/1998年(『ジャッキー・ブラウン』DVD)
ミスター・マジェスティック/文春文庫/1994年
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