ペーパーボーイ ピート・デクスター
< 1969年。フロリダ大学の水泳部に所属するのジャックは、プールの栓を抜くいたずらをしでかして奨学金を打ち切られたため、退学せざるを得なくなった。そして、郷里のフロリダ州モート郡に戻り、父親が経営する新聞社の仕事を手伝っていた。
このジャックが語り手となって物語は進む。
ペーパーボーイ ピート・デクスター /谷垣暁美 訳 集英社文庫 2013年 |
マイアミ・タイムズ社に勤める兄ウォードのとヤードリーが、保安官殺人事件を洗い直すことになり、モート郡に仮事務所を開いた。ジャックは運転手として手伝うことになった。
そこに、ヤードリーを訪ねてヒラリー・ヴァン・ウェッター死刑囚の冤罪を訴える女シャーロットが現れる。彼女はヒラリーの新聞記事を読んだときに、直感で無罪と思ったという。彼女は、しょっちゅう鏡を見て化粧を直し、服装の具合を気にし、会ったこともない死刑囚と文通の末に婚約してしまうような飛んでる女。そのシャーロットをジャックは好きになってしまう。
本作を原作にした同名の映画『ペーパーボーイ』では、シャーロットの役をニコール・キッドマンが演じている。ピッタリのハマリ役だと思う。
新聞社では、兄のウォードは調べをコツコツ積み上げていくタイプ、ヤードリーは興味のある題材ならば天才的な文筆をふるうタイプと見られている。ウォードの資料に基づいて、ヤードリーが記事を書く役割分担になっている。
4人は死刑囚ヒラリーに何回か面会するが、彼は横暴で不遜、なかなか真相をつかむことができない。
フロリダといえば常夏の避寒地のイメージだが、ウェッター一族が暮らしているのは湿地。ウォードとジャックは湿地帯に聞き込みに行く。湿地帯には、毒蛇が木の枝にまとわりつき、底なし沼があって、水の中にはアリゲーターが潜んでいる。
ふとしたことから、兄が暴行事件に巻き込まれて重傷を負い、兄の入院中にヤードリーが記事を書き上げる。その記事によりヒラリーは釈放される。そして、その記事はピューリッツアー賞を獲得するという栄誉に輝き、ふたりは一躍有名人になるが。しかし、記事は捏造されたのではないかという疑惑が生まれ、ヤードリーと兄は他の記者の取材を受けることになる。
妻を亡くした父の新しいパートナーの出現や、兄が巻き込まれる暴行事件、兄の知られざる性癖、保安官殺害の真相を追求することによって起こる様々な事件、そして後半のテーマは記事の捏造である。→人気ブログランキング
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