解錠師 スティーヴ・ハミルトン
2011年度のアメリカ探偵作家クラブ賞(MWA)受賞、英国推理作家協会賞(CWA)受賞など世界のミステリー賞を数々受賞した。2012年度の『このミステリーがすごい!』と『週刊文春ミステリーベスト10』の両方で第1位に輝いた超話題作。
爽やかな読後感にひたれる青春小説であり、はかなくも美しい恋愛小説であり、スピード感のあるサスペンスであり、卓絶したクライムストーリーである。
刑務所に収監されている20歳代後半になった主人公マイクルの述懐ではじまる。
彼は8歳のときのショッキングな事件で、言葉を発することができなくなった。その凄惨な事件の全貌は後半に明らかにされる。
物語は二つの時間軸に沿い進んでいく。開錠の技術を身に付けるに至る過程と、解錠師として犯罪を重ねる現在までの過程が交互に描かれている。
解錠師 スティーヴ・ハミルトン(越前敏弥訳) ハヤカワ文庫 2012年 |
ミシガン州オークランドのミルフォード。
マイクルはミルフォード高校に入る。
彼には絵の才能があり、美術演習上級の授業を受けることになった。
体育ロッカーの開かなくなった南京錠を開けたときに、開錠の才能が芽生えた。
マイクルは骨董屋へ行って何個かの回転錠を5ドルで買い、それと戯れる夏を送った。
卒業パーティー(マイクルは2年生)でマイクルは鍵開けを披露し、その足でフットボールで惨敗させられた相手チームのキャプテンの寝室に自高の旗を掲げようと忍び込む。ところが、絵に見入って仲間が逃げたものの部屋にとどまり、あえなく捕まってしまう。
マイクルが見入った絵は、あとから恋人になるアメリアのデッサンであった。
ふたりは、絵を通じて愛を深めていく。
保護観察期間にアメリアの父親マーシュの機嫌を損ねれば収容所送りになる。
マイクルが開錠師になったのは彼の意思ではない。彼が開錠の腕前を披露したことで、マーシュはその技術を金儲けに使おうと目論んだ。これがマイクルが犯罪の道に入るきっかけとなった。
開錠の天賦の才能があるマイクルに、技術を叩き込んだのは解錠師のゴーストである。
マイクルの初仕事は17歳のとき。
原題の「The Lock Artist」のように、金庫破りというより、まさに芸術家(Artist)の仕事であった。
こうしてマイクルの犯罪の経歴が始まった。→人気ブログランキング
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