爪と目 藤野可織
第149回芥川賞受賞作。
「爪と目」はホラーの要素があるシュールな作品。「しょう子さんが忘れていること」は老女の性を巧みに扱っている。「ちびっこ広場」は母性愛を描いた作品である。
![]() 藤野可織 新潮社 2013年 |
「爪と目」
幼女の視点から描かれ、それが独特な雰囲気が出ている。この視点でストーリーが成り立つ、ということはほかの視点からでも成り立つということだ。
冬に幼女の母親は自宅のマンションのベランダで死んだ。事故死とされた。
父親は付き合っていた女と暮らし始める。
幼女は、母親が亡くなってからベランダに近づかなくなり爪を噛むようになった。
女はかなり進んだ近眼でコンタクトレンズを入れている。
亡くなった母親の本を引取りに来た古本屋と、女は浮気をするようになる。
ある日、突然に訪れた古本屋との情事の間、女は幼女をベランダに追い出す。幼女はパニックに陥ってしまう。よく日、おとなしかった幼女が園児たちの顔を噛んでギザギザになった爪で引っ掻き、けがを負わせる。女は幼女の爪をヤスリで滑らかにしてマニキュアを塗る。
寝入っている女に幼女が乗っかって、剥がれたマニキュアの破片を女の目に入れようとする。
「しょう子さんが忘れていること」
老女の性を奥ゆかしく爽やかにちょっとだけ艶めかしく描いた作品。
しょう子さんは脳梗塞でリハビリ病院に入院している。毎朝、何もかもが気に入らない気分で目が覚める。
陽気で親切で誰からも好かれる入院患者の川端くんをしょう子さんも気に入っている。
見舞いにくる長女の長女は37歳で未婚。そのことで、しょう子さんは37歳のときに最後のセックスを済ませたことを思い出した。長女の長女のセックスはこれからだ。そんなことを考えたことにしょう子さんはわれながらムッとする。
就寝時間になるとしょう子さんはベッドに誰かが現れたような気がした。しょう子さんの体は激しく震える。これが毎晩繰り返えされ翌朝には忘れている。
「ちびっこ広場」
若い母親と息子の絆を描いた作品。
実加は大学の同級生の結婚披露パーティに出掛ける身支度をしている。
いつもは、ちびっこ広場で遊んで約束の時間に遅れる息子の大樹が、早く帰ってきた。何があったのか、うずくまって顔をあげない。仕方なく夫の帰宅を待ってパーティに出かけた。しかし実加は大樹のことが気になって仕方がない。二次会は止めにして帰宅する。
大樹は広場で起こったことを実加に話す。そして、夜中に実加と太樹は広場に向かう。→人気ブログランキング
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