九月が永遠に続けば 沼田まほかる
はじめは、ホラー小説にありがちな唐突なストーリー展開に、つじつまが合わなくなるのではと不安を抱かせるが、話が進むに連れてそれぞれが糸で繋がっていてほころぶことなく集約されていく。主人公の微妙な心の動きが実によく描写されている。なにしろ文章が上手い。
ホラーというジャンルを超えて良質な文学に到達している作品である。第5回(2004年)ホラーサスペンス大賞受賞作。
九月が永遠に続けば 沼田 まほかる 新潮社 2008年(単行本→2005年) |
主人公佐和子の一人称の形で語られる。
彼女は8年前に精神科医の雄一郎と離婚した。今は高校3年生の息子文彦とマンションで暮らしている。別れた2カ月後に、雄一郎から亜沙実を入籍したと連絡があった。
彼女は自動車教習所の教官犀田と関係を持ってしまう。そのこと自体は、お互いが独身だからなんら問題はない。しかし雄一郎から、犀田が雄一郎の再婚相手亜沙実の娘である15歳の冬子とも付き合っていることを知らされると、佐和子は罪を犯しているような気持ちになる。
ある夜、ゴミを捨てに出たまま文彦が戻ってこなかい。サンダルをつっかけたまま財布も持たずに行方不明となったのだ。文彦の机を探ると、ポルノ雑誌に混じって、佐和子にとって見るも憚れる女性虐待のポルノ雑誌があった。このことについては、彼女には思い当たるふしがあった。
亜沙実が蒙ったおぞましい過去、冬子の出生の秘密、雄一郎と佐和子の理由、雄一郎と亜沙実はなぜ結婚したのか、これらの過去の出来事と現在の事件つながっている。おどろおどろしい中に面妖な美しさが描かれ、複雑に絡んだ人間関係が明らかにされ、謎が解かれていく。
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