存在の耐えられない軽さ
1968年のチェコ事件を背景に、ミラン・クンデナが書いた同名の世界的ベストセラー小説の映画化。 激動の時代に翻弄された若い男女が描かれている。「チェコ事件」は、チェコスロバキアの民主化、自由主義化運動「プラハの春」に対して、ソ連が指揮するワルシャワ条約機構軍がプラハに侵攻して、やがてチェコ全土を占領し民主化が制圧された事件である。
存在の耐えられない軽さ The Unbearable Lightness of Being 監督:フィリップ・カウフマン 脚本:ジャン=クロード・カリエール/フィリップ・カウフマン 原作:ミラン・クンデラ 音楽:レオシュ・ヤナーチェク アメリカ 1988年 171分 |
腕のいい脳外科医のトマシュ(ダニエル・デイ=ルイス)は、女にすぐ手を出すプレーボーイである。画家のザビーナと深い関係にある。
そのトマシュは郊外の病院へ出張に出かけたときに、ウェートレスのテレーザ(ジュリエット・ビノシュ)に話しかける。それがきっかで、トマシュとテレーザは結婚する。原作では、トマシュがテレーザに一目惚れしたことになっている。
ふたりは犬を飼い、テレーザが読んでいた『アンナ・カレーニナ』にちなんで、犬にはカレーニンと名付けた。
やがてワルシャワ条約機構軍がプラハに侵攻してくる。
チェコ語でカヴァーされたビートルズの『ヘイ・ジュード』が流れる中、戦車が人々の抵抗を抑え込んでいく場面が描かれる。当時チェコでは『ヘイ・ジュード』が自由主義化運動のシンボリックな曲として歌われていた。
テレーザは、侵攻の様子を写真に撮りネガを外国人に手渡し、世界に知らせようする。人々の抵抗にもかかわらず、ソ連の締めつけは厳しくなり反対する者は弾圧された。
そんな状況にたまりかねたサビーニはジュネーブに逃れ、やがてトマシュとテレーザも続いた。
「存在の耐えられない軽さ」というフレーズは、疎開先のジュネーブでも変わらず女を追いかけ回し、刹那的に生きるトマシュに対して、テレーザがぶつけたフレーズである。そうした軽い夫に、テレーザは将来が不安だといって、疎開先のスイスからソ連監視下のプラハにカレーニンを連れて舞い戻ってしまう。
それを追いかけてトマシュもプラハに戻るが、かつてオイディプスの神話にひっかけて書いた共産主義批判の論文がソ連当局の目に留まり、内容を撤回するよう圧力がかかる。しかし、腹をくくったトマシュは拒否する。トマシュは重い選択をしたのだった。このことで、脳外科医としての仕事が奪われてしまう。
ふたりは田舎に引っ越して自然の中でゆったりとした農家の暮らしをする。
一方、ザビーナは妻と離縁して彼女に求愛する大学教授を振り払って、アメリカに渡った。人とのしがらみを避けて、軽い生き方を選択したわけである。ある日、カリフォルニアで芸術活動を続けるザビーナのもとに、プラハから悲報が届く。トマシュとテレーザが事故死したと書かれてあった。→人気ブログランキング
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