震える牛 相葉英雄
食品偽装、BSE問題、大企業の独禁法抵触などを扱った社会派サスペンス小説。
主人公の警部補が進める捜査過程を中心に描き、それと並行して女性ジャーナリストが巨大企業のスキャンダルを追いかけ、終盤で両者が出会い犯罪の全貌が明らかにされていく。
震える牛 相場 英雄 小学館文庫 2013年 |
田川警部補は高卒の叩き上げ、迷宮入りしそうな未解決事件ばかりが回ってくる警視庁捜査一課継続捜査班に所属する。田川は、現場周辺を丹念に聞き込む「地取り」、事件関係者のつながりを徹底的に洗う「鑑取り」の捜査手法を得意とする。この手法で得られた情報を蛇腹の分厚い手帳に書き込み、メモ魔の異名がある。
田川家では、事件の捜査を始める前と事件が解決したときに、同僚の池本警部補を呼んで、すき焼きパーティが開かれる。
作者は、こんなところにも本作のテーマである「牛」を登場させている。
田川は発生から2年が経ち未解決となっている「中野駅前居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。黒づくめの目出し帽をかぶった男が「マニー、マニー」がと叫びながら店長に切りつけ売上金を奪い、刃物で客ふたりの首を刺し殺害した。初動捜査では犯人を「物盗りの外国人」に絞っていた。
一方、インターネット・ビズ・トゥディの女性記者鶴田真純は、大企業オックスマートの独禁法への抵触疑惑を調査している。
2000年に大店法が施行され、地方都市の郊外に大型ショッピングセンターが建設され、商店街は破壊されていった。
鶴田がオックスマートにこだわる理由は、妹が同社が展開するショッピングセンターの建設にからんで、不幸な亡くなり方をしたからである。
田川たちは地道な捜査を積み重ねていく中で、実は計画的な殺人事件であると断定した。殺害されたのはやくざの顔を持つ産廃業者、仙台に住む獣医師である。ふたりのつながりを探ろうと、田川たちは新潟へ仙台へと捜査の手を広げる。
一方、鶴田は食品偽装とオックスマートとの関連を調べていく。
食品偽装が浮かび上がり、オックスマート社の抱える闇、さらにBSE問題、警視庁や政界と企業の癒着の問題も絡んで、大きなスケールでストーリーは展開していく。→人気ブログランキング
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