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2013年8月 8日 (木)

エッジ 鈴木光司

本書は、2013年に、心理サスペンスやホラーなどの優れた作品に与えられる米国のシャーリー・ジャクスン賞の長編賞を受賞した。同賞は、米国のサスペンス作家の巨匠シャーリー・ジャクスン(1916年~1965年)の名前を冠して2007年よりスタートしている。
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鈴木 光司
角川文庫
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2012年

カリフォルニア州で謎の失踪事件が発生し、ハワイの国立天文台でスタッフが星の消滅を観察した。スタンフォード大学でπの計算中に5千億桁を超えたところで、コンピュータが0を連続して打ち始めた。宇宙規模の得体の知れない異変が起こっている。これがプロローグである。

2012年11月、ルポライターの栗山冴子は、長野県高遠町で一家4人が忽然と失踪した事件の真相を追うことになった。テレビ番組を作成する目的で、テレビマンの羽柴と霊能者鳥居茂子と冴子で高遠町に向かう。
失踪現場の家を調べた冴子は、そこで偶然に父眞一郎の手帳を発見する。

35年前、冴子の母は冴子を生んだあとに死んだ。その後、冴子は眞一郎により男手ひとつで育てられた。眞一郎は、地球の成り立ちから生命の誕生、絶滅していった種について、小学生の冴子に話し彼女はそれを熱心に聞いた。
そして、18年前冴子が17歳のときに、眞一郎はなにも告げないまま忽然と姿を消した。眞一郎が残したフロッピーディスクには、彼自身が大規模な失踪事件に興味を持っていたことがわかった。

そして、熱海の植物園で91人が跡形もなく消える事件が起こる。
冴子は、父にかつて授かった教えを頼りに、物理学者磯貝とクリス、そして恋人の羽柴とともに、こうした異変の正体を突き止めようとする。
活断層に沿って起こる数々の失踪事件、消えた星、数理学の定理や定数の異変、太陽の黒点の活動、磁場の狂い、これらからたどり着いた冴子たちの結論は宇宙の層移転であった。

本書は、宇宙の終わりを描く壮大な物語である。
宇宙の終わりを描くには、宇宙のはじまりから生命の誕生、生物の進化、人類の誕生から現代までを語らなければならない。さらに数理学、物理の法則、素粒子論、宇宙論を読者に示さなければならない。著者は眞一郎の手記や冴子への教え、磯貝とクリスの会話、冴子や羽柴の考察などで、それらを随所に披露している。そうした著者の緻密な手法により、宇宙の終末を迎える恐怖を生々しく感じさせられる作品である。→人気ブログランキング

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