SAYURI
日本の芸者の物語であるにもかかわらず、主人公の芸者を中国系に割り当てたところが、WAPS(White Anglo-Saxon Protestant)の発想だと思う。中国系女優が演じる芸者はジャポニズムを摩訶不思議なものにして、それがかえって、彼女らの魅力を引き出しているのかもしれない。日本的過ぎないことが、かえって受け入れられたと思う。
本作は第78回アカデミー賞で、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、録音賞、音響編集賞という「裏方部門の賞」を多く獲得している。
![]() Memoirs of a Geisha 監督:ロブ・マーシャル 脚本:ロビン・スウィコード(英語版)/ダグ・ライト 原作:アーサー・ゴールデン『さゆり』 音楽:ジョン・ウィリアムズ アメリカ 日本 中国 2005年 146分 |
貧しい漁村に生まれた千代(大後寿々花)は、9歳の時に借金の形に置屋に売り飛ばされた。世界恐慌の頃である。
置屋はおかあさん(桃井かおり)と呼ばれる強欲なお女将が仕切っていて、千代は苛酷な下働きに明け暮れる。
千代は、先輩芸者の初桃(コン・リー)からいじめられれる日々を送っていた。それは初桃が幼い千代の芸者としての才能を見抜きそれに嫉妬していたからだ。
ある日、彼女は街で会長(渡辺謙)と呼ばれる紳士に優しく声をかけられ、かき氷を食べさせてもらいハンカチをもらった。そのことが忘れられず、千代は会長にもう一度会うために、芸者になりたいと思うようになる。
そして千代が15歳のときに、芸者の中の芸者と称えられる豆葉(ミシェル・ヨー)が、彼女を一流の芸者に育てたいと、お母さんに申し出る。豆葉は、流し目だけで旦那集をその気にさせる術を千代に伝授するのだった。豆葉の見込み通り、千代は芸者さゆり(チャン・ツーイー)として一流の芸者となり、数多くの男たちを虜にしていった。
やがてさゆりは、客として現われた会長と再会する。だが会長の親友である延(役所広司)がさゆりに魅了され、さゆりの思いとは裏腹に、水揚げは延が落札する。
そして、日本は太平洋戦争に巻き込まれる。
世の中は芸者遊びどころではなくなった。さゆりは芸者を引退し、田舎に疎開することになった。そして日本は敗戦する。
さゆりは他の芸妓より上に行こうと思っていただろうし、ゆくゆくはおかあさんの置屋を継いで、安泰な生活を送りたいと思っていただろう。
敗戦で何もかもがめちゃくちゃになった。
終戦後、延がさゆりを迎えにくる。延は、さゆりと豆葉を芸者として復活させ、アメリカ人を接待させ、商売を有利に運ぼうと考えていた。延の考え通り商売は順調に運ぶ。しかし、いざ彼がさゆりへの思いをぶつけると、彼女はそれを頑なに拒否した。
やがて、さゆりのもとへ会長が現れる。ふたりはお互いに抱いていた長年の恋心を、そこで初めて打ち明けるのだった。
男は妻帯者、芸者はあくまで夜の女としての立場。これが純愛の物語となのだから、昭和は寛容な時代だった。
メインの芸者を演ずるチャン・ツーイーとコン・リーは中国人女優、ミシェル・ヨーはマレーシア人であるが、中国系である。本作が封切られた頃、中国国内では中国人に芸者を演じさせるとは何事だとの騒動が起こった。芸者が売春婦であると誤解していたらしい。
もうひとつ、脇役には桃井かおり、工藤夕貴と日本人女優を当てている。それはいいとして、「メインの芸者にひとり日本人を起用すると、微妙な化学変化が起こり、もっといいものになったのではないか」というのは私の意見。→人気ブログランキング
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