横道世之介
原作は『悪人』、『パレード』の吉田修一、監督は『南極料理人』、『キツツキと雨』の沖田修一監督。br />世之介は、井原西鶴の『好色一代男』の主人公の名前である。西鶴の世之介は何千人もの女ばかりでなく男とも関係をもった希代のドンファン。世之介は西鶴を意識したネーミングだと思う。本作の世之介は人が良くって人懐っこくて、誰とでもすぐに打ち解ける、とにかくいい奴である。人の良い人間を描くことがこの映画のテーマ。
横道世之介 監督:沖田修一 脚本:沖田修一/前田司郎 原作:吉田修一『横道世之介』 音楽:高田漣 主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「今を生きて」 日本 2013年 160分 |
舞台はバブル景気がそろそろ終わろうかという1987年とおよそ20年後。
東京の私立大学に入学した横道世之介(高良健吾)は、倉持一平(池松壮亮)と阿久津唯(朝倉あき)と仲良くなり、3人は敬遠していたサンバ同好会に入る。
世之介は、郊外の安アパートから都心の大学に通い、講義に出て、サークルに顔を出し、アルバイトに精を出し、夏休みにはサンバの合宿に参加する、そんな、普通の大学生の日常を送っていた。
真夏にクーラーのない部屋で、窓を開け放ち扇風機を回し、水の入ったバケツに足をつっこんで、首にはタオルを巻いて、汗をタラタラ流しながら、熱いインスタントラーメンをすする。似たようなことをやったよなあ、と観ている者に学生時代を思い起こさせる。
入学式で初対面にもかかわらず、その日のうちに唯とキスにまで発展したことを一平に聞かされて、世之介はうろたえる。
世之介が学園祭でサンバを踊り熱射病で倒れ、「僕に構わず先に行ってくれ」と言った自分が誇らしく感じて、その場面が写っているビデオを繰り返し見て「俺って、かっこいいだろう」と自慢する。こんな下らないことに固執するのが青春だ。
世之介が思いを寄せる謎の派手な片瀬千春は、不倫相手の男との別れ話の席に、世之介を弟として同席させ手切れ金をせしめた。千春には娼婦という噂があった。
世之介が自動車教習所で仲良くなったのは、社長令嬢の与謝野祥子(吉高由里子)。何不自由なく育った祥子から言い寄られた世之介は、生活環境のギャップに戸惑いながらも、深い仲になっていく。「世之介さーん、だーいすき」の吉高由里子の甘い声が耳に残る。
そして、20年後。世之介と交流があった人たちだれもが、「あいつはいい奴だったよな」と思い出す。いい人の常で世之介は早死にしていた。ほのぼのとしていて、ふと寂しさを感じさせる作品。
この世之介の死には、モデルになった事故があるといわれている。2010年1月に、電車の線路に落ちた男性を助けようと線路に飛び降りた日本人カメラマンと韓国人青年が、電車にはねられ、3人とも死亡した新大久保駅乗客転落事故が起こっている。
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