メメント
記憶を10分間しか保てないとしたらどうするか。メモを活用し、画像をカメラに収め、景色や顔を忘れないようにする。電話のやりとりはむつかしい。
原作は監督の弟であるジョナサン・ノーランの短編『Memento Mori』。
アカデミー賞のオリジナル脚本賞、編集賞にノミネートされた。
メメント Memento 監督:クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーラン 原案:ジョナサン・ノーラン 音楽:デヴィッド・ジュリアン アメリカ 2000年 113分 |
深夜、強盗が押し入り妻を殺された。そのときにに負った頭のケガで主人公のレナードは、前向性健忘となり10分しか記憶が保てない。
彼はメモを取り、ポラロイドカメラで人物を撮影し、さらに最重要事項はタトォーで体に刻み込んでいる。妻を殺した犯人を見つけ出し復讐することが目的で動き回っている。
本作は、はじめにレナードが復讐を成し遂げたかに思われる殺人のシーンから始まり、過去にさかのぼっていくように構成されている。レナードが書いたメモやポラロイド写真、タトゥーとして刻まれた言葉が組み合わされてパズルを解くように、ストーリーが進んでいく。ミステリ小説を後ろからを見開き2ページずつ読むとすると、こんな感じにストーリーが進むのではないか。
レナードにはテディという何かとおせっかいを焼きアドバイスする男がつきまとう。そのテディが犯人という疑惑も浮かぶ。
それまで味方だと思われた謎の女ナタリーが、レナードの記憶喪失を利用していたことがわかってくる。
ここで気になるのがレナードの頬の引っ掻かれたような傷。ナタリーの下唇も殴られたように腫れている。こうした傷はいつなぜついたのか。
レナードが保険会社の調査員をしていた頃に担当した記憶喪失となった男サミーの物語が何回か挟まれる。そして、「サミーを忘れるな」とレナードは口癖のようにくりかえす。
観客はどこか違った方向に話が進んでいくような不安感を感じさせられるが、それはレナード自身に対する疑惑も徐々に膨らんでいくからである。妻が殺されたことすらもあやふやになっていく。
見直さないと細かいことはよくわからないなというのが偽らざる感想である。
テディは味方なのか敵なのか、あるいはレナードを利用しようとするだけなのか。
この映画は、そのはっきりしない焦燥感を最後まで引きずり続けるところが、狙いなのだ。疑問を残して終わることもこの映画の意図するところだと思う。実験的手法が成功した素晴らしい出来である。→人気ブログランキング
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