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2013年10月 4日 (金)

キュレーション 知と感性を揺さぶる力 長谷川祐子

現代アートのキュレーターとして世界的に活躍する著者が、豊富な経験をもとにキュレーションの本質を広い視点から論じている。
Photo_20201118083401 キュレーション 知と感性を揺さぶる力
長谷川 祐子
集英社
2013年

著者は、キュレーターの仕事は視覚芸術を解釈し、これに沿って、芸術を再度プレゼンテーションすることと定義している。その仕事の内容は、多岐に渡っている。選択する、解釈する、構成するという意味ではエディターに近く、アーティストの作品制作に関わったりする点でプロデューサーであり、文献を渉猟し、フィールド・スタディもこなすリサーチャーであり、アカデミックなテキストや批判的なテキストを書き、展覧会のキャッチコピーまで考えるライターであり、展覧会の企画や執行をマネージメントする管理者でもある、という。
マルチな情報が頭の中で整理されていなければこなせない、豊富な知識と経験が要求されるタフな仕事である。

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キュレーターの仕事の最もわかりやすい例は、1929年に開館したニューヨーク近代美術館に、当時前衛とされていたセザンヌ、ゴーギャン、スーラ,ゴッホを、第1回展に集めたことだという。
上の画像は初代館長のアルフレッド・バー・ジュニアの描いた有名なチャートである(『キュヴィズムと抽象絵画』展 1936年の図録カバーより)。現代アートがどのように進化していったかを示しているこのチャートは、館長自身が人々に新しい芸術を理解させるための、まさにキュレーターの役割を果たしていたことを示している。

中心となる流れがなくなり多様化し辺縁化した現代アートは、何事をも取り込みうるし、様々な事象とのつながりの中で生まれている。セクシャリティー、ジェンダーとの関わり、地域社会はもちろんのこと政治との関わりすらも起こっている。

冷めた著者の眼差しは、キュレーターの姿を次のように見ている。
〈キュレーター、この罪深き職業の《罪の極北》は、美術館、芸術品の終焉のヴィジョンを覚悟しつつ、最も誘惑的な声で美術館、芸術品の存続の意味を語り続ける二面性にあるのだ。〉何でもありの現代アートのキュレーションは二面性のジレンマの中で、時代を先取りしながら、これからも変容し続けるということである。
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著者のワールドワイドな目で見たその土地で開催される展覧会のあり様というか癖というかが、それぞれの国民性が反映されていて、実に面白い。
〈表現主義的な絵とインダストリアル・ミニマルの彫刻が好きなドイツ、オーガニックで感動的で、それが洗練された中庸の域を出ていないことが肝要なフランス、その間をとっているのが、奇妙さと可愛らしさ、グロテスクが混在するスイスである。そして《絵画》と《彫刻》が好きで、美術館での《学習》が趣味になっているアメリカ、音楽やダンス的な要素、トロピカルバロックが好きなブラジル、同じ傾向にありながら、浪速節的感情表現が入ってくるのがトルコ。記憶や物語、そしてミュータント的な人工生命の好きな韓国、とにかく巨大で壮大なテーマの作品と人間の身体モティーフが好きな中国。かわいくて感覚的、清々しいかグロテスクかのどちらかで、テクニカルに精巧にできている作品が好きな日本。〉という。→人気ブログランキング

現代アート経済学』宮津大輔(2014年)
キュレーション 知と感性を揺さぶる力』長谷川祐子(2013年)
現代アートを買おう!』宮津 大輔 (2010年)
現代アート、超入門!』藤田令伊(2009年)
セゾン現代美術館

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