セックスと嘘とビデオテープ
刺激的なタイトルであるが、抑制の効いた格調のある内容になっている。主人公アンを演じるアンディ・マクダウェルが静謐な気品を感じさせるからかもしれない。登場人物は4人、医者とバーの客をいれてもせいぜい6人である。本作は1989年のカンヌ映画祭グランプリを受賞した。若干26歳の・ソーダバーグ監督の処女作、才能がほとばしる秀作。
セックスと嘘とビデオテープ Sex, Lies, and Videotape 監督:スティーブン・ソダーバーグ 脚本:スティーブン・ソダーバーグ 音楽:クリフ・マルティネス アメリカ 1989年 100分 |
辣腕弁護士のジョン(ピーター・ギャラガー)を夫に持ち、勤めを辞めても、なに不自由なく暮らすアン(アンディ・マクダウェル)は、うつ病に悩まされている。彼女は精神科医のカウンセリングを受けていて、夫とはうまくいっておらず、セックスレスである。
一方、野心家の夫のジョンは、貞淑すぎる姉と正反対な性格の妹シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と肉体関係がある。
子供の頃からシンシアはアンの美貌に嫉妬していて、仲が悪い姉妹はなにかと意見が食い違う。シンシアはジョンと深い関係となることで、姉に嫌がらせをしているのかもしれない。
ある日、ジョンの大学時代の友人グレアム(ジェームズ・スペイダー)がアパート探しのために、数日の間、アン夫婦の家に滞在することになった。アンはグレアムと話をするにつれ、彼に興味を抱くようになる。
アンがグレアムの新しいアパートを訪れると、多数のビデオテープがあった。ビデオテープの内容を問い質すと、これまでグレアムが出会った女性が性について語ったものであるという。中には告白だけでなく、ビデオカメラに向かって自慰行為をいているビデオもあった。彼女はその内容を知って、グレアムに不信感を抱くようになる。
何かにつけて好奇心が旺盛なシンシアはグレアムに近づき、ビデオカメラの前で、初体験からジョンとの情事までをあっけらかんと語ってしまう。
妹からグレアムのアパートでのことを聞かされたアンは、嫌悪感とともにシンシアに対し嫉妬を抱く。
自宅の寝室でシンシアのイヤリングを見つけたことで、ふたりの背信行為を確信したアンは、怒りにかられ家を飛び出し、グレアムのアパートに向かった。いつのまにか彼女は、グレアムのビデオカメラの前で告白を始めていた。性体験をビデオに向かって話すことで、アンは開放されていった。同時にアンはグレアムにも告白を促し、性的に不能であった彼の心の闇が開放されるのであった。
ビデオカメラに向かって話すことは、精神科医のカウンセリングより、はるかに治療効果があるという皮肉なことになる。
家に帰ったアンは夫に離婚を切り出し、グレアムのビデオに出たことを告げた。怒ったジョンはグレアムのアパートに駆けつけ、妻のビデオをを見る。ビデオの内容で、ジョンは自ら敗北を悟るのだった。
帰り際、ジョンはグレアムに、残酷にも彼の昔の恋人エリザベスと関係があったことを捨て台詞のように告げた。
何かが心の中で崩壊したグレアムは、ビデオテープを壊し始めるのだった。
数日後アンとグレアムの間に芽生えた愛は確実なものとなっていた。そしてふたりは新たな生活を始めようとしていた。
心に傷を持つふたりは呪縛から開放され、インモラルなふたりは悔い改めることはない。
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