『現代アートを買おう!』宮津大輔
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現代アート300点を所有するコレクターの著者は、平凡なサラリーマンである。決して財力があるわけでない著者が、どのようにしてコレクターの仲間入りができたのか。
大まかな現代アートのあり様、購入のノウハウ、作品の保存の仕方、展覧会への貸し出しの方法、かつての現代アートバブルへの苦言などが、語られている。買うという視点で現代アートを見ると意外な側面が現れてくる。
作品を選ぶに当たってアドバイスがあるとすれば、「自分を信じて自分に嘘をつかない」ことだという。
著者自身は好きで手に入れた作品はどれも甲乙つけ難く手放せないという。それがたった15年で、300点も集まった理由だというのだ。ちなみに、著者がはじめて購入した作品は、草間彌生のドローイング、価格は50万円だったそうだ。
現代アートの魅力のひとつは、アーティストと同時代を共に生きていることだという。現代アートの英訳は Contemporary Art であり、Contemporaryは「同時代の」という意味である。作家と交流することを勧めている。そうした交流を通じて著者は新築する自宅の設計をフランス人アーティストに委託した。そして著者がドリームハウスと呼ぶ、住宅地で異彩を放つ住宅ができあがった。
もうひとつの魅力は、本物しか存在しないということである。贋作が皆無とまではいかないが、現代アートは一点物しかないといっていい。
著者は、芸術で金儲けをしようとは、ゆめゆめ考えていない。優れた芸術は受け継がれているものと思っているという。この考え方は、祖母の信条「美術作品は個人が持つものではなく、みんなのものであり、美術館で見るもの」に影響されたものであり、その姿勢を貫くことに、著者はぶれていない。
趣味が高じて有名なコレクターとなった著者が、邪気なく熱っぽく語る現代アート論である。
『現代アート経済学』宮津大輔(2014年)
『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』長谷川祐子(2013年)
『現代アートを買おう!』宮津 大輔 (2010年)
『現代アート、超入門!』藤田令伊(2009年)
セゾン現代美術館
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