特捜部Q キジ殺し ユッシ・エーズラ・オールスン
前作でミレーデ事件を解決し大手柄をたてた特捜部Qは、国内外で有名になっていた。オスロから視察が来ることになり、それに新人とはいえ警察学校を優秀な成績で卒業した変わり者の女ローセが配属されてきた。ところがこのローセが、カールの気持ちを逆なでする厄介な女だった。
ある日、カールの机の上に、20年前に起こった高校生の兄妹が撲殺された事件のファイルが置かれていた。動機は不明、寄宿舎の少年グループに容疑がかけられた。有力者の息子5人と娘ひとりが調べを受けたが誰も起訴されなかった。
ファイルには、6人が関係したと思われる未解決の襲撃事件が20件も挙げられていたのである。
奇妙なことに9年前にそのうちのひとりが事件の犯人として自首している。
また猟銃の暴発事故で男のひとりが亡くなっている。
特捜部Q キジ殺し ユッシ・エーズラ・オールスン 吉田薫・福原美穂子訳 ハヤカワ文庫 2013年 |
唯一の女キミーは、銀行に困らないくらいたっぷり金があるというのに、路上生活者である。キミーは男を欲情させる体をしていて、めっぽう腕っ節が強いということになっている。
残る3人は、チェーン民間病院経営、ファッション業界、証券業界のそれぞれで、デンマークを代表する著名な経済人として活躍している。
政界や経済界、警察組織に弱味を握ったり賄賂で人脈を作り上げていて、法務大臣や警察署長官からの圧力がかかり、特捜部Qの捜査が一時的に停滞もした。
彼らは暴力や殺人により性的に興奮するという性癖の持ち主なのである。
3人は定期的に殺戮を目的とする狩り「キジ殺し」を楽しんでいるという、得体の知れない気味の悪い連中なのだ。
キミーは男たち3人を男たち3人はキミーを、命を奪って口封じをしなければならない理由がある。
一方カールは、撃たれて脊髄損傷で入院しているハーディのたっての願い、家に引き取り介護するかどうかで悩んでいる。
最初の5分の1くらい読んだところで、結末が見えてくる。さらに、現実には到底ありえない犯罪者たちが描かれているが、ミステリ小説として違和感なくすんなり受け入れられるのは、構成や話の運びの上手いからだろう。作者のユッシ・エーズラ・オールスンは、小説を書く前は、映画の製作やコメディやコミックの研究をしていたというから、読者を飽きさせないコツを心得ているのではないだろうか。そういえば、大胆かつ突拍子もない話の内容はコミック的である。→人気ブログランキング
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