M★A★S★H マッシュ
朝鮮戦争の負傷者を手術する移動式野戦病院で繰り広げられる、ハチャメチャな生き方をする外科医たちを描いたコメディ。マッシュは移動式野戦病院(Mobile Army Surgical Hospital)の略。戦闘シーンや爆撃シーンはまったく出てこない。その分、血にまみれた負傷者を手術するリアルなシーンがこれでもかと挟み込まれている。
![]() 監督:ロバート・アルトマン 脚本:リング・ランドナーJr. 原作:リチャード・フッカー 音楽:ジョニー・マンデル アメリカ 1970年 116分 |
スピーカーから基地内に、講演会や週末の映画の案内、性病検査の日程などの業務連絡の他に、ラジオ東京の歌謡曲やジャパニーズジャズが流れ、これがストーリーをつなげる役割を果たし、かつ、だらっとした主人公たちの生き様のニュアンスを伝えている。
移動式野戦病院に配属されたホークアイ(ドナルド・サザーランド)、デューク(トム・スケリット)、トラッパー(エリオット・グールド)の3人の軍医は腕はいいのだが、昼からマティーニを飲み、看護婦を口説き、悪戯をして、上司をコケにして、タメ口をきく。この無軌道ぶりを、新任の看護婦長(サリー・ケラーマン)と外科主任が告発状を本部に送付したことに主人公たちは報復を企てる。
規律に縛られ権威をちらつかせる「戦争バカ」に一泡吹かせるために、ベッドで絡み合う婦長と外科主任のあえぎ声を基地内に流したり、婦長・ホットリップスが本物の金髪であるかシャーワー室を壊して裸を白日のもとに晒したりする。
さらに、ホモの気配が芽生えた巨根の歯科医師の自殺願望に手を貸すふりをして「最後の晩餐」を演出する。そのあと、看護婦に頼み込んでホモっ気を鎮静させる夜のお相手役をやってもらうのだった。
議員の子供の胸に弾が撃ち込まれ、その手術に博多に渡り、手術の成功を引き合いに出して将軍を屁扱いして、遊郭・ゴルフ三昧の日を送る。なにしろ腕がいいから怖いもの知らずなのだ。
告白状に書かれた無軌道ぶりを視察にきた大佐に、アメリカンフットボールの話を持ちかけると、告発状の真偽をそっちのけで、フットボール談義に花を咲かせ、ついには隊対抗の試合が行われることになる。試合当日、前半はベタ負けして油断させ、後半に掛け金を釣り上げてから、元プロの脳外科医を投入し逆転する作戦がまんまと当たるのだった。
そんな中、ホークアイの帰国が決まると、この馬鹿げた日常から抜け出すことが、あたかも心残りであるかのよう名そぶりでキャンプを去るところシーンで、スピーカーは映画の出演者の名前を次々と告げる。
これといったストーリーがあるわけでない。軍医たちの日常が描かれる軍医日記のようなもの。本作により映画史の1ページが確実にめくられたのだ。→人気ブログランキング
【ロバートアルトマン監督作品】
『今宵、フィッツジェラルド劇場で』A Prairie Home Companion (2006)
『バレエ・カンパニー』The Company (2003)
『ゴスフォード・パーク』Gosford Park (2001)
『Dr.Tと女たち』Dr T and the Women (2000)
『クッキー・フォーチュン』Cookie's Fortune (1999)
『相続人』The Gingerbread Man (1997)
『カンザス・シティ』Kansas City (1996)
『プレタポルテ』Prêt-à-Porter (1994)
『ショート・カッツ』Short Cuts (1994)
『ザ・プレイヤー』The Player (1992)
『ウエディング』A Wedding (1978)
『ビッグ・アメリカン』Buffalo Bill and the Indians, or Sitting Bull's History Lesson (1976)
『ナッシュビル』Nashville (1975)
『ロング・グッドバイ』The Long Goodbye (1973)
『M★A★S★H マッシュ』MASH (1970)
« プレタポルテ | トップページ | *タイトルインデックス(邦画) »
「戦争」カテゴリの記事
- 同志少女、敵を撃て 逢坂冬馬(2025.01.08)
- 革命と戦争のクラシック音楽 片山杜秀(2020.03.22)
- スウィングしなけりゃ意味がない 佐藤亜紀(2019.07.26)
- ハンナ・アーレント(2014.09.07)
- M★A★S★H マッシュ(2013.12.21)
「コメディ」カテゴリの記事
- リトル・チルドレン(2021.01.02)
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- フィッターXの異常な愛情 蛭田亜紗子(2015.06.15)
- 『ジャッジ!』(2015.02.28)
- 8月の家族たち(2014.10.16)
コメント