二郎は鮨の夢を見る
『美食の世界地図 (竹書房新書)』(山本益博著)には、ヨーロッパの料理人たちがこの映画を見て、「すきやばし次郎」で食べてみたいと口を揃えて言ったと書いている。「すきやばし次郎」はミシュランガイドで6年連続の三ツ星の鮨屋として、世界の料理人に注目されている。
二郎は鮨の夢を見る Jiro Dreams of Sushi 監督:デヴィッド・ゲルブ 音楽:フィリップ・グラス アメリカ 2011年 81分 |
「すきやばし次郎」は、銀座のビルの地下1階にあり、トイレは店の外という店。メニューは鮨と飲み物だけで、お任せの鮨コースの値段は3万円から、食べるのが早い人なら15分で食べ終えてしまうという。それでも予約は満杯である。
本作は、「すきやばし次郎」の店主である小野二郎(85歳)の鮨の技を探求し続ける姿と、すでに伝説の存在である父に追いつこうと日々切磋琢磨する長男を中心に描いたドキュメンタリー映画である。
小野二郎、「すきやばし次郎」で働く長男と弟子たち、六本木に支店を出す次男、「次郎」で修行したミシュラン三つ星「鮨水谷」の店主、築地市場の店主たち、精米店店主、小学校の同級生、親戚などのインタビューが差し挟まれて構成されている。
さらに、フードライターの山本益博が進行役として所々で登場している。
山本によれば、優れた料理人の5つの条件とは、真面目、向上心があること、清潔感があること、短気でわがまま、情熱を持っていることだそうだ。小野二郎にはそれらすべてが備わっているという。
ミシュランガイドの基準は、クオリティが高いこと、オリジナリティがあること、いつも同じ味であることだという。そのどれもが完璧な「すきやばし次郎」は三ツ星が当たり前だという。
小野二郎はより旨い鮨を握るにはどうしたら良いかを常に考えてきたという。そうした仕事一筋の奮闘の日々が描かれている。
小野二郎は弟子たちに対して厳しい。もちろん自分に対してはより以上に厳しく、妥協を許さないと長男は語る。外出のさい手袋をするのは日焼けを防ぐためである。玉子焼きを任せられるのは弟子になって10年経ってからだ。
そんな小野二郎すらも舌を巻く料理人が、80年代世界の料理の頂点にいたジョエル・ロブションである。嗅覚や味覚の敏感さは凄いと彼はいう。そのロブションが、かつて今すぐに行ってみたい店を訊かれて、スペインの「エル・ブリ」と「すきやばし次郎」と答えたという。→人気ブログランキング
→【2014.01.27】『至福のすし―「すきやばし次郎」の職人芸術』山本益博/新潮新書
【料理に関係する映画】(サイト内リンク)
『シェフ! ~三つ星レストランの舞台裏にようこそ~』(12年)
『二郎は鮨の夢を見る』(11年)
『洋菓子店 コアンドル』(11年)
『エル・ブリの秘密 世界一予約の取れないレストラン』(11年)
『トースト~幸せになるためのレシピ~』(10年)
『再会の食卓』(10年)
『食堂かたつむり』(10年)
『女と銃と荒野の麺屋』(09年)
『ジュリー&ジュリア』(09年)
『ミラノ、愛に生きる』(09年)
『幸せのレシピ』(07年)
『UDON』(06年)
『サイドウェイ』(04年)
『フライド・グリーン・トマト』(91年)
『料理長(シェフ)殿、ご用心』(78年)
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