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赤目四十八瀧心中未遂

1998年に直木賞を受賞した車谷長吉の同名の小説の映画化。寺島しのぶの全裸の大胆な演技が話題を呼んだ作品。赤目四十八滝(あかめしじゅうはちたき)は、三重県名張町の滝川渓谷にある一連の滝の総称である。

Photo_20201130084001 赤目四十八瀧心中未遂
監督:荒戸源次郎
脚本:鈴木棟也
原作:車谷長吉  『赤目四十八瀧心中未遂』
音楽:千野秀一
日本  2003年  159分

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生きることにつまづき絶望感に苛まれる、いわば世捨て人の生島与一(大西滝次郎)は、小説家を目指し挫折した設定。彼がときどき『新明解国語辞典』で言葉の意味を調べるところは、緊迫しっぱなしのストーリーのなかで、息が抜ける場面である。

尼崎にたどり着いた生島は、髪の長い老人(内田裕也)にタバコの火を貸してくれと言われる。火を移し終えた老人は生島のタバコを落としてしまう。代わりに1万円札を生島のポケットにねじこんで、「タバコでも買ってくれ」と言って立ち去った。袖から覗く手首には刺青が見えた。

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生島が向かったのは焼鳥屋の伊賀屋。そこで勢子(大楠道代)に出会い、安アパートの2階の一室に案内される。その狭い部屋の家財道具といえば、大きすぎる冷蔵庫と座り机、まな板と包丁、煎餅布団。伊賀屋の下請けで、日がな一日焼鳥の串刺しをするのが生島の仕事である。なぜ伊賀屋で串刺しをしないかは不明。

古いアパートには、50歳をすぎた売春婦、生島が駅前で出会った刺青師・彫眉、一緒に暮らす若くて美しい綾(寺島しのぶ)と小学生の男の子、老夫婦たちが暮らす。刺青を彫られる者のうめき声や、男女のまぐわいの声が聞こえたりする。そんなこの世のどん底とも思える劣悪な環境で、黙々と焼鳥の串刺しをする生島に、勢子は大阪万博の頃パンパンだったと話す。その話を他人にするのは初めてだという。勢子は綾のことを「あの娘、朝鮮やで」と耳打ちし、「あんたはこんな所にいる人ではない」ともいう。

ある日、部屋に現れた綾は生島に身を委ねた。「あんたはここで生きていけへん人よ。うちらと違うの」という。綾の背中には迦陵頻伽(かりょうびんが)の刺青が彫られていた。
迦陵頻迦とは上半身が人で下半身が鳥の想像上の生物。極楽に住み仏の声で歌うとされる。

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ある朝、凄まじい勢いで男が「綾はいないか」と、生島の向かい部屋のドアを叩いた。男は綾の兄で、組の上納金を使い込んでしてしまい、金を返さなければ綾は博多に売られるのだ。
綾は生島に自分を連れて逃げるよう懇願する。ふたりは宿を点々とし、心中をしようと赤目四十八滝に向かうのだった。死を覚悟している生島と、死ぬことに迷いがあるから綾は渓谷をさまよい歩く。
結局、ふたりは死にきれず、綾は生島を大阪に残して博多に向かうのだった。

清流に仰向けに浮かぶ白いドレスをまとった綾の姿は、『ハムレット』の恋人オフィーリアを描いたジョン・エヴァレット・ミレーの絵を意識している。夏目漱石が『草枕』のなかで描写している絵である。。→人気ブログランキング

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