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『大人の時間はなぜ短いのか』一川 誠

大人の時間はなぜ短いのか  (集英社新書)
一川 誠 (Ichikawa Makoto)
集英社新書
2008年9月

時間には量子物理学も宇宙も関わっている。つまりセシウム原子時計と水素メーザー型原子時計を用いて「世界時」が決められている。あるいは、宇宙のブラックホールの近くでは時間の進みは遅くなるという。これらはテーマと直接には関係ないので、時間についての物理的特性は単なるイントロと思って読み流そう。

そして本題である。
感じる時間の長さは「身体の代謝」「心的活性度」「時間経過への注意」「他の知覚様相」「ワーキングメモリーの機能」などによって異なる、と言われてもピンとこない。

まず「身体の代謝」の説明はこうだ。代謝が活発だと時間の経過は遅く感じられ、代謝が遅いとその反対であるという。例としては、風邪で寝ていると時間が経つのが遅く感じられるが、風邪を引くと代謝が活発になるからである。子供は代謝が活発だから時間が経つのを遅く感じているというのは、なんとなく納得できる。

次は「心的活性度」。交通事故に遭うと、事故の様子がまるでスローモーションのように見えたと感じるドライバーがいる。極度の緊張状態では物事がゆっくり起こっているように感じられることによる。
刺激が多かったり大きかったりすると、時間を長く感じる。例えば食事、子供にとってはいろんな出来事がある。ご飯粒の形に見とれたり、スパゲティで遊んだり、嫌いなグリンピースを脇によけたり。誤ってご飯をこぼしたりすると、さらに多くの出来事が起こってしまう。子供にとっては、食事の時間すらも長く感じられるだろう。

「時間経過への注意」とは、時間を気にしているとなかなか時間が経たないと感じることである。他方、楽しいと時間は気にならず、「もうこんな時間になったか」ということをよく経験する。
時間の経過に注意を向けることは、時間経過を分節化していると言える。子供には待ち遠しいことが多数あり、まだかまだかと時間を分節化しているから、時間がなかなか経たないように感じる。一方、大人は日常がルチーンワーク化していて待ち遠しいことがないから分節化することもなく、時間が経つのを早く感じる。

「他の知覚様相」が、時間の感じ方に影響を及ぼすことがある。
感じられる空間が大きいと時間が経つのが遅く感じるという。自分の卒業した小学校を大人になって訪れると、「えっ、校庭はこんなに狭かったの」というあれである。子供が空間を大きく判断していることは、時間を長く感じていることにつながる。時間以外の知覚様相が時間の感じ方に影響を及ぼす傾向は、子供に顕著であるという。

加齢による情報処理の効率や処理が低下しているので、若い頃と同じ仕事量をこなすには時間が足りない。だから時間が早く経つ。「ワーキングメモリーの機能低下」は、歳をとると記憶も落ちているわけだから、仕事が思うようにはかどらず、時間が足りないということ。

以上のいくつかが相互に関連しあって、子供の時と比べて「大人の時間は短い」と感じるという。 →ブログランキングへ

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